毒酒ちゃん
毒沼地獄の中で蠢く毒沼。その近くに降り立ったキリエ、絶望ちゃん、シルヴィ。
毒沼は25メートルプールがスッポリ入る大きさ。ブクブクと気泡が湧き、くすんだ赤や青に変化している。
「…何色なんだろ?今はくすんだ黄色?あっ、緑に変わった」
『ブクブク…ブクブク』
「なんか自分でブクブク言ってるわね」
「これで寝ている状態だな。おーい!毒酒ー!」
『ブクブク…ブクブク』絶望ちゃんが叫ぶが変わらずブクブク言っている。「どーくしゅー!」
「どうやったら起きるの?」
「ちょっと触ってみよう」
キリエが毒酒に近付き、手を入れてみる。
ジュッ。「あっ、腐っちゃった」手が毒々しい紫色に変質。
「キュアヒール…シルヴィちゃん何か案ある?」手を治しながらシルヴィにバトンタッチ。
「えー…触れないんでしょー?攻撃したら駄目?」
「もし怒って暴れるとたちが悪いんだよ」
「むぅー…」腕を組んで毒酒の周りを歩く。1周し終わり、キリエと絶望ちゃんの元へ戻って来た。
「絶望ちゃん。毒酒ちゃんって何食べるの?」
「んー…なんだっけ。人も木も鉄も食べるし…なんでも食べるかな」
「むぅ…そっかぁ…」
「食べ物系統は良い線かもねぇー。何か料理するとか?」
キリエがストレージから適当に物を出す。「あれ?」しかし食材は出てこない。グラトニー・サンドワームの巣から持ってきた物ばかり。
「…ガラクタばっかりだな」
「そういえば皆ご飯食べないもんね」
三人共、食事をしなくても空気中の魔力で活動出来る。キリエが何か無いかと、ポンポン金銀財宝や調度品を出していく。
「こんなでも食べるかな」絶望ちゃんが適当に金の壺を掴み、毒酒に投げ入れた。
ボチャッ。『ブクブク…ブクウマ』
「…」「…食べたよね?」
「…ウマって言ったな」
シルヴィが銀の食器を投げ入れる。
『ブクブク…ウマウマ』
「半分くらい入れてみようか」キリエがゴッソリ物を入れてみた。
『ブクブク…ゴハン…ゴハン』
「起きたかな?」
「おーい!どーくしゅー!我だー!絶望ちゃんだよー!」
『ブクブク…ゼツボウ…ツルペタ』
「起きたね」「やったわね。で?どうするの?」
絶望ちゃんがトコトコ毒酒の近くに寄る。「我らと来ないかー!」しゃがんで叫ぶ。
『ブクブク…パンツ…クロ…』
「とりあえず人化の魔法でも覚えて貰おう」ジュッ。キリエが毒酒に手を入れてトランスファーの魔法で人化の魔法を転写。
「キュアヒール。毒酒ちゃん、人化して欲しいんだけど良い?」
『ブクブク…ジンカ…スル…ナイスバデーキボウ』
毒酒が淡く光りだし、徐々に小さくなっていく。
「なんとかうまく行きそうね。絶望ちゃん、チューして良い?」
「後でな_んんっ…後でと言っておろうに」「…可愛いからつい」絶望ちゃんとシルヴィがイチャイチャしている間に毒酒は人型になっていった。
3人でボーッと立っている毒酒の元へ。
「…」
「おー毒酒、久しぶりだな」
「…無い」
「毒酒ちゃん、私はキリエだよ」
「シルヴィよ…可愛いわね」
「…無いの」
「どうした?何が無い?」
絶望ちゃんと同じくらい、紫色の髪と目をした10歳くらいの紫色ワンピースを着た女の子。髪型はポニーテール。悲しそうな顔で俯いていた。
「…おっぱいが無いの」
「「「…」」」
毒酒ちゃんは小さな手を胸にやり、ペタペタと触っている。下唇を噛んで、可愛い顔を歪めていた。
「…我もおっぱいが無いな…この体型はクソ龍王の趣味か?」
「んー…あっ!…あいつロリコンだ…思春期になる前が至高とかほざいてた…」
「…無い」龍王が組んだ人化の術式。キリエはこの術式しか知らない。
「あの、さ。気付いたんだけど…」
シルヴィが気まずそうにしている。
キリエは目を合わせない。
絶望ちゃんは胸をペタペタ触り。
毒酒ちゃんも胸をペタペタ触っている。
「私達…おっぱい無い…ね」エルフと融合した貧乳魔王は乾いた笑いを浮かべ。
「…それは夢よ」最近絶壁を卒業したばかりの貧乳咎神は虚空を見詰める。
「無いと困るのか?」絶望ちゃんは首を傾げ。
「…無い…の…」毒酒ちゃんは泣いていた。
「…毒酒ちゃん。クソ龍王に頼めばナイスバデーになれるかも…」
「…ほんと?」
「うん。人化の魔法はクソ龍王が組んだ術式…駄目だったら殺って良いから」
「…うん。ナイスバデーなる」
毒酒ちゃんが仲間に加わった。
「キリエ、次はどうする?」
「次は、北かな。邪神が死んだ場所を見に行ってから、大教会に行こう」
「え、大丈夫なの?教会の本部でしょ?しかも今、勇者が居るらしいし」
「勇者?そうなの?でもこっちは過剰戦力だから大丈夫だよ。魔王に咎神に絶対種が二人」
「じゃあ、大教会を攻めるのか?」
「今の所は攻める予定は無いよ。ちょっと気になる事があってね…行こっか」
一同は星に乗り、北へと向かった。




