少しの日常を2
「「ありがとうございましたー」」
夕方に店番が終わり、カナンと茜は片付けや掃除を済ませる。
「茜ちゃんお疲れ様。これ持っていきな」
「ん?バッグ?」
「収納バッグの中に晩御飯入ってるから。たまには和食食べたいでしょ?」
「ほんと!ありがとう!」
カタリナと刹那が泊まりに来るので、茜に晩御飯を渡しておく。収納バッグの無駄遣いだが、カナンにとってこれぐらいしか使い道が無い。
「……」
茜は家に帰り、カナンは店の前に一人で健次を待つ。
「……来ねえな。通信でもするか」
≪…アキ?すまんしくじった≫
「…怪しい奴って言われて衛兵から逃げた挙げ句、何か事件に巻き込まれた声をしてるけど自分で解決出来そうか?」
≪…ドンピシャだ。エスパーかよ…いや、もう解決したんだけどその後がな…≫
「ふーん。やけに小声だけど近くに誰か居るんだな。貴族でも助けたか?」
≪いや、まあ、うん。なんか誰かと勘違いしてるみたいで…フジって誰さ≫
「…あー…助けたは良いが、人違いの挙げ句に可愛い女の子からキラキラとした目を受けながら拘束されているから逃げられないと。因みに貴族の家か?王城か?」
≪貴族の家…なんでそんなに解るんだよ…実は見えているんだろ?≫
「見えてねえよ。貴族の家なら俺は行けないな。俺は平民だから侵入したら家族に迷惑が掛かるんだよ。って事で、急ぎじゃないし良い経験だからもてなされて来い」
≪そんなぁー…あっ、はいはい!いや、大した事無いです!ホントに!だから!いや!そうじゃなくて!≫
プツリ。カナンは通信を切って家に帰る。
「ただいまー。って誰もいないか。晩御飯作って寝るか」
家族の晩御飯を作り、自分の部屋に行く。
「健次が帰ってくるまで、たまにはゆっくりするかなー。1週間帰って来なかったら迎えに行くか」
______
少し時間は戻り、夜の大教会にて。
「あれはどういう事ですか!説明をして下さい!」
「…あれは偽りですよ。我々を混乱させる為の幻術です」
カナンが使った魔法、メモリートランスファー・ザ・ビデオ。記憶を読み取り映し出す魔法によって、強硬派の行いが映し出された。
それにより、教会に対して疑いを持つ勇者達。御堂聖弥と天草楓らを中心に、強硬派の中心の大司教ナゴルに詰め寄る勇者達一向。
突然の訪問に驚き、上空に映し出された映像に度肝を抜かれる強硬派だったが、まだ高校生の勇者達をなんとか誤魔化すのは簡単だった。
大司教は勇者達を唆す。
もう魔王を倒してしまおうと。そして、早く地球に帰りたい勇者達は了解してしまう。
「では明朝に出発しましょう」
「でも何日掛かるんですか?魔族の国は遠いと聞きました」
「心配いりません。我々と帝国が魔王討伐の為に手を組み、空を飛ぶ古代の乗り物を復活させました。それに乗れば1週間で魔族の国へ乗り込めます」
「成る程。流石ですね!」
帝国が古代の設計図から復元させた空を飛ぶ乗り物。帝国が勇者の為にと提供した物だった。
単純な者は飛行機に目を輝かせ、まだ疑いを持っている者は悩む。本当に大司教ナゴルを信じて良いものかと。
しかし、魔王を倒さない事には前に進めない。ほとんどの勇者が乗り込んだ。
勇者達は魔国を目指す。




