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王都での生活

 カナン達はのんびりと進みながら王都に到着した。路地裏から茜の家に前に来たが、楓はそわそわとして、刹那は楓に手を握っていた。健次も一応居る。


「じゃあ茜ちゃん呼ぶなー」魔力を探ると家に居たので、扉をノック。


 コンコン。「茜ちゃーん。居るのは解っているんだ。無駄な抵抗はやめて出てきなさい」


 ガチャ。「カナン君、犯罪者みたいに呼ばないでよ。何?……あれ?楓?だよね?_おふっ」


 首を傾げる茜に、楓が抱き付きふるふると震えて泣いていた。

「茜…会いたかった…探したんだよ…」

「うん、あの後…この世界に迷い込んでさ…久しぶりだね」



 懐かしむ様に、抱きしめ合いながら話している様子をウンウンと眺めていると「秋ちゃん…ゲットだぜ」サティが背後から現れ、瞬く間にカナンを連れ去って行った。カナンの目からハイライトが消えていたのは気のせいに思いたい。


 変わりに永遠が困惑して立っている。


「なぁ音市、アキが誰かに誘拐された様に見えたんだけど…気のせいかな?」


「師匠が誘拐していっただけだから気にしないで良い。姉さん、大丈夫?」


「あ、え、せ、刹那?こ、ここは?」


「ここはファー王国っていう所。今、大教会は危険だから連れて来て貰った」


 錯乱気味の永遠に状況を説明していく。大人しくしている様子なので、鬼のイメージが大きい健次には新鮮に写っていた。



 カナンが消え、「あれ?カナン君?…まぁ良いか。じゃあ…家入って」丸投げされた茜は皆を家に入れて、一階にあるリビングに通す。リビングは女子会の開催場所なので椅子やソファーが多く、座る場所には困らない。


 茜、楓、刹那、永遠、健次がそれぞれ座った後に、茜は現状の説明をしていく。


「……とまぁ、そんなこんなでカナン…アキ君に拾われてここに居るんだけど、何か質問ある?」


「茜は、ここでずっと暮らすの?」


「そうなるかな。私を貰ってくれる人も居るし、今幸せなんだ」


「幸せかぁ…良かった。その貰ってくれる人ってどんな人?」


 楓が興味津々で茜に訪ねる。親友の恋人なら尚更聞きたいのは当然なのだが。「えっとぉ…ねぇ…へへ」刹那は知っているので、またのろけが始まるのかと心の中でため息をついていた。


「_でね!オード君が…」「茜、もう良い。オード君を好きなのは解ったから」茜がのろけを喋り続けていたので、早々にお腹いっぱいの楓が止める。



「じゃあまた今度話そうね。皆はどうするの?地球に帰れなかったらこの世界で生きる訳だし」


「私は、まだ解らない…かな」楓はまだ悩んでいる様子。


「俺はこの国の暗部に誘われてるから、生活する分には問題無いかなー」健次は実力を買われているので、現状は問題無い。


「私は、帰りたい…」永遠は帰りたいので、まだ考えられない様子。


「まぁ、将来の事なんて解らないよね。人なんて簡単に死ぬ世界だし…」


 茜はこの世界の先輩として、皆を導いてあげたい気持ちは強い。



「あれ?音市はどうするんだ?」


「…アキの娘になるから大丈夫」


「なんで娘?」「娘なら、私がニートでも養ってくれる」


「働く気は無いのね」「働いたら…負け」


 胸を張って言い切る刹那。その自信は何処から来るのかという気持ちはあるが、刹那はカナン達に愛されてる。そんな人生もあるかと思うが、永遠からしたらあまり良い気はしない。


「刹那、帰れるなら帰りたいよね?だって刹那…」


「…諦める事も大事」



 全員、帰りたくない訳ではない。割り切る事も必要だと頭では理解しているが、まだまだ多感な時期。少し暗い雰囲気になったが、これからの事を話さなければいけない。



「アキの遺言…間違えた…伝言で生活に必要な物はこれで揃えてってお金貰ってるから。後、働きたい人は店で働いて良いって」


「じゃあ、私働こうかな…茜と一緒に働けるなんて夢みたいだし」


「私も働く。何もしないなんて出来ないし」



 楓と永遠は働く様だ。健次はニーゼック家の依頼をこなす予定。刹那は溟海家でゴロゴロ。


 楓と永遠は茜の家に泊まる事になった。健次はカナンが音信不通なので近くの宿へ。刹那は用事があるというので外出。


 それぞれ王都での生活が始まった。





 ______





 溟海家の横に建っている加速空間の家。


 扉には『使用中。サティ主催、研究会』の貼り紙。




「あの…皆揃ってどうしたのかな?サティちゃん、動けないから秘術を解いて欲しいな…」


「そんなの、決まってるじゃない」

「わかってる癖に」

「カナン君…緊張しちゃうね」


「秋ちゃん。据え膳食わぬは女の恥よ」

「秋…これから闘いね」



「みんな…痛く…しないでね」




 ______




 一方、ラジウス王国の南方から更に南下した先。星乗りで毒沼地獄と呼ばれる危険地帯にやって来た、キリエ、絶望ちゃん、シルヴィ。



 紫や黒など、色とりどりの毒を眺めながら一番毒々しい地帯を探していた。



「ここに居そうだねー毒酒ちゃん」


「居そうだけど、どうやって起こす?あいつはアグニみたいに寝てばかりだからなぁ」


「あの色の毒とか、触ったらお腹痛くなりそうねー」


 フヨフヨと毒沼地獄を回っていくが、毒沼に入れないので上から見るだけでは全く解らない。



「キリエの魔力探知でも難しい?」


「そうだねー。全体的に毒沼だから難しいなぁ…絶望ちゃん、特徴とかある?」


「毒酒は名前の通り…液体になれる。色もこだわりが無いから様々…毒沼に入るとパンツが汚れるから入りたくないし…」


「んー…風で飛ばしてみる?」


「よろしくー」


「はーい、竜巻」ゴオオオ!シルヴィが力を解放。複数の竜巻を発生させ、毒を捲き込み飛ばしていく。



 ゴオオオ!「…シルヴィちゃん?」


 ゴオオオ!黒い竜巻。紫の竜巻。赤い竜巻など色とりどりの竜巻が発生している。遠目からみたら天変地異かと思う程の竜巻が吹き荒れ、毒の飛沫が飛び散っている。


 ゴオオオ!

「なーに?」


「あのさ、この竜巻…魔王出現の合図みたいだね」


「そうねー。あっ、飛ばない毒沼あったよ」


「あれだな」


 この日、大教会に深碧の魔王発見の神託があったが、神託を受ける聖女は居ない。


 代わりに正座している勇者達に神託が降りる事になる。










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