魔の森に到着。
時は少し戻り、ファー王国から魔の森へと出発したカナン達一向。
メンバーは、カナン、アイ、紅羽、サティ、リーリア、矢印、溟海。
カナン、サティ、溟海は浮かせた舟で雑談。
アイ、紅羽、リーリア、矢印は石の中で寛いでいる。
魔の森は王国から遥か東。
といっても、カナン達からすれば魔の森まで数日で到着する。
「秋ちゃん。茜…大教会に行ったみたい」
「だなー。一応オード兄さんに勇者の資料と、飛行魔法の魔力玉渡してあるから…2、3日で着くかな。大丈夫かねぇ…」
「オードは魔王ぐらいなら倒せるから、安心して良いんじゃないかい?」
「そうだけど、心配はするもんだよ。家族なんだから。まぁ…月読が居るから心配いらないけどな」
「……」
茜はこそこそ出発したが、バレバレだったので皆知っている。
仕事は休暇を取っているので、オードには旅行してから帰って来て良いと言ってある。
旅行先は、帝国にでも行くとオードは言っていた。
「月読は茜達が終わったら行くって言っていたから、のんびり行こ」
「そうだなー。魔の森は星属性に長けてれば、簡単に抜けられるからゆっくり行こう」
「……」
カナンは寛ぐ様に、仰向けになって空を見上げる。
星属性を持っていれば、不思議と魔の森に居る魔物は寄り付かない。探して攻撃を仕掛ければ別だが、それをしなければ戦わずに抜けられる。
「……」
「ところで、気になっていたんだけど…舟の隅っこに居る女の子は誰?」
気付いたら舟に乗っていた女の子。
皆気にしていないので、カナンも気にしていなかったが…じーっとこちらを見ていたら気になって来るというもの。
長い金髪に、パッチリとした水色の瞳の12歳くらいの女の子。鼻と口は小さめなので、小動物の様な可愛らしさを持っている。無表情でカナンを見詰めていた。
「……」
「天空ちゃんだよ」
「…どうも、はじめまして。俺は秋って言うんだ。よろしく」
「……」
「天空ちゃんがよろしくって言っているよ」
「よく解ったね」
「天空はテレパシーが使えるからね。まだ直接話すのは恥ずかしいからじゃないかい?……天空…それは自分で良いなよ」
天空が溟海をポコポコ殴っている。
溟海に何か言って欲しかったみたいだが、カナンには解らない。
それからしばらくカナンを見詰めている。
目が合うのは恥ずかしく無いのか?と思うが、水色の瞳が揺れているので何か言いたそうにしているのは解る。
「……」
「何か言いたい事あるの?」
「……お……た」
「……お腹空いたの?」
「……にく」
サティと溟海は驚いている。
直接喋るのを見たのは初めてだから。
小声で言葉足らずなので、理解するのは至難の技。
だが、カナンは何となく解っていた。
ストレージから、小さいテーブルと焼き肉セットを出して天空の前に出す。
「……」
「食べて良いよ」
「……あ…う」
「どういたしまして」
天空は、小さい口でゆっくりと焼き肉セットを頬張る。
少し表情が柔らかくなった気がした。
「秋ちゃん。よく解ったね」
「あぁ、孤児院で思考が先に行きすぎて、まともに喋れない子とか居たからな。割りと慣れてるんだ」
「…そっか。じゃあ私が今、何を考えているか解る?」
「……そこの岩陰でグッドタイムしようよ」
「…正解」
美味しそうにしている天空を眺めて、カナンも顔が綻ぶ。
溟海も天空の珍しい姿に微笑んでいた。
「……しい」
「美味しいか?そりゃ良かった」
「…ま…た…」
「あぁ、良いぞー」
「なんて言ったの?」
「毎日食べたいだって」
「刹那たんに妹が出来るのね」
「えっ?あっ、そういう事?」
そういう事かどうかは解らないが、これからはご飯の時間に来るらしい。
それから、空気に溶ける様にフッと消えて行った。
「…溟海さん。天空って元はどんな姿をしているんだ?」
「んー…言葉で言うと難しいなぁ…雲を纏っている妖精みたいな感じかな」
「天空ちゃん、元の姿も可愛いよ」
「へぇー」
それから、ご飯時に1セット多く置いておくと天空がやって来て、食べる様になった。
相変わらず喋るのは苦手な様子。
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東へ向かう事、数日。
カナン達は魔の森に到着した。
「久しぶりに会うなぁ…おっさんに」
「私も、師匠に会うのは百年振りかな」
「…さらっと酷い事言った気がするけど気のせいかな?」
「気のせいだよ。師匠だよ?師匠に酷い事なんて言わないよ?」
「…まぁ、うん、そうだね」




