天異界。4
キリエ、シルヴィ、毒酒が白い階段を駆け上がっていく。
「……星の力…流れが変わった…」
「絶望ちゃん、勝ったのね」
「……絶望」
シルヴィの顔に笑顔が浮かぶが、キリエ、毒酒の顔は真剣な表情。
絶望の気配が消えた。
相討ちか、勝ってから力尽きたか。
気になるが、引き返す事は出来ない。
振り返らないと、約束したから。
「キリエ…次は私が闘う」
「毒酒ちゃん…」
「私…そんなに強くないけど…頑張りたい」
「ええ、毒酒ちゃんならやれるわ!」
毒酒は下唇を噛み、泣きそうな顔。
闘う事は好きでは無い。
ダンジョンでも前に出るタイプでは無かった。
絶望が繋いでくれたから、次は自分だと。
______
天異界の最下層。
四人に遅れて降り立ったグリーダ。
「……ほー。ここが天異界ですかぁ…」
キョロキョロと周りを見渡し、唯一の階段を眺めて嫌そうな顔をする。
「は?階段とかふざけてますよね。エレベーター無いの?」
プンプンしながら中心にある、星の力を吸い込む魔方陣に手を当てる。
魔方陣を通じて、天異界の情報を得ていく。
下層、中層、上層に分かれている構造を確認。
「ふむふむ…ここに行けば良いんですね」
ペタペタと歩きながら、果てしなく続く階段を見上げる。
様々な感情が頭を過る…登りたくない…疲れる…面倒くさい。
しかし、ここでへこたれたら、ここに来た意味が無い。
「仕方無いですね。_フライ!」
飛行の魔法を発動。
「トゥッ!」と飛び上がり、
メコッ!_
「__ぎゅぱぁ!」
顔面を強打。
飛行系魔法を無効化する結界がある様だ。
「ふごぉぉぉぉ!」
顔を抑えてゴロゴロと悶絶。
しばらくして、パタッと動かなくなった。
______
白い階段が途切れ、再び広い円形の踊場に到着。
「…」
『やぁ、待っていたよ』
中央に人影。
妙に響く声で、軽やかに喋る存在に、警戒心が数段上がる。
『魔王と闘いたい奴が上に居るんだ。だから銀色か紫のどっちかと相手になってあげる』
「私が…行くね」
「気を付けて…アイツ…強い」
「毒酒ちゃん…頑張って」
キリエとシルヴィが回り込みながら、奥にある階段へ向かう。
中央に居る存在は、薄ら笑いを浮かべながらキリエとシルヴィをチラ見して、毒酒に向き合う。
『さて、格が上がったら何をしようかなー』
「……」
金髪の何処にでも居そうな少年の姿に見える。
黒いマントで身体を隠し、ニヤニヤと笑っている。
『僕の名は…コレクターとでも呼んでくれ』
「私は…毒酒」
『知っているよ。嫌われ者の毒沼でしょ?』
「そう…だから?」
『おや?味方にも嫌われて逃げていたのに』
毒酒が冷えきった視線をコレクターに向ける。
毒酒の足元から、毒々しい色の魔方陣が出現。
「_環境魔法・毒の世界」
円形の踊場が毒で埋め尽くされる。




