表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/285

大教会で…

 時は少し戻り。

 キリエ達がダンジョンに入って数日。サクサクと攻略をした彼女達はダンジョンボスを討伐していた。


「黒檻」ガシィ!

 ボスの身体が拘束され。

「どくー」ジュウゥ!

 毒で弱らせ。

「流星」ドンッ!

 さらに潰す。

『グオオォ!』

「これで最後ー鎌鼬!」


 スパッスパッスパッ!

 シルヴィの攻撃でぶつ切りにされた蟲王種グランドリワーム。

 ピクピクと肉が蠢いている。

 絶望ちゃんが頭の方へ歩み寄り、魂を抜いていく。


「いただきまーす……ふむぅ…王種は上手いな」


 砂が敷かれた大部屋の中心でウンウンと頷き、後ろで待っていた三人に呼び掛ける。


「お待たせ。この奥にコアがあるから行くか」


 奥にある砂の壁をぶち抜くと、小さな小部屋。その中心に黄色く光るバレーボール程の球体。

 絶望ちゃんがダンジョンコアに触れ、魔力を流し、四等分に分ける。


 四等分に分けたコアをそれぞれに分配。


「じゃあ胸に当てて、魔力を通しながら、コアを溶かしゆっくり浸透させる。魔力を流せば溶ける様にしたから」

「はい!先生!」

「多分個体差はあるから期待するなよ」


 魔力を通しながら浸透させる。キリエ、シルヴィ、毒酒ちゃんの表情は真剣だ。


「…」「…」「…」「…」


「…」「…」「…おっ」「…あっ」


「…」「…」「我は1サイズ」「私も…1」


「…」「…」「とまぁ、こんな感じだ。四等分だから振り幅が小さいけど」「うん…それでも…大きくなった…ありがとう」


「…」「…」「諦めろ」「諦めは…肝心」


「うわぁぁぁぁ!」

 キリエが崩れ落ちる。

「くっくっ、可哀想に」

 シルヴィは期待していなかった様で、笑いをこらえていた。



「…」

「私はエルフと融合しちゃったからねぇ。究極エルフにならない限りサイズアップしないのは解ってたよ」


「まぁ…私も…神種の端くれになってるから…仕方ない…か」


 ダンジョンコアの側にあった宝箱を開ける。彼女達から見たらガラクタが入っていたので、キリエが収納。



「あーあ…無駄足だったか……でも、楽しかったね」

「そうね。こんなに気持ちが楽な冒険は初めて」

「そうだな。無駄な事が楽しいなんてな」

「誰かと居るの…楽しい」


 全員、孤独だった。


 キリエはたった独りで邪族と闘い。

 絶望ちゃんは独り地下に追いやられ。

 シルヴィは独りで逃げ続け。

 毒酒ちゃんは毒の身体に誰も近付けなかった。



「…友達?」

「…友達」

「友達…確かにそうねぇ」

「友…か」


 正直友達かどうかなんて解らない。まともに友達なんて出来た事は無かったから。


「もし、我らの誰かが倒れても…振り返るなよ」

「ええ、志しは同じ」

「友達だもんね!」

「なんか…嬉しいな」


 四人は笑い合い、転移陣で帰還する。



 砂漠の上に転移した四人は、王都ラジウスに向かった。




 ______




 王都ラジウス。王都の北側には観光地、魔王の討伐地があり巨大なクレーターが存在していた。


「ここ?」


「うん、ここだね」


 クレーターの周囲には縄が張られ、中に入れない様になっている。観光地なので、クレーターを眺めている人々の姿が多数居る。


「ここで、何かするの?」


「別に、何もしないよ。ただ…見たかったんだ」


 キリエがボーッとクレーターを眺める。何かを思い出す様に。毒酒ちゃんがキリエの手を繋ぎ、一緒に眺めていた。



「ねぇ絶望ちゃん。感じる?」

「あぁ、女神の加護を持ってるな。あれが勇者か?」


 キリエの横で手持ち無沙汰のシルヴィが、いつもの逃亡癖で魔力を探知。

 ピリピリと覚えのある魔力。絶望ちゃんも感じた様だ。周囲に視線を向けて警戒している。



「勇者だと思うけど、なんか歪ねー…力に振り回されている様な…仮初な感じ?…それに…」


「殺すか?」


「あー…駄目。殺し方を間違えると爆発する」


「爆弾持ちか…昔は聖女だけだったのに、今は勇者もか…複数居るから、何処かの国でも潰す気だったのか?」


「多分ね。ただ生活しているみたいだし…どうせ女神を殺せば勇者じゃ無くなる」


「ただの人になる訳か…じゃあ放置で良いな」


 絶望ちゃんが腕を組み、クレーターに視線を戻す。


「…」

「…ありがとうみんな。もう良いよ」

「…じゃあ、行きましょ」


 その場で星に乗り込み、大教会を目指した。





 ______






 大教会の地下。


 ダンジョン最深部に到着した月読。


 三つの扉の内、最凶の扉を開ける。



「……」


「…なーすびー…なーすびー…わーたしーのなーすびーと…あーなたの◯◯◯◯◯!」


 体育座りで、膝に顔を埋める黒髪の女の子が目の前に居た。

 何かを呟いている。


「…グリーダちゃん、その歌、脳内ループが激しいからやめて」


「…私は昨日からずっとループしているんだ…願い星ちゃん、私の苦しみをあなたにも…」


「…お帰りなさい」


「…ただいま」


 体育座りのグリーダを抱き締める。寂しかったみたいでシクシク泣いていた。

 泣いているのはいつもの事なので、泣き止むまで抱き締めておく。



「…グリーダちゃん、陰気でじめじめしてマジ暗いから太陽の光でも浴びよう」

「うん。ありがとう願い星ちゃん…ん?なんか鼻がムズムズする」


 やっと泣き止んだグリーダ。

 二人で部屋の外に出て、帰還魔方陣からダンジョンの入り口に到着した。



「へっ…へっ…へっぷし!」


 ドゴオオォォン!


 教会の方から激しい衝突音がした。



「…グリーダちゃん…大教会壊しちゃ駄目だよ」


「い、いや、違う…違うよ…私じゃないよ!私じゃないよーー!」


 グリーダがペタペタと走りながらダンジョンから出ていく。


「グリーダちゃん靴履きなよ…行っちゃった。ん?秋、どうしたの?」






「私じゃないもん私じゃないもん…ん?」


 ダンジョンから出て、地下を上がり聖堂を通って外に出る。


 そこで見た光景は、大教会の前にある広場に星が墜ちていた。




「キリエ、星落ちるなら言ってよ」

「ごめんごめん。急に制御が効かなくなって」

「お尻…痛い」

「目立ってしまったな。…ん?なんだ…あいつは」


 広場には野次馬が集まっている。グリーダも野次馬根性でペタペタと広場に近付いたが、遠目に見える同じ黒髪の女の子と目が合った気がした。



「キリエ…逃げるぞ…あいつはヤバい」



「んー?どうしたんですかねぇ…優しいグリーダちゃんが聞いてみましょうか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ