そろそろ向かおう
健次が貴族の家に行ってから、1週間が過ぎた。
何もしないのも大事だが、一応溟海の家で軽い作戦会議をする。
「健次帰って来ないなぁ…」
「きっと貴族の可愛い子にメロメロ…棚橋の奴、私の事可愛いって言ったクセに…」
カナンはそれまで家族と過ごしたり、溟海の家に行き訓練等をしながら過ごす。刹那はカタリナにベッタリで、カタリナの学校以外はいつも一緒に居て送り迎えもしている程。
「多分何か頼まれて安請合いしたかな?通信が通じないけど生きてはいるし」
「放置しよう」
「そうだなー。でも一応会いに行くか」
健次の忍気は貴族街を飛び回っているのを感じる為、生きてはいるが忙しそう。たまに王城にも行っている様だが、逃げる事は出来る筈なので静観していた。
「アキ、そろそろ魔国に行くんでしょ?お土産宜しく」
「はいよ。アイと紅羽も来れば良いのに」
「行きたいけど、最近監視が強くなった感じがするから王都までが限界よ。ここに居る方が強くなれるし」
「我は魔国に興味無いからな。そういえば少し前ティナに会いに王城に行ったら、変な奴に付けられたぞ」
「変な奴に?」「ああ、黒髪で変な魔力の変態風な顔の奴だな。口を割らせたら、依頼がどうこう言ってアイと我を調査していたって」
黒髪で変な魔力の変態風な顔の奴。カナンと刹那には心当たりがあった。
「…殺してないよな?」「殺してないぞ。ニヤニヤして気持ち悪かったし、黒髪だから転移者かなって放置した。知り合いか?」
「ああ、そいつが健次だな。アイツ…ストーカーになっていたのか…」
「…ギルティ」
依頼であろうとストーカーになっていたのは事実なので、どんなお仕置きをしようか刹那と一緒に相談。
アイと紅羽は話が終わったので離れていき、リーリアと矢印がやって来た。
『アキー、聞いて聞いてー』
「どうしたー」
『西の精霊達が騒いでいたんだけど、なんか変な魔力の集団が魔国へ向かっているらしいよー』
「変な魔力の集団…まさか、勇者達か?容姿は解るか?」
『ちょっと待ってねー……ふむふむ。聞いたら勇者だって。精霊と話せる人が居るらしいよー。付いていくってさ』
精霊と話せる勇者が居るならと、ついでに監視をお願いする。報酬は精霊水で。
リーリア達と話していると、しばらくして背後からサティが現れた。
「秋ちゃん、その子が月読が言っていた可愛い刹那たん?」
「やぁサティちゃん。いきなり耳元で囁かれるとゾワッて来るから扉から入って来てね」
「せ、刹那です。あ、あの…」「私、サティ。刹那たん、最初は怖いものよ。でもその先には快楽が待っているわ」
「サティちゃん。何言ってるの?そんなんじゃないからね」
「だって家に連れ込んでいるからこれからでしょ?…それに私の処女センサーが働いているから刹那たんはまだ…」
「ここ溟海さんの家だからね。しかも何そのセンサー。サティちゃんの特殊能力がいつも斜め上なんだけど…」
「…月読さんから聞きました。サティさんに任せれば最高の女になれるって」
「ちょっと待て、何吹き込まれてんの?」
「私の指導は…厳しいわよ」「ノリノリだな!」
「はい!」「目がキラキラしてる!」
手を取り合う刹那とサティを遠い目で眺めつつ、また来るわとカナンは1人で健次の元へ。
貴族風に変装して健次の忍気を辿り、貴族街へ降り立った。
「この家だけど…ってここ、ニーゼッグ公爵家か?」
見た事ある紋章。関わった事は無いが、ブルセラのグレーテン公爵家とは違う公爵。
とりあえず門番に話しかける。
「まぁ良いか、すみませーん」
「ここには馬車でも来訪が原則だが…何用だ?」
「ここにケンジ・タナハシが居るって聞いて来たんですよ。僕は友人のアキです」
「ほう、ケンジ殿の…少し待て、アキ殿だな」
貴族風な格好で警戒心が薄れたのか、直ぐに呼びに行ってくれた。
(結構寛容な家なんだなーっと来たな)
健次がやって来た。その横には15歳程の女の子。
「よう健次、楽しそうだな…ん?」
「アキ、悪いな。俺、彼女と結婚しようと思うんだ」
「もう、ケンジさんったら。フフフ…でも嬉しいわ」
もの凄い違和感があり、解析すると健次に契約魔法やら隷属魔法が掛かっているのが解る。
「アホ…バッチリ洗脳されてんじゃねえか…」




