慈悲の場所へ
「……兄が、ご迷惑をお掛けしました」
「もう、終わった事です。お気になさらず…」
現在、秋の実家のリビングに秋、オード、ベルトニアが居る。
オードとベルトニアが向き合い、秋は横から二人が向かい合った様子を眺めながら、複製した手記を読んでいた。
一応自己紹介と現在の状況説明は済んでいる。
ベルトニアにとって、一言で言うと気不味い状況だ。
兄が不正を働いた事を謝罪はした。
気にしないでと言われたので、少しだけ肩の荷が降りたのだが…
真っ直ぐに見詰められると耐えられない。
何かを言われるのか…陰口には慣れているが当事者を目の前にしては辛いものがあった。
「……」
「あっ、兄さん。今度帝都に行くんだけど来る?」
「まぁ良いけど…何をしに?」
「城に行くだけだよ」
「城に行くだけとか怖すぎる」
「サティちゃんとイリアと俺で乗り込むだけだから大丈夫。兄さんは茜ちゃんと後ろを歩くだけで良いんだから」
「……断って良いか?」
「良いけど、サティちゃんから逃げられるならね」
「茜さんに怒られるぞ」
「大丈夫。もうブラックホールを投げ付けられるくらい怒られている。とりあえず白黒付けないと次に進めないからさ」
フッと笑う秋に、オードが嫌そうに顔を顰める。
ベルトニアはそんな秋とオードのやり取りをボーッと眺めていた。
「…仲良いのね」
「仲良しだぞー。そいじゃあ俺は忙しいから抜けるわー。お二人さんごゆっくり。あっ、兄さん送ってあげてね」
「あ、あぁ…」
「えっ…ちょっと…」
オードへの用件は済ませたので、秋は紫色の魔法陣を展開しフッと消えた。
テキパキとしているのか、ザックリなのか、マイペースな弟にオードが苦笑していた。
「あの…私も…あなたみたいに魔装って、出来るかな?」
「もちろん出来ますよ。俺に出来たんですから」
「教えて、欲しいな。ちゃんと報酬は払うから」
「良いですよ。報酬に関しては、カナンからガッポリ貰うんで大丈夫です…送っていきますね」
______
秋は自宅へ戻り、待っていた龍王と溟海は準備を終えていた。
なのでそのまま向かう事にする。
「さっ、次はおっさんの用事を済ませるか」
「ふっ、では行こうか」
「ところで…慈悲に治して貰うのは良いんだけれど、何を対価にするの? 奴は等価交換で物を言うから」
秋と溟海が龍王を見ると、得意気な顔で何かを取り出した。
白い石……
「白色精霊石だ!」
「いや、あいつ沢山持っているぞ。割に合わねえ」
「ふっ、そんな事もあろうかと…英雄の薬!」
「それも持っているな。俺が大体あげたから」
「それなら! 世界樹の実!」
「……痔を治すのにそんな貴重な物を渡すなよ。怒られるぞ」
「じゃあ…どうすれば良いんだよぉぉお!」
「まぁ…あれだな」
「あれだね」
慈悲が提示しそうなものは、等価交換ともう一つ……
封印された憂さ晴らし。
「闘うしかねえな」
「ストレス発散に付き合ってあげな」
「……」
「って事で行くかー」
ブォン…紫色の魔法陣を展開。
三人は慈悲の所へ直接向かった。




