キリエと絶望
明けましておめでとうございます。
日数が空いてしまってすみません。
宜しくお願い致します。
「……終わった」
「感じる魔力が1つになったな…扉は…開いてる」
ガチャ。カナンと月読は扉を開けて中に入る。広い空間の中央には何やら白い塊。
「グリーダは…あの中か?名前が_超進化の繭…月読、進化しているのは邪神の方じゃ無いよな?」
「多分…グリーダちゃんの力が強いから。秋、近付くと死ぬかも」
「うん、これ以上近付くとヤバいな…戻ろう」
超進化の繭が攻撃態勢に入ろうとしていたので、扉の前まで戻り結果を報告。健次はまだ白目を剥いていたので、刹那を交えて今後を話す。
『アキー、どうするのー?』
「私は出来るだけグリーダちゃんの側に居たい。師匠の所にも通うから、秋は魔国に行ってきて良いよ。何かあったら報告するから」
「…分かった。頼んだよ。まぁ、超進化の繭が羽化するのがいつになるか解らないから仕方無いか。刹那さんはどうする?魔国に来るかい?」
「…行く」
「了解。まぁ見学に行くだけだから危険は無いと思うけど…一応書き置きくらいはしといてね」
いきなり行方不明になるとまた荒れるので、効果は無さそうだが予防はしておく。
「荷物は居住区?」
「うん…でも大した物は無いからそのまま行ける」
「はいよ。後で俺の家に行ったら色々あるからそこで揃えよう。健次のもそこで」
健次を引き綴りダンジョンを出る。このまま戻ると面倒なので、教皇の部屋に書き置きを残し、一同はファー王国を目指した。
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とある地下にて。
ズリズリと進む黒い闇を追いかけるキリエ。
(ここは何処なんだろうなぁー、魔の森かな?)
砂漠地帯の地下深くからどの方向に進んだかも解らない。海に出ていないので東の方角だと思っているがよく解らない。
(んー?止まった。なんか上に続く穴を見上げている様な…)
絶望が上に向かう穴に、頭だと思われる部分を向けている。キリエは壁を抜けて穴を見上げた。
上に続く穴には、古い術式が刻まれている。
(これは…封印禁術の式。成る程、出られないのか。私なら解除出来る…これは交渉に使える?)
よく見ると絶望にも術式が刻まれている。他の場所から上に行けない様にする処置だろう。
ここなら何かあっても封印禁術の合間を縫って逃げられる。意を決して絶望の前に姿を出した。
「こんにちは。絶望さん。私はキリエ。貴方にお願いがあって来たの」
『…何か着いてきていると思ったら、聖女…いや、咎人か…珍しい客人だが、何の用だ?』
「…(絶望…近くで見ると違う。名前の通り、もっと禍々しいと思ったら吸い込まれる様に綺麗な黒色…)混沌の神の魂が欲しい。対価は払うよ」
『あぁ、コレか。神種の魂なのは良いがコレは喰えなくてな。今の私が持っていても仕方無いから、くれてやるのは問題無い』
「えっ?くれる…の?」
漆黒の魂の器。キリエに混沌のダークマターを見せる絶望。イービル・デス・イーターという名前の通り、魂を食べ力を得る存在だ。
『使い道は?コレを世界に放つと軽く国が滅びるが?』
「その魂は、私が強くなる為に喰らうの。私なら吸収出来るから」
『そうか…面白そうだから見せて貰おう。深淵に呑まれてもここなら出られないからな』
混沌のダークマターがキリエに投げられ、キリエはそれを受け取り眺める。
「絶望さんありがとう(カオスちゃん…意思は無い魂だけの存在になっちゃったのね。ざまぁ…いや違う。最期は私が手を下したかったな)…混沌の神は誰が倒したか解る?神種が束にならないと敵わない程の強さだった筈なんだけど…」
『確か…最初に手にした時は、コレが名前を呼んでいたな。おのれ龍王、おのれ秋とな』
「クソ龍王と…秋?…くふふ。ありがとう絶望さん。あの二人なら勝って当然ね」
キリエは秋が倒したと聞いて心底納得した。神種の中でも最上位の存在。破壊の神、混沌の神、邪神の三姉妹。その中で破壊の神に続く混沌の神は2番目の強さ。
秋の強さを過大評価しているキリエはウンウンと頷き混沌のダークマターを撫でた。
『その力で何を成す?』
「勿論。女神を殺す」
『…成功したら我も共に行こう』
「くふふ。大歓迎」
キリエが混沌のダークマターを、深淵の魔力で包む。力が弱まっているとはいえ、抵抗が激しい。
「くっ…流石お姉ちゃんの魂…ちょっと時間が掛かりそうだから待ってね」
『あぁ、何年でも待つぞ』
暗い地下深く。キリエは不敵に笑い、絶望は軽く笑い声をあげる。出会ってしまった復讐者達が笑い合った。