表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/285

龍王との再会。

 魔の森。

 ファー王国から遥か東に位置する広大な森の中にある一角。太古から存在する森。

 強大な魔物が蔓延る危険地帯として知られ、人が足を踏み入れたら最後…方向感覚が狂い、強大な魔物に殺され、帰って来る者は居ないとされる。


 そんな森をのんびりとした雰囲気で歩くカナン一向。

 話に聞いていた魔の森とは違う、静かな森。


「真っ直ぐ進んでいるから、昼過ぎには着くかなー」

「秋、森から行かないと駄目なのかい?」

「空からだと、入れないんだよ。だから森を進むしかない。魔物が出ないから楽だと思えば良いさ」


 空からだと、世界樹のバリアが濃いので入れない。

 だが、世界樹の加護…カナンの星属性とリーリアが居る。そのお蔭で魔物は来ない。

 魔物が来ない理由は…ここの魔物は世界樹が管理しているからだが、それを知る人間は居ない。



「そういえば…星属性が強い者は、銀色の髪になるのに秋は茶色だな」


 溟海が不思議に思い、カナンに訪ねる。

 カナンは、言われてみればそうかと自分の髪を触った。


「前の秋ちゃんは黒髪だったね」

「あぁ…実は銀色になっちゃったから染めていたんだよ。似合わな過ぎてな…」


 遠い目のカナン。

 素朴な顔にキラキラとした銀色の髪…当時の秋は似合わなすぎて絶望し、龍王は笑い転げていた。

 その後、龍王をボコボコにして黒い染色液で髪を染めたのは良い思い出。



 雑談しながら、魔の森を進んでいくと段々と星属性の魔力が濃くなってきた。

 もう少しで着くという所で、石の中の住人が出てくる。


「世界樹をこの目で見たいから出てきたわよ」

「なんか懐かしい雰囲気だな」

『私はここで生まれたんだよー!』


 リーリアと矢印がクルクルと回りながら先頭を飛び、アイと紅羽が手を繋いでリーリアに付いていく。

 その後ろをカナン、サティ、溟海は微笑ましく思いながら付いていった。




 鬱蒼とした森を進んでいくと、やがてひらけた場所に到着。


「わぁー、大きいわねー」

「デカイなー」

「懐かしいなぁ…」


 カナン達の視界一杯にそびえ立つ、巨大な樹。

 澄んだ空気の中に立つ神々しいまでの存在感。

 幹の太さは直径百メートルはありそうで、青々とした葉が生えているが、枯れている場所も見える。

 生命の樹、最初の樹、全能の樹、世界樹などと呼ばれる絶対種。


 世界樹の根元には、大きな銀色の龍がこちらを見詰めている。


 リーリアと矢印は、先に世界樹の元へと飛んで行った。


 それを見届けた後、カナンを先頭に銀龍の元へと歩いていく。


『止まれ、人間がこの地に何の用だ』

「ちょっと昔話をしに来ただけだよ。俺の事忘れたのか?」

『…』

「…」


 澄みきった空気の温度が下がっていく。


 対峙するカナンと銀龍。

 睨み合う様に見詰め合う。

 ピリピリと空気が張り詰めていく。


 アイ、紅羽、サティ、溟海は一触即発の雰囲気に後方へと下がっていた。



『…』

「…」

『…クソ眼鏡変態』

「…ロリコンクソ野郎」

『銀髪ブサ男』

「銀髪イボキレ痔」

『聖女のパンツを盗んだ野郎』

「ファナエルのパンツを被った野郎」

『…生き延びていたか、ゴキブリストーカー』

「お蔭様でな…鼻毛ドMロリコン」


『…』

「…」


「『…ぶっ殺す』」


 カナンが魔力を解放。

 銀龍も魔力を解放していく。



 張り詰めていた空気は、ビリビリと軋み始め、アイ達は更に後方へ下がる。


 カナンが魔方陣を展開し、銀龍に向かって右手を向ける。

 銀龍は大きな口を開け、エネルギーを溜めていく。


「ぶっ飛べや、ロリコン…四元波動砲」


 ギュィィイ!__

 赤、青、緑、黄色に輝いた四色の極太レーザー。

 後方にある世界樹に構わずぶっ放つ。


『お前がな、変態…超龍魔法・ギガドラゴンブレス』


 ゴオォォォ!__

 銀龍の口から銀色のブレスが放たれる。

 周囲の自然など無視した破壊的一撃。


 波動砲とブレスが衝突。

 激しい轟音と共に爆風が発生。


 世界樹が爆風に靡いて、枝が激しく揺れていた。




 ______




「…あれ、何やってんのかしらね」

「馬鹿なのか?」

「くくっ、面白い挨拶だねぇ」

「秋ちゃんと師匠は定期的に罵り合っていたらしいよ」



 ______




 激しいエネルギーのぶつかり合いが終わった後、カナンはパタリと倒れ込み、銀龍も人型へ姿が変わり、同じく倒れていた。


「…」

「…」


 しばらくして、むくりと起き上がった二人は、無言で再び対峙する。


 銀龍の人型。

 溟海と同じくらいの年齢に、銀色の長髪。

 引き締まった身体を持つ格好良いおじさんの姿。


 そして、お互いにフッと笑う。


「…久しいな、秋」

「あぁ、久しぶりだな龍王(おっさん)。キメ顔をするのは良いんだけど、とりあえず服着てくれ」

「服なら着ている」

「花柄のブーメランパンツを服とは言わない。俺だけなら全裸でも良いけど、今回は一人じゃないからな」


 カナンが睨み、龍王が渋々バスローブを羽織る

 二人は世界樹の根元へと行き、テーブルと椅子を出して座った。


「おーい、みんなー。もう大丈夫だぞー」


 アイ達がゆっくり近付いて来る。

 また喧嘩が始まって巻き込まれるのが嫌なだけだが、サティがアイと紅羽を守る様に歩いていた。


 カナンと龍王の元へと到着。

 溟海は軽く挨拶をし、サティは龍王を蔑む様に見ている。


「やぁ龍王」

「溟海か、百年振りか」


師匠(ロリコン野郎)久しぶり(まだ生きていたのね )


「アイでーす」

「紅羽だ」

「……ほう」


 龍王の視線は、アイと紅羽に固定されていた。

 アイと紅羽は12歳程の少女の姿…


「お、お嬢ちゃん達…おじちゃんの娘にならないか?」


「てめぇ…死にたいようだな」


 再び喧嘩が始まった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ