「グリーダちゃん…アホさも超進化したんだね」
グリーダが指で輪を作り、目に当てる。広場に落ちた四人を解析した。
「んー?絶対種が二体に魔王が一体?それにキリエさん?…中々濃ゆい面子ですねぇ…
あの魔王をマスターに献上したいけど…エルフかぁ…分離は出来るけど、エルフの心が死んでるなぁ…
絶対種は、人化解いたらここの人達、全員死ぬし…目的は何ですかねぇ…」
「あのじめじめしたオーラ…私じゃ歯が立たないわね」
「…確かに…ヤバいね…陰気にぶつぶつ呟いてる今がチャンスかな…」
「…逃げられるか?」
「強い…どうする?」
広場に落ちた四人がグリーダを見て臨戦態勢。四人の魔力が上昇していく。重厚な魔力が溢れ、野次馬達はざわめきだす。勇者を呼びに走る人も多い。
「でも、みんな可愛いなぁ…お友達になってくれませんかねぇ」
グリーダが四人に近付く。
すると四人が後ずさる。
グリーダが一歩進む。
四人が一歩下がる。
「…あれ?何か焦ってるみたいですけど、化け物でも出たんですか?」
グリーダが四人の視線をたどり、振り返るが誰も居ない。
少し右に移動してみる。四人の目線が右に動いた。
「私を見てる?……ふふふー、皆さんも私とお友達になりたいんですか?良いですよ。なりましょう。お友達にぃ!」
「みんな…私が食い止めるから逃げて」
「何言ってるのよ。キリエを置いて逃げれる訳無いでしょ」
「でもどうする?勝ち目は無さそうだぞ」
「牽制…する。…浸食の毒沼」
毒酒ちゃんが毒々しい色の魔力を発生させ、毒沼が出来上がっていく。
「うわぁぁ!逃げろぉ!」「きゃぁぁ!」
野次馬が逃げ出していく中、グリーダは首を傾げるだけ。
毒沼が足元に到達するが、裸足のグリーダに効果は無い。
「はぁ~…ヌメヌメしてピリピリして…なんかトリッキーな足湯みたいですねぇ。
ありがとうございます。良いですよねぇ、友好の挨拶」
「効かない…」
両手を上げる毒酒ちゃん。徐々に毒沼が広がっていき、キリエ達の場所以外の広場全体まで毒が回る。その間、人々は広場から遠ざかる様に逃げまどっていた。
毒沼は、やがて広場を越え、階段を昇り大教会の前まで到達。
「でもこの足湯、普通の人には刺激が強いみたいです。触れたら死にますけど…」
ポツンと毒沼に立つグリーダ。一歩踏み出したら離れそうなので、少しずつ四人の方にスー…っとスライドしていく。
「あのー…」
「くっ…次は我が…黒檻!」
ドンッドンッドンッ!
大きな黒杭がグリーダの周りに落ちる。黒い檻に入れられた様に閉じ込められた。
「あ、あのー…私、グリーダって言うんですけど…」
「一気に行くよ!半月!」
大きな月が出現。白と黒に染まっていく。
神聖と深淵の半月が出来上がり、グリーダが月を見上げた。
「わぁー、綺麗ですねぇ。あの、もしかして、私に墜とすんですか?過激な挨拶ですねぇ。流石願い星ちゃんの元マスターです。
願い星ちゃんも私に奈落の月を墜としてくれて、今では親友なんですよぉ」
「キリエ!私も手伝う!風の加護!」
ゴゴゴゴ!神聖と深淵に染まり
風を纏った大きな半月が墜ちてくる。
「「断罪の風月!」」
ドオオオオ!
広場に月が墜ち、石畳は粉々に砕けていく。
周囲にある建物も巻き込み、風の衝撃波で倒壊。
「……」
街の外へ逃げていた人々が、半壊した街を茫然と見詰めていた。
「…今の内に逃げるか?」
「うん、と言いたい所だけど、大教会の上に祈りの間ってのがあってね。私はそこで魂を抜かれたんだ。
だから、そこからなら天異界に繋がりやすい筈」
「なるほどね。天異界に行けば追ってこられない」
「でも…勇者達来たよ?」
粉々になった広場に、ゾロゾロとやってくる勇者達。
しかしドンドン広がっている毒沼に阻まれ近付けないでいた。
「__!」
「__!」
勇者達が何か叫んでいるが、距離があるので聞こえない。
「祈りの間から転移するまで、時間が掛かったら面倒ね」
「下手に殺せないからな」
「ふーん、そういう事ですかぁ。天異界に行きたいんですね」
「「「「_っ!」」」」
四人が振り返ると、ニコニコしているグリーダが居た。
「無傷…」
「当たった筈なのに…」
「当たりましたよ?挨拶されたら礼儀として受けるものですよね?」
「何を…言っている…」
「ふふふー、いやだなぁ、私とあなた達の仲じゃないですかぁ。次は、私の番ですねぇー!」
次は、友達の挨拶を受けたグリーダが、挨拶を返す番。友達として、中途半端な挨拶は出来ないという無駄な使命感が垣間見えた。
「ふふふー、何が良いです?私のおすすめは…そうですねぇ…やっぱりマスターの魔法が良いですねぇ…こんなのどうです?」
ブォンッ!グリーダの真上に立体魔方陣が出現。
高速回転している。
「…う…わ…」「これ…は…」「寒…い」「何なの…よ」
圧倒的な力。キリエ達は後ずさる事しか出来なかった。
「ふふふー、大丈夫です!死にませんから!多分!」
グリーダがクネクネとポーズを決めながら魔力に気合いを込めやがる。
魔法が完成した。
「…」
「ぬふふー、防いで下さい!白銀!超鋼!業獄!真嵐!エレメンタルローテーション派生!元素の真星!」
白銀の星、超鋼の星、業獄の星、真嵐の星が合わさり超エネルギー体の星が発生。
キイィィィィ!光速で星が回転。
「あ、死んだ」「死んだな」「死んだわね」「…死んだ」
ゴオオォォォ!
キリエ達に諦念が浮かび上がり。
元素の真星が墜ちる直前。
シュタッ。
キリエ達の前に白衣を着た銀髪の女性が降り立った。
「…グリーダちゃん…アホさも超進化したんだね…」
月読が白、黒、銀色の魔方陣を展開。
「お前は…」
「…あなた達も手伝って。あのアホを止めないと地下が壊れる」
「で、でもどうやって……これは?」
月読がキリエ達に精霊石を投げ渡す。
「精霊石。これで私に全力で魔力を流し続けて…リフレクト・ミラーフォース」
ドンッ!月読の前に巨大な鏡が出現。
その時。
ドオオオオ!
元素の真星と衝突。
ミシミシ。ミシミシ。
「くっ、早く!」
「わっ、分かった!」
全員で月読に魔力を流す。
ミシミシ。ミシミシ。
「んー?願い星ちゃーん、何してるのー?」
「…アホの尻拭い」
ミシミシ。ゴゴゴゴ!
「なにー?聞こえないよー?」
ズンッ!グリーダが星に魔力を乗せる。
「ぐっ…あのアホ」
「もう…魔力が…」
「くっ、どんだけ…強いのよあいつ」
「これは…まずいな…」
「何か…方法…無い?」
このままでは全員死ぬ。
ミシミシ。ミシミシ。
ひび割れていく鏡。
「グリーダちゃん!」
「呼んだー?」
「指輪預かってるよ!」
「へ?」
フッ。グリーダが魔力制御を放棄。
「今!」
「うん!」
ゴオオォォォ!
制御を失った元素の真星を星の力で増幅し、跳ね返す。
「願い星ちゃん!ほんと!…えっ?あれ?なんでこっちに…ぎにゃああああああぁぁぁぁぁ!」
グリーダは星に呑まれていった。
そして、
ドゴオオォォン!
大爆発。
爆発の余波で、全ての建物が崩壊。
脆くも崩れ去り、大教会が壊滅していく。
吹き飛ばされる人々。
勿論勇者達も吹き飛ばされていく。
「はぁ、はぁ、何とか…なった」
「はぁ、はぁ、ありがとう…あなたは?」
「月読。詳しい話は、ダンジョンに行って話そう。あのアホもダンジョンでリスポンされてる筈だから」




