勇者のボス戦…
「ボスってどんな奴かな?」
「ドラゴン系統じゃねえか?まぁレベル100超えてるし、ゲームだったら裏ダンジョン攻略出来るレベルだろ?大丈夫大丈夫」
「…気を抜かない様にね」
勇者達、ダンジョン攻略組20名は緊張気味だが自信のある表情で赤黒い扉を開ける。
ギィィ…
重厚な扉を開けた先、大きな部屋になっていた。奥の方に何かが居るのを確認。
少し薄暗い部屋を、勇者達はぞろぞろ歩いていく。
バタン。
「きゃっ!」
「なんだ?扉が…閉じ込められた?」
「どうやら倒さないと帰れないらしいな」
入って来た扉が閉まる。その時、奥にいる存在が首を上げた。
『グル?』『グルル』『グルルル?』『グガァ…グガァ…』
「う…わ…」
「りゅ…龍…」
「四体も…」
赤、白、蒼。黒色の龍。一体の大きさは20メートルを超えており、ただのドラゴンとは違う圧倒的な存在感。赤、白、蒼が顔を上げ、黒は眠っている様子。
「歩美!鑑定だ!」
「_っ!う、うん!鑑定!レベルは無い…強さ…赤が300…白が400…蒼が500…」
「くっ、強いな…黒いのは解るか!」
「黒…1000」
「うそ…」
「1000?勝てないだろ…」
勇者達に動揺が走る。今までのドラゴンは強さ350が最高値だった。しかしそれは20対1というもの。今までとは訳が違う。
「……みんな、やるしか無い…」
「ああ…腹を括ろう…」
「うん…」
やられ役のスーパーウルトラ4色炎龍との絶望的な戦いが始まる。
_____
(なぜ、こうなった)
「聖烈斬!」
『ギャアア!』
「流石聖弥君!」
「よし!あと三体!」
「黒いのはまだ寝てる!今がチャンスだ!」
______
(何を、間違えた)
「聖烈破斬!」
『グアァァ!』
「はぁ、はぁ、交代」
「あぁ!俺に任せろ!」
「あと二体!」
______
(俺が、弱いからか?)
「聖烈剛斬!」
『グルァァ!』
「義隆!回復を!」
「葵!休んでろ!」
「あと一体!_っ!起きたぞ!」
______
(違う…こいつらが…弱いからだ)
『グアァァ!』
「防御だ!」
ゴオオォ!黒龍が顔を上げ、黒いブレスを放つ。
「うぎゃああぁぁ!」
「いやああぁぁ!」
「あづい!あづぃ!」
「ああぁぁ!」
防ぎきれなかった勇者達が炎に呑み込まれた。
「う…そ…」
「ひぃ…死ん…だ」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!」
『グルル』
ゴオオォ!再び黒龍の黒いブレス。
「またブレスだ!逃げろぉぉぉ!」
「ギャアア!」
「いやぁぁ!」
逃げ遅れた勇者の1人がブレスを受け、黒い人形が出来上がる。
「残り一体なのに!」
「聖弥!ボケッとするな!」
「あ、あぁ、悪い」
勇者達は赤龍、白龍、蒼龍を倒し、残るは黒龍となった。
なんとか死者を出さずに来たが、黒龍のブレスで勇者達の半数が死亡。
また1人、黒龍のブレスで焼かれた。
(こいつらが弱いから…俺の足を引っ張るから…)
「聖烈破斬!」
ギンッ!
「_くそっ!硬い!くそぉぉぉ!」
聖弥の渾身の一撃。綺麗に入った筈なのに黒龍の鱗に弾かれた。それを見た勇者達に絶望が入り込む。
「もう…駄目だ…」
「勝て…ないよ…」
(てめえらが悪いんだろうが)
「諦めるなよ!お前ら!弱いなりに頭を使えよ!これ以上足を引っ張るなら俺がお前らを殺すぞ!」
「聖…弥君?」
「聖弥…くっ、落ち着けよ!頭に血がのぼっているぞ!」
「うるせえよ!俺が居なかったらお前らもう死んでんだぞ!少しは役に立てぇ!うおぉぉぉ!」
聖弥がヤケくそになって黒龍へ突っ込む。
『グオッ』
バチィン!簡単に尻尾で払われ、
「ぶはぁ!」
後方に飛ばされ、ボロ雑巾の様に倒れ付した。
「聖弥ー!」
「聖弥君!」
(くそ…くそ…くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ!___≪くっくっく…強くなりたいか?≫___っ!)
「龍は俺達が引き付ける!佐藤!頼む!」
「うん!聖弥君!回復を!」
森田義隆ら残りの勇者達全員で龍を引き付ける。
その間に佐藤千恵が聖弥に駆け寄り、回復を掛けた。
聖弥が一番強い。唯一の希望。生き残っている勇者達は折れた心を奮い立たすので必死だった。
「………」
「聖弥君…私、弱いけど…聖弥君の為にがんばるから…」
「……千恵…お前…」
「私、聖弥君が好きだから…聖弥君の為なら、なんだって出来るから」
「そうか…」
震える手で、聖弥に回復を掛け続ける千恵。精一杯の笑顔を聖弥に向ける。
「なら…俺の為に死んでくれ」
グサッ。「あ…か…せい…や…く…」
千恵の心臓を貫き。
「…フュージョン」
千恵が聖弥に吸収された。
「く、くっく、最初からこうしてれば良かった」
勇者達が黒龍を牽制している間に、黒く焼け焦げた勇者達の元へ行き「フュージョン」次々と吸収していく。
「はぁ、はぁ…佐藤!聖弥は回復したか!」
義隆が黒龍から目を逸らさずに佐藤千恵を呼ぶ。しかし、返答は無い。
「ブレスに備えろ!須藤!前衛頼む!」
「ああ!」
痺れを切らした義隆が後退。
「まだか!_っ!」
後ろを振り返る。振り返ってしまったと言うべきか…見てしまった。御堂聖弥が死んだクラスメイトを吸収している所を。
「聖…弥…なに、してんだ?」
「何って、役に立ってもらったんだよ。義隆、もう大丈夫だ」
フュージョンが終わり、呆然としている義隆を追い越した聖弥が、黒龍の攻撃を耐えている勇者達の前に立った。
「聖弥君!もう大丈夫なの!?」
「ああ、もう大丈夫だ!俺が!こいつを倒す!聖烈破斬!」
ザシュッ!『グアァァ!』
聖弥の一撃が黒龍の顔を斬り裂く。
「攻撃が入った!サポートするね!パワーアップ!」
「絵里香!ありがとう!うおぉぉぉ!」
以前とは比べものにならないスピードで黒龍の後ろを取る。
「終わりだぁ!聖烈剛斬!」
ザンッ!『グアァ…』
黒龍の首を斬り落とした。
「はぁ、はぁ、やった…やったぞー!」
「凄いよ!聖弥君!レベルが凄い上がってる!」
「やった…でも…みんな死んだ…」
「うぅ…もう嫌だよ…」
勝利の雄叫びをあげ、剣を掲げる聖弥に安堵した表情を見せる生き残った勇者達。
その中で、森田義隆は困惑していた。
「聖弥…お前…仲間を、吸収したのか」




