表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
239/285

過去へ。4

 


 サラサラと崩れる様に崩壊していく街並み。


 城壁も、家も、高層ビルも、車も…そして城さえも少しずつ崩壊していく。



「人は崩壊しないようにしているから、これで文明だけ壊せれば良いけど…」

「他の国にも届くの?」

「やろうと思えば出来るけど…メインコンピューターにウイルスを入れて、他国のコンピューターも道連れにする方が早いなぁ」

「あっ、『めいんこんぴゅーた』はバリアで守られているから『ますたーきー』が無いと駄目だよ」


 イリアがマスターキーを取り出し、カナンに渡す。

 カナンはマスターキーをよく観察する。

 高度な技術が使われているが、よく解らないのでコピー魔法で複製。後で調べようとストレージに入れておいた。



「じゃあ、メインコンピューターでも拝みに行くかぁ…ん?」


 金色の城から、何かが飛び出していくのが見えた。

 空を飛ぶ車が王都から逃げ出す様に飛んでいる。

 しかし、何者かに撃墜されていた。


「ありゃ、宝石野郎が撃ち落としたのか?」

「多分、女王が乗っていたんじゃないかな? あの少年は女王を嫌っている様に見えたし…」

「仲間割れとは、なんともまぁ…」


 実験体に殺られるとは、前世も今世も大変だなぁと思いつつ、まだ崩壊が進んでいない城の地下へと向かう。



「あき、『ういるす』ってなぁに?」

「機械にバグ…まぁ、使えなくする物を植え付けるんだ。この場合は、俺が暇潰しに自作したウイルスをフュージョンさせる…かな」


 カナンがストレージから、古代の資料が入っていたタブレットを取り出す。

 複製して、中身を連鎖ウイルスソフトに換えてある。

 ロケット作成中の息抜きに作っていた代物で、自動的にデータを消していくウイルス。

 こんな所で役に立つとは思っていなかったので、昔の自分に感謝しつつ足を進めた。


 まだ動く部屋は生きていたので、カードキーを読み込ませてメインコンピューターのあるエリアへ。


 様々な機械が並ぶ中、メインコンピューターに到着。

 そこには先客が居た。

 宝石の少年だ。


「ふ、ふふ。やっと、これで自由になれる。みんな、女王は殺したよ…」


 ぶつぶつと一人言を言いながら、メインコンピューターを操作していた。

 時折薄く笑い、自分の宝石を撫でながら語りかけている。


「何やってんだ?」

≪秋、邪気が溢れて来ている≫

「__何!じゃあ奴は!」


 カナンが素早く移動。宝石の少年を蹴り飛ばす。

 だが、宝石の少年は笑みを崩さぬまま、カナンを見据えた。


「ふふ…これで、このクソッたれた世界は終わりだよ。くっくっくっ…はーっはっはっは!」


 仰向けに倒れながらも、勝利を勝ち取った様に笑っている。

 そして、転移でどこかにへと消えていった。


 ゴゴゴゴ!__


「何が起きるの?」

「…古代文明は、ダークマターで生物兵器を作る際…裏の世界の研究をしていた。邪族や、邪神、混沌神、破壊神の事も」

「え?じゃ、じゃあ…」

「恐らく…邪族がやって来る…先ずはデータを__フュージョン」


 メインコンピューターを操作してみるが、状況は変わらず…

 急いで連鎖ウイルスソフトをメインコンピューターに融合させた。


「…効いたの?」

「ああ、効いたけど…もう、魔方陣が起動した」

「魔方陣?」

「…この大陸に設置された、超巨大魔方陣」


 カナンが以前見付けていた、古代の石碑。魔方陣の角となる石碑の中心部分は…地図上ではこの付近。


 ゴゴゴゴ!__


「_くそっ!一旦出るぞ!」

「_うん!捕まって!テレポート!」


 バシュン!__

 王都の外へと転移。

 そこには、大きな魔力が渦巻き、空には黒い雲が発生していた。


「やっぱり…一度起動していたのか。でもこの魔方陣を起動する魔力は何処から…もしかして…国民全て…」


 震動と共に、大地が淡く光っている。


 嫌な予感は当たる様で、巨大な力が発生していた。


「これ…何が出るの…」

「もう、嫌な予感しか無い」


 そして、超巨大な魔方陣は発動する。


 古代文明の国…ルシフェル国民を犠牲にして。


 ゴゴゴゴ!__


 真っ黒い光が、中心部分…王都の北に集束していく。


 そして、大きな黒い珠が出来上がった。


「うそ…これって…」

「あぁ、この懐かしい雰囲気は…でも…邪神でも…混沌でも無い…」


 大きな黒い珠が、形を変えていく。

 脚の様な物が生え、次第に腕の様な物が生えてくる。

 邪気が溢れ、鮮明な身体に変化していった。


 黒いローブから覗く、筋肉質な真っ黒い脚に、大きな蹄。

 二対の黒い腕には、それぞれ禍禍しい剣を持っている。

 一対の深紅に光る瞳を持つ顔は、黒い仮面の様な物で隠され、胴の中心には赤黒い珠が存在していた。


 感じる力は圧倒的で…邪神、混沌神よりも上の存在。


「あっ、ヤバい…一番強い奴だ」




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 元の時代。


 キリエ、毒酒と対峙する…アイ、紅羽、サティ、溟海、龍王、リーリア、矢印。

 秋の所在を求めるキリエに、龍王が対応する。


「秋は、過去の世界に居る」

「…過去?」

「戻るのは、明日か明後日だ」

「そう…なら…待たせて……」


 キリエの動きが急に止まり、虚空を見詰め出した。

 何事かと、首を傾げる一同をよそに…毒酒が回り込んでキリエの前に立ち、唇を噛みしめながらキリエを見据えている。


「キリエ?大丈夫か?」

「だい……ぐっ…あっ…」


 ドクンッ__


 キリエの身体が仰け反り、脈動していく。

 異常を察したアイ達は距離を取り、キリエの様子を伺う。

 毒酒はアイ達の方に振り返りながら、世界樹を指差す。


「みんな…世界樹を守って…」

「ど、どういう事だ?」

「もう…これは…キリエじゃない…早くして!」


 ドクンッ__ドクンッ__


「……くっ…」

「…キリエ」

「…くっ…くくっ…ククククク…この時を…待っていた…」


 キリエから、邪気が噴き出してくる。

 世界樹の前に移動した一同は、強い重圧を感じていた。

 心臓が鷲掴みにされる様な…今まで感じた事の無い濃密な死のオーラ。

 龍王が一人、驚愕に目を見開く。


「…なん…だと」

「師匠…何が起きているの?」

「あれは…混沌神(カオス)…」


 龍王だけは知っていた。

 秋と共に倒した混沌神のオーラを。


「ククククク…秋が来るのを待つ間…龍王…先ずはお前を殺そう」

「キリエ…もう…限界だったんだね…」


 歪んだ笑顔を見せ、喜びを表現するキリエは…以前の雰囲気は無い。

 混沌神は、ずっと待っていた。

 キリエに吸収された振りをしてまで、待っていた。

 復讐の時を…


 対峙する毒酒は、泣きそうな表現でキリエを見据え…

 そして、魔力を解放した。



「ククッ…毒酒よ…お前にこいつは殺せぬ」


「…約束…したから…友達(キリエ)と!__禁毒作製!デッドエリクサー!」


「邪魔をするなら…殺す。__星体観測!」



 煌めく星達が、舞い上がる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ