キリエと絶望ちゃんとシルヴィちゃん
翌朝、キリエと絶望が街の入り口で待っていると、シルヴィがやって来た。見た目は緑色の髪に緑色の瞳をしたエルフの女性。
離れた後ろの方に、昨日シルヴィと一緒に居た冒険者がこちらを見ていた。
「別れは済ませた?」「こっち凄い見てるな」
「ええ。かなり惜しまれたけど…もう逃げ続けるのも飽きたからね」
「そういえばシルヴィちゃんってなんでエルフなの?」
「あー、500年前に病気か何かで自殺しようとしていたエルフに出くわしてねー。魔王の魔力も隠せるしって事で、同意の上で融合したんだ」
勇者に追われ、逃亡中に出会ったエルフの女性。良い死に方が出来ると言い残し、シルヴィと同化。以後、シルヴィはエルフとして生きてきた。
「じゃあハーフエルフで良いのかな?」「見た目は純粋なエルフだな」
「まぁそう捉えても問題無いよ。エルフの常識なんてよく知らないし」
「シルヴィ…耳触らせて」「良いよ。じゃあ絶望ちゃんの鎖骨触らせて」
街の外を歩きながら雑談。絶望ちゃんを抱っこして鎖骨を撫でながら、シルヴィは身の上話をしていく。
「魔力を隠せるなら何処かに定住はしなかったの?」
「それは出来なかった。見た目は純粋なエルフなのに常識を知らないからエルフの街には住めないし、人間の街はいつ教会に報告されるか気が気じゃなくてねー」
「んっ…そこ気持ち良い。んんっ…」
シルヴィは冒険者風の格好だが、冒険者では無い。ダンジョンを何個か攻略しているダンジョンハンターとして、その筋の者には有名らしい。
この近くにあるダンジョンは、地下に居た絶望ちゃんの魔力で変質した高難易度ダンジョン。暇潰しに来ていた所に先程の冒険者達と出会った形。
「これからどうするの?」
「現状の目的は達成してるからあんまり決めてない。世界樹の所に行くか、各地を回るか、女神を殺すかだけど…殺すのはまだ時期じゃない気がする。…絶望ちゃんの知り合いで仲間になりそうなの居る?」
混沌の神の魂を吸収し、当初の目的は達成している。世界樹に行けば星の力で天異界への扉を探しやすいが、観光もしてみたい。
「んっ…知り合いか?…ひぁっ…溟海は平和主義だからなぁ。シルヴィ、話している時は止めてくれ」「あら残念」「後でな。天空は恥ずかしがって出てこないだろうし、慈悲と我は相性が悪い。んー…毒酒か煉獄か」
「煉獄はイフリート・タイラントだよね。結構有名な話で、たしか二千年前勇者に討伐されたよ。毒酒は知らないな」
「毒酒は文字通り、毒の酒で出来た身体を持つ絶対種で、神種に効果がある毒を持っている。極限まで荒れ果てた土地があれば居るかもな」
世界各地にある大きな毒の沼は、毒酒が休憩した後の沼らしい。太古の大戦では、女神達は毒酒に近付けなかった。
「極限まで荒れた土地かぁ…シルヴィちゃん知ってる?」
「これでも500年旅をしてきたからね。ちょっと遠いけど知ってるよ」
一同は毒酒に会いに、荒れた土地を目指し大教会の南方、ラジウス王国にある荒れ果てた土地へ向かった。
そして、どんどんカナン達から遠ざかっていく。
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大教会にて、聖弥を含むほとんどの勇者達が飛空艇に乗り込んだが、行かなかった勇者も居る。勇者達37名中、30名が飛空艇に乗り込み、健次と刹那はファー王国。残り5名は大教会から脱出していた。
「本当に脱出出来たね」「ああ、俺のスティールで契約魔法を盗んで山崎の解析能力で契約内容を調べる。そして鈴木のイレースで解析した契約の取り消し。完璧だったな」
反強硬派に教えられ、契約によって大教会から出られないと知っていた彼ら。前々から脱出計画を練り、混乱に乗じて脱出していた。
「で、でも大丈夫なの?」「大丈夫大丈夫。俺達は勇者だからな」「そうねー。お金は沢山盗んで来たんでしょ?」「勿論」
「やっと異世界生活を満喫出来るぞ」解析能力を持つ山崎。
「俺は色んな女とやりてえな」スティールの能力を持つ郷。
「私はお宝とか欲しいわー」イレースの能力を持つ鈴木。
「ひ、人を殺してみたい。この世界に警察は居ないし」戦士の長田
「…」魔法使いの村山。
脱出した勇者達は、聖弥達が向かった北西側から逆方向。南の方…ラジウス王国へ旅立った。




