暗部の仕事。3
「アキ、絶対種が復活したら…どんな事が起きるの?」
「四神と共に戦った人間を憎む奴なら、人間を襲うし…アグニみたいにただ暴れる奴か…慈悲みたいに面倒だから寝る奴も居るかな」
「じゃあ慈悲は安全なのね?」
「戦闘狂に目を瞑れば、ただの面倒くさがりだよ」
「それ…危険よね?」
絶対種と言えど、強さはまちまちなので直ぐに対処出来る場合が多い。
「あーきーちゃーん」
邪魔が入らなければ…
「…なーに」
「あーそびーましょー」
「いーそがしーよー」
「うーそー」
「ほんとー」
「……嘘でしょ?」
「サティちゃん、いきなり素になるとビクッとなるから…」
サティがムスッとしながら部屋の中を見渡す。
今秋の部屋にいるのはアイ、紅羽、ティナ、刹那、サーラ、妖精二匹。
乙珀とイリアはお昼寝。毒酒は秋の実家でカタリナと勉強中。
一通り見渡し、ティナに視線を固定。
「…ティナちゃん。愛の授業…受ける?」
「はっ、はい!」
サティがティナを抱えて階段を下りていった。
誰も止めなかったのは、保身の為か。
「…ティナが犠牲になったな」
「そうね…」
アイと紅羽が気を抜いたその時…「秘術・痺れ愛」
「あっ…」「なん…だと」
アイと紅羽の身体が痺れ、未来を悟り目のハイライトが消えていく。
そして、アイと紅羽がサティに拐われた。
残された秋、刹那、サーラ、妖精二匹。
「くっ…まずいな…」
「秋、行ってらっしゃい」
「マスター、行ってらっしゃいませ」
「いや、行くと決まった訳じゃ…」「秘術・愛縛り」
「刹那たん…後は頼んだ…」
死んだ目の秋も拐われた。ついでに少し嬉しそうなサーラも拐われる。
残された刹那、妖精二匹。
「……優雅な一時」
刹那は、ほっこりしながらソファーで寛ぐ。
妖精二匹は刹那の肩に止まっていたが、しばらくして何かを感じ取ったのか急に動き出し…部屋を出ていく。
「…ふふっ、嫌な予感」
刹那の足元に魔法陣が出現。
ため息を付きながら、魔法陣の中へ入っていった。
そして、秋の部屋は…誰も居なくなった。
そこに来訪者が…
「まっすたー! ……しかし、誰も居なかった」
グリーダがやって来たが誰も居らず、「仕方無いですねー」秋の椅子に罠を仕掛けて天異界へと帰っていった。
更に来訪者…
「あれ? 誰も居ないねぇ」
「ここが秋の部屋か?」
溟海と龍王がやって来たが誰も居らず…
「後で来ようか」
「ふむ…この椅子良いな」
溟海がまた後で来ようと言うが龍王が秋の椅子に座り出した。
そしてグリーダの罠が発動。
怒濤のカンチョーが繰り出される。
ドドドドド!__
「__ぐあぁぁぁぁあ!」
「くっ…ぷっ…何やって…くくっ」
______
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__
刹那が健次の元から転移して行って直ぐ…
貴族の監視をしていた健次が、何かを感じとっていた。
(この胸騒ぎは…地中から鼓動?)
ドクン__ドクン。地面に耳を当て、音を探るが原因が解らない。
(魔物? あっ、おっさんが動いた)
要注意人物の騎士が一人で行動を始める。
他の者はテントに集まり、休憩していた。
健次は分身を騎士に付け、周囲にも分身を出して調査。
(皆は気付いていない…離れた方が良いと思うけど…テント張ってるから泊まりだよなぁ…)
テントに居る者は動かないので、騎士の監視に集中してみる。
「…遅いぞ。今、中腹辺りだ。何時ごろに合流出来る?」
騎士は通信石を使って誰かと話している様子。だが通信石は貴族しか持てないような貴重な品。一端の騎士が持てるような物では無い。
会話が気になったので、近付いて聞いてみる。
『後三十分ですよ。女は何人です?』
「女は冒険者に二人、騎士が三人、貴族が一人だ。男は大して強くないから安心しろ」
『へへっ、了解です』
(これは、盗賊と繋がっているのか。盗賊も捕まえた方が良いよなぁ…)
盗賊と繋がり、甘い汁を吸おうとする騎士に怒りを覚えるが、盗賊も捕まえないとしらを切られる恐れがあるので待つ事にした。
それから三十分程経った頃、十人程の男…盗賊達がテントの方角にやって来た。
(おっ、来た来た。手分けした時を狙って少しずつ仕留めるか)
多方向からテントに襲い掛かる手筈のようで、盗賊達が分散。
健次はそれを狙ってこっそり盗賊を仕留めていく。
リーダー格は残し音は立てず、一撃で意識を奪う。
そして、盗賊達が準備を完了させた時を狙って…盗賊のリーダーがテントに襲い掛かる。
「ヒャッハー! お前ら行くぞ!」
「__っ! 盗賊だと!」
リーダー格と取り巻き二人がテントへ走り、不意をつかれた騎士と冒険者が浮き足立っている。
「よっしゃー! 死ねー!」
それを見て行けると思った盗賊が冒険者の男に剣を振り下ろす。
ガキンッ!__盗賊の剣は突然現れた黒尽くめの男…健次の小刀に阻まれ、「さいならー」鳩尾に掌底を当てられ昏倒。
取り巻きの男二人も健次の攻撃に沈黙。
盗賊の襲撃は呆気ない終わりを迎えた。
「なっ、何者だ!」女性騎士が盗賊を縛っている健次に近付き、警戒心を隠さずに誰何する。
健次はあまり喋らないようにと言われているので、黙ったまま。
盗賊達を回収。テントから離れた開けた場所に普通に縛った十人の男を置いたところで、異変が強くなっている事に気が付いた。
(やべぇなぁ…鼓動が近付いて来た)
ドクン__ドクン。どうしようかとテントに居る面々を見ると、警戒した様子で健次を見ている。
とりあえず話をしなければ進まないので、テントに近付き口を開いた所で…
ドオォォオン!__
「ぎゃああぁぁぁ!」
「え?」
盗賊が叫び声を上げ、健次が振り返る。
そこには…メタリックカラーのゴーレムらしきものが盗賊を握り潰している場面。騎士達は呆然とし、健次は焦っていた。
『ニンゲン…』
「…喋る個体かよ」
明らかに普通の魔物とは違う。10メートルを越える無機質な人型の身体に、太い手足。全身は硬そうな金属に覆われ、胸の部分に赤い玉が嵌まっており、ドクンドクンと鼓動を感じる。
『ニンゲン…コロス』
「…あぁ…魔王より強えし…」




