露店を回る
荒地を整地した。カナンは頑張った様子で仰向けにだらんとしている。
「いやー、調子こいたなー」
『おつかれ』
ははっと笑い、時折視界に映るリーリアを眺める。
「よし、森に戻るか」
精霊の森に戻る。
「しかし、身体に埋め込むと威力が増すのは発見だなー、新しい理論?心臓に刺すと死にそうだな、流石にやらんが」
前世から自分で人体実験するのは慣れているので、その内やるだろう。
「刺すのは良いけど固定方法が無いか、ゴムは無いし、固定具作るか…参考までにガントレットとか見てみようかな…次の休日の目的地は防具屋だなー。楽しみだなー、なんか手甲に宝石嵌めてるとか憧れだし」
カナンの予定は埋まっていく。主に独りでの予定が。
「そろそろ帰るか」
『ばいばい』
「またな、あっそうだリーリア」
『なに?』
「俺らは友達だよな?」
『ともだち…うん』
「ああ、ありがと。またな」
ついつい確認しちまうなー、と呟きながら、今世での最初の友達が居る精霊の森を出る。空を飛び抜けやがて王都に着いた。
時刻は大体昼過ぎ。人々は行き交い、賑わいを見せている。
「着いたっと…まだ時間あるな…ちょっと歩くか…」
壁に貼られた探し人のチラシを見た後、ブラブラ歩く。
「あっ、やべ…森にメガネ忘れてきたな、帰ったら予備作るか」
(フジは西区によく居るらしいって書いてあったなー、地道な聞き込みかな?)
「にしてもあのチラシ…依頼主が貴族なんだよなー、助けたヤツの中に依頼したヤツが居るのか、それとも噂を聞いたヤツが、囲い込む為のものか……賞金付きで、どちらにしても犯罪者みたいで、すげー迷惑だな…」
(見付けたら光金貨1枚……100万円か……いつの世も人は…)
王都を目的も無くてくてく歩く
「そういえば俺の友達ってリーリアと、精霊達と、あと……あれ?あと…あれ?おかしいな…思い付かない…」
「学校ではそんなに好かれて無いしなー、特に女子から幽霊幻想キモいとか聞こえてくるし…壮大な物語が始まりそうだ……まあ他の子供が陰口叩かれてるのを見るよりゃ遥かにましか」
実はエリがカナンを探している時に、訪ねた彼のクラスの女子が、気を効かせて、後日カナンが居る時にエリにあいつがカナンだと伝えている。
その時エリは「この前、急に話しかけてきた気持ち悪い人」と発言。
それ以来一部の女子から気持ち悪がられている様だ。
だが、違う一部の女子はたまにカナンがメガネを外すのを目撃している。ライバルが減って嬉しいと思いつつ、誰が仲良くなるか日々牽制し合う日々が続いていた。
それを知らないカナンだが、特に気にしていないので調べる気も無い様だ。
「同世代の友達いねーな、借りがある王女でも脅して友達になってもらうか?それはなんか違うな、友達が欲しい訳じゃ無いし…図書館もなんか行きづらいんだよなー」
あれ以来西区の図書館には行っていない。学校も授業が終わればすぐに帰っているので少し暇人だ。
「まあいいや、貴族の相手するより遥かにましだ。」
露店を冷やかしながら歩く。
「あっ、あれはクラスの女子だな」
5人くらいの少女達、キャピキャピしている。少女達も露店を回っているようだ。
「まっ、いつものメガネしてないし気付かんだろー。面白そうなモノ無いかなー」
「いらっしゃーい」
「おっアクセサリー売ってるな、良いのあるかなー」
(姉さんとリナにまた何か作ってあげないとなー)
綺麗な石の付いたネックレスや指輪、アクセサリーが並ぶ。
「あのっすみません!」
「はい?」
すぐ横から声をかけられたので振り向く。
「カナン君……だよね」
クラスの女子が居た。
「う、うん」
(見つかった、顔が真っ赤だ…怒ってんのか?何言われんだろ…)
「アクセサリー見てるけど…誰かにあげるの?…彼女とか…?」
カナンは可愛いデザインのモノを見ている。その様子を全員が凝視していた。
「いや?姉さんと妹にプレゼントするだけだよ…」
(何?怖いんだけど)
「ほっ…そうだったんだね!」
何か安心したようにリーダー格の子が言う、後ろの4人もほっとしているようだ。
「あのカナン君っていつもメガネしてるけど、どうして?」
(どうしてって言われても…前世からの癖とか、おねーさんとお揃いだからって言うと気持ち悪いって言われそうだし)
ふと前世を思い出した。
「んー…メガネかけ始めたのは、昔ドブネズミって言われてからかなー」
(あっやべ、前世の事言っちゃった…やばいあだ名が増える)
「カナン君はドブネズミなんかじゃないよ!」
悲しそうに少女は言い、他の面々もうんうんと頷いている。
「あ、うん、ありがとう」
え?どうしたの?と思いながら困った様に笑って誤魔化す。
『ねえ、私達と一緒に露店回らない?』
「まあ、いいけど」
『やったー、じゃあ行こう!』
その後女の子達の買い物に付き合わされた。時間が過ぎ。
「「ばいばい」」
「ただいまー」
(なんだったんだろ?)
その後休日に露店に行く女子が増えたという。




