北の森
北に向かって飛んでいく。大きな山や山脈を越えていく。
途中鳥の魔物が追いかけて来たが無視。
山脈を抜けて平原を進み、草原を眺めながら、ふとリーリアが言った事に疑問に思う。
「雪が降るかも?」
今は入学して1ヶ月程。日本で言う7月くらいの季節。
王都は初夏にあたる。
「地域的に春くらいの暖かさだけどそんなに寒いのかな?」
暖かいもんなー、と平原を進む。
「畑を耕している…となるとそこまで今は寒くないはずだ」
村の畑では種を植えるために耕しているのが見える。
やがて街が見えてきた。三角屋根が建ち並んでいる。
色は鮮やかで、赤、青、黄等に塗られている。
暖かな日射しの中、人々に活気が見える。
こっそりと街に降り立った。辺りを見渡し、森に行くために物知りそうな人を探す。
そしてベンチに座る老人を見つけたので話しかける。
「こんにちは、ここら辺に精霊がいそうな森とかありませんか?」
「精霊?北の森の事かい?昔は精霊を見たって言う人が居たよ」
「(北か)ありがとー」
お礼を言って飛び立つ。
国によっては子供は一人で出ちゃいけないとか、怪しい子供を調べるとかあるから、見られない様にこっそり抜け出した。
「大人になったら散策だなー、いっその事世界を回るのも良いなー……その前に秋と邪神が消えた場所に行かなきゃな…」
将来を考えていると、やがて森が見えてきた。
精霊の森と少し似た雰囲気の場所。
「着いたかな?精霊樹とかってあるのかな?」
(あったら欲しいな、能力に違いがあるか試したいし)
また自分を実験台にするようだ。
とりあえず森に入ってみる。
新芽が出て少し経ったくらいの、綺麗な緑の葉が太陽の光を優しく遮り美しい木漏れ日のカーテンが出来ていた。
気持ち良い場所だなー、と顔を綻ばせながら歩く。
「空気が綺麗だ。また来たいな」
湧水が流れ、澄んだ水を掬うととても気持ちが良い。
「雪なんて降るんかねー」
日本で行った、大きな森林公園のような静かな森。生き物に溢れ、人の手が入っていない風景に、魔物なんているのかねえ?と疑問に思う。
「おっ精霊か?やっぱり他にも居るんだなー」
奥へ進んで行くと蒼い光が浮いていた。出迎える様にピカピカ光っている。
「南の森から助けを聞いて来たカナンだ、魔物まで案内してもらえるか?」
了解という様に、ピカピカッピカピカッと蒼い光が点滅した。
(案内してくれるって、事かな?)
ふよふよとした光に着いていく。
奥へ奥へ進む。
「俺に対処出来たらいいんだけどなー」
精霊がいる場所の特徴として、澄んだ魔力のお陰で弱い魔物は出ない。代わりに上位の一部の魔物にはまあまあ良い餌場になる。
「調べたらこれ精霊石って言うんだな、あまり使わないことを祈るか」
そう言って精霊石をかざす。カナンは文献で調べて名前を発見したが、元は精霊なので使う時は少し微妙な気分だ。
「ん?寒くなって来た?」
精霊が止まる。一生懸命プルプルと自分の形を変えて、前に進めと矢印を作っている。
「真っ直ぐね、わかったよ。ありがとう」
(形変わるのか、可愛いなー)
精霊の案内通りに真っ直ぐ歩くと、だんだんと気温が下がっているのに気付いた。
「なんか上着着よっと」
ストレージからマントを取り出し羽織る。
「んー青色属性寄りの魔物かなー、四大属性は精霊石で強化出来るからこの前よりは戦えそうだけど…」
まだかなー、とのんびり進む。
やがて、開けた場所に着いた。
「……」
少し遠くの方に見える魔物の姿。
「こいつは…」
球体の物体。
「倒した事がある…だけど」
丸い真球の様な、綺麗な珠。
「色が違う…俺が…秋が倒したのは黄色」
綺麗な碧い珠が浮いている。
「ははっ、まじかよこいつか…」
怨霊、又は英霊の霊体が、輪廻の輪に入らず。
ひたすらに魔力を食べる、喰らう。
やがて到達する、
「ゴーストの派生…霊王種……青色」
お伽噺の魔物。
氷の霊王。
雪崩の悪魔。
「……アヴァランチ・ソウル・グランデ」
少年は天を仰いだ。




