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天異界。3

 この世界を管理する神種の一柱。


 白く美しい天使の姿。

 顔に流れる一筋の黒い傷が目立ち、完璧な美しさに陰がある。


 白の大天使ライフと、絶望…イービル・デス・イーターは神話の時代に死闘を繰り広げていた。


 黒い傷は…絶望が地下深くに封印される直前に、ライフの顔に付けた魂の傷。

 消えない傷。

 美しさを一番大事にしていたライフにとって、消えない顔の傷は敗北の証。



『長かった…下界に降りても…貴様の所には行けなかった』

「そりゃあ…魔王の身体では、初代聖女(あの女)が命を掛けた封印は破れまい」


 一対一の死闘中、隙を見て絶望を封印した人間の軍勢。

 先頭に立つ聖女の封印禁術で絶望は地下深くに封印された。


『待った甲斐があった…』

「…お前は、違う天異界の担当だったな」

『貴様を殺せば、元の場所に帰る』



 ライフが手を振ると、真っ白い細剣が現れ。

 目を閉じ剣先を上に向け、柄の部分を胸に当てる。


 絶望が小さな手をだらんと下ろす。

 両手には一対の黒い短剣が現れた。


 円形のホールが、白と黒の力に満たされる。


「…」

『…』


 一瞬ライフの身体がブレ、

 絶望の中心に放たれた細剣。

 ガキンッ!__

 短剣に阻まれる。


「__黒縛」

 黒い短剣がライフの身体に伸び、

 黒い縄になり纏わりつく。


『_光翼…』

 ライフの翼が光り輝く。

 ブチブチと黒い縄を引きちぎり飛び上がる。


『…天翔!』

 光を纏い絶望に向かって急降下。


「_黒の螺旋!」

 絶望の両手が黒く染まり、

 合わせる様に黒い螺旋の波動を放つ。


 ガンッ!__

 衝突。

 両者は弾かれ、お互いに弾き飛ばされる。


「やるなっ!_黒の剛腕!」

 右手が黒く巨大な腕となりライフを殴り飛ばす。

『くっ_光の弾丸!』

 殴られながらも光の弾丸で黒い腕を貫き

 細剣で斬り刻む。



 ボタボタと落ちる腕の破片。


『…その姿でいる意味は何だ?』

「この姿に愛着が湧いているだけだ」


 黒髪ツインテールの少女の姿。

 人間の姿で居る意味は無い。

 むしろ、弱体化している。


『…くだらん』

「そうか? 我は大事な友が出来たぞ」

『友?…馬鹿らしい』



 絶望がニヤッと笑い、黒い魔方陣を展開。


「元より、お前は我に勝てぬよ。…黒魂の儀式」


 空間が黒い力に満たされる。

 魂を吸われる様な…

 引摺り込まれる様な…

 虚無を生む力…


 ライフも白い魔方陣を展開。


『本当に…腹立たしい存在だ。…天使軍召喚』


 白い魔方陣から次々と現れる羽の生えた天使達。

 ビシッと整列し、手に持つ細剣を絶望に向ける。



『…集中砲火』


 天使達が光を纏い、絶望に光のレーザーを叩き込む。

 幾重にも伸びる光のレーザー。


「効かぬよ。魂喰い」


 光のレーザーを吸い込み、波動を放つ。

 黒い波動に当てられた天使達が落ちていく。

 それに合わせて黒い力が増大。



『落ちた天使は回収。結束魔法の準備』


 天使達の光が繋がっていく。

 光の魔力が合わさり、次第に巨大な剣の形に。


「ふんっ、黒葬…」


 絶望が両手を合わせる。

 黒い力が増大。


『放て、神剣・プルガシオン!』


 天使達が作成した巨大な光の神剣。

 触れたらたちまち浄化する力。

 絶望に振り下ろされた。


「…死の棺」


 絶望の前に、鎖に繋がれた黒い棺が出現。

 鎖を両手で持ちぶん回す。


 バキンッ!__


 神剣を上に弾く。


『__私がやる!』


 ライフが弾かれた神剣を掴む。

 神剣の力を凝縮しながら絶望に振り下ろす。


「やられぬよ!_死技・葬送!」


 バキンッ!_


 棺を振り上げ神剣と衝突。

 衝撃波が発生。

 天使達が吹き飛ばされる。


 ライフが一瞬の硬直。

 その隙に絶望が黒い力を放出。

 ライフが黒い波に包まれ浸食される。


『ぐぅ…』


 ライフも浄化の光を放出。

 光を浴びて絶望の身体が溶ける。


「くっ…」



 身体の浸食に耐え兼ね、お互いに離れる。


「ふぅ…痛いな…神気は、使わぬのか?」

『くっ…力は互角…使うと…弱くなる』


「ふっ、そうか…黒大砲!」

 絶望が両手を向けて黒い弾を放つ。

『_卑怯な!光翼連弾!』


 ガガガガ!__

 黒い弾を光の弾丸が弾いていく。

 弾ききれずに着弾。

『_がぁ!』

 光の弾丸も絶望に当たっていく。

「_ぬぁ!」


 ライフが転がり、絶望が膝を付く。


 反対の力を持つライフと絶望。


 反発が激しく、攻撃を受ける度に力が削がれる。


 体力の消耗が激しく、身体はもうボロボロだった。



「もう…終わりに、しようか__死力解放!」


『…ふんっ__命力解放!』


 神剣・プルガシオンを上に掲げて力を解放。神剣の力がさらに凝縮されていく。

 絶望も鎖を担ぎ、力を解放。棺が重苦しいオーラを放つ。


「_ライフよ!強くなったな!死技!」

『_はっ!貴様を倒す事だけ考えていた!神技!』


 絶望が笑い、ライフも笑う。

 死と命、対称的な存在だからそこ、お互いの強さが解る。


「_死滅葬送!」

『_生命の光!』


 死を運ぶ力の波動と命を照らす光がぶつかる。

 死が光を浸食し、光が死を浄化していく。

 拮抗する力が反動を起こし、

 お互いの力が染まっていく。白は黒に。黒は白に。


「…」

『…』


 絶望とライフが向かい合い、力を使い果たしたかの様に、両膝を付き沈黙。

 力の反動で身体が動かず、動くのは口のみ。


『…あの女は、神となったぞ』

「…そうか…えらい出世だな」

『…まだ…弱いがな』

「…それを聞いて…安心したよ」

『…死ぬのに…か?』


 ザシュッ!_ザジュッ!_ザジュッ!_

「ぐ…あ…」

 生き残った天使達が浄化の剣を絶望に突き刺す。

 身体を貫かれ、苦しみながらも笑う絶望に、ライフが顔を顰める。


『…死ぬのに笑うとは…理解に苦しむな』

「くくっ…お前には…わからんよ…我には…友が居る…それに…」


 絶望がゆっくりと浄化され、身体が溶ける様に小さくなっていく。

 最期まで笑顔を絶やさない。

 そこにあるのは、信頼と…


「お前は…我に…勝てぬ…」


 絶対の自信。


 バキンッ!__


『__あがっ!』


 ライフの顔に刻まれた傷が激しい音を立てる。顔を抑えて苦しみ出した。

 バキバキと傷が広がり、顔が割れていく。

 ライフは黒の力を受け過ぎた。

 魂の傷が広がり、命が失われていく。


『__ぐあぁぁぁ!』


 苦悶の表情で倒れ込むライフ。


 もう、動く様子は無い。


 そしてフッと天使達が消え、絶望がドサッと倒れた。


「勝った…ぞ…みん…な…」


 絶望の身体はもう動かない。


 光を受けすぎた。


 消えていく身体。


 やり残した事はあった。


 でも、後悔は無かった。



「……楽し…かった…なぁ…友よ…」







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