邪神に挑む3
お待たせしました。
一応、流れの武器屋の方はちまちま更新していたんですが…
グリーダちゃんの話は仕事が落ち着いたらゆっくり書こうと思ったら、全然落ち着かないんですよね…
「はぁ、はぁ、_(なんだ?おかしい…邪神が小さくなっている?でも…)早く倒されて下さい」
≪ふんっ、しぶといナ≫
邪神は100メートルを超える大きさだったが、今は70メートル程になっている。力が減っていると思ったがそんな事は無い。むしろ強くなっていっていた。
「はぁ、はぁ、邪神ちゃん…それは、邪族の特性ですか?」
≪あア、邪族特性の最適化だ。闘い易い形に身体が変化する≫
「…なんとも厄介ですねぇ_(言葉も流暢になっている…長期戦はキツイ…)…禁薬作製・龍の涙」
≪更に攻撃力を増すか…良いのか?長くは持たないぞ?≫
「ふふっ、大丈夫。勝ちますから。私には帰れる場所があるんです…戻って来いって言ってくれましたから!」
龍の涙を飲み干す。血管が沸騰する様に身体が熱い。龍の力を上乗せし、身体能力超上昇の禁薬。
「うがぁ!滅殺龍爪斬!」
_斬!
超高速移動による剛擊。
≪ぬぅ!≫
邪神の腕を斬り落とす。
「再生させませんよ!(中心が一番ダメージがある!)ここ!滅殺超龍蓮斬!」
斬!斬!斬!邪神の中心を蓮擊で掘り進む。
≪ぬぐぅ…深淵の衣≫
深淵の闇が溢れグリーダもろとも闇を纏う。
「掛かりましたね!禁呪!反転術式!」
≪何…だと!≫
グリーダを中心に闇が反転。
光に変わる。
「ギガ・ソーラレイ!」
ギュイイイ!_
極太の光が邪神を貫く。
≪ぬぐぅ!ブレイジング・バーストアウト!≫
強大な爆発_
「禁薬!光の霊薬!」
_ドオオオン!
グリーダが居る邪神の内部を爆発させる自爆行為。
「効きませんよ!ギガ・ホーリーレイン!」
__≪効かぬだと!
_キイィィィン!
_ぬがぁぁぁ!≫
1分間、闇属性しか効かない光の霊体と化す霊薬。
代償は、一定時間魔力が半減する。
≪あ、ぐぁ……はぁ、はぁ…称賛…しよう≫
「はぁ、はぁ、ごほっ…まだ…格が足りない…(あと1つ分…まだ使えない)」
邪神の大きさは、50メートルになっている。
グリーダは血を吐きながらも邪神を見据える。
禁薬により、身体はもうボロボロになっていた。
≪これが…我の…最後の…能力だ…≫
「ふふっ…困り…ましたね」
ドオオオ!深淵の闇が邪神を包む。暗く、濃い漆黒。
段々と邪神の影が小さくなっていく。
それに比例して強さも増大。
「これは…予想外…強すぎ…ですね…」
≪ここまで闘えた事に敬意を表して…≫
邪神の大きさが、グリーダと同じくらいまで凝縮される。
無数の蛇が絡まった様な腕。
筋肉質な蹄のある脚。
脈動する褐色の肌を持つ身体。
黒く長い髪を靡かせ。
黒く底の見えない瞳を持つ女性。
恐怖と畏怖、凶星を持った美しさ。
「神格上げ…これが最後の能力だ。振り出しに戻ったな」
「ははっ…駄目ですよ…ヒロイン枠は…埋まっています」
ドンッ!辺りを包み込む漆黒の輝き。
引き込まれる様な魅力的な輝きを邪神が放つ。
対するは、グリーダの放つ弱々しい光。
「やるしか、無いですかねぇ…禁薬…
__「遅い」_ドゴッ!_がはっ…」
「崩天」
_ゴキッ!_
天高く殴り飛ばされ。
「天上天下」
_ガガガガ!_
空中での連擊。
「墜ちろ、天地転墜」
_ドゴオオン!_
ハンマーパンチによる高速落下。
ドオオオン!大きなクレーターの中にグリーダは埋もれた。
「……」
「…脆いものだな」
絶望。
力の差は歴然だった。
(私は…死ぬのか…死んだら…)
『いい加減、余の言う事を聞くのだ。ドブネズミよ』
『誰…が…お前なん…かに…』
(記憶も…消える)
『くっくっく、いつまで強がれるのかな。連れてこい』
『アキ兄ちゃーん!』
『_なっ!やめろ!』
(この記憶も…消えるの?)
『くはははは!』
『あ…き…に…いちゃ…ん』
『嘘…だろ…うおおおおお!』
(駄目…それだけは駄目。この苦しみは忘れちゃいけない)
『もう…やめて…くれ…お願いだ…』
(こんな私の絶望なんて…マスターの絶望に比べたら…)
「…ヒー…ル…」
「終わりだ。ダークネス・クロス」
闇の十字架が墜ちる。
「テレ…ポート…」
_ドンッ!_
「…まだ諦めぬのか?」
「こん…なの…可愛いもんですよ!禁薬・英雄の薬!」
ボロボロの身体。
帽子は無くボサボサの髪。
それでも闘志は衰えず、英雄の薬を飲み干す。
半減していた魔力が無理矢理こじ開けられ、ピキピキと身体が軋む。
こじ開けた魔力で魔方陣を展開。
「力では…勝てません…魔力でも…勝てません…圧倒的です…貴女は最強かもしれません…
でも!私の中の最強は貴女ではありません!」
「くくっ、だったらなんだと言うのだ」
紫色の魔方陣が輝き、グリーダの中心で回りだす。
「知っていますか?魔装って…己の信念、心、憧れ、理想の強さを魔力に乗せて具現化する魔法なんです」
「何を今更。我には必要無い物だ」
「ふふっ…それは本当に助かりました。貴女に理想の強さが無くて」
紫色の魔方陣がグリーダを包み込む。
「ふんっ、我こそが最強だ」
「ははっ、貴女には一生分かりませんよ!私の理想は!信念は!最強は!揺るぎません!魔装・秋!」
ピキピキと紫色の魔力が空間を支配する。
グリーダの髪と瞳が黒く染まり、黒いメガネが装着された。
「…やりました。出来ちゃいました。マスターの力…時空特化魔装。ふふっ、見た目…被っちゃいましたね」
「それがどうした?お前はここで果てるのだ。深淵の翼!」
「果てませんよ!時空の衣!」
ドンッ!_
邪神の背中から深淵の翼が広がり、堕天使の様に黒い羽がハラリと墜ちた。
グリーダがメガネをクイッと上げる。黒いローブに時空の力を浸透させる。
「アビス・セイヴァー!天元誅殺!」
_ギャリッ_
深淵の剣で気付いた時には斬られていた。
「なんだと?」
だがグリーダは斬られていない。
「効きません!ディメンション・カット!」
_バキッ!_
アビス・セイヴァーを空間ごと切断。
「黒翼天翔_
「逃がしませんよ!ディメンション・ホーリーレイ!」
キイィィィン!空間を仕切り邪神を閉じ込め聖なる光を照射。
「ぬぅ!神撃!」
_バキンッ!_
空間の壁を殴り壊す。
「神格を下げさせて貰います!ディメンション・エクスプロージョン!」
ドオオオン!_
「くっ、神壁!」
空間を大爆発させ邪神を吹き飛ばすがダメージは無い。
「神気の壁…神種には天罰をも防ぐ切り札がありましたね…でも神気を使い続けても格は下がる筈」
「やる…ではないか。ダークネス・メテオ!」
漆黒の隕石が墜ちる。
「無駄です…収納」
グリーダが手を伸ばすと_フッと隕石が消えた。
「マスターの力を持った私に、魔法は効きませんよ」
「くくっ、ならば収納出来ない魔法を繰り出すのみ!」
グオン!巨大で真っ黒な立体魔方陣が出現。
「最上位の神位魔法ですか…私の神位魔法じゃ歯が立ちませんねぇ」
どこまでも上を行く邪神に呆れつつ、グリーダも立体魔方陣を展開する。
「無駄な足掻きは終わりだ。この魔法は藤島秋でも防げなかったぞ?」
「足掻いてみせますよ。マスターみたいに自爆もしません。生きて帰るんです」
お互いの魔方陣が輝き、回転する。
「死ぬが良い…ダークネス・フォース・ジ・アビス!」
深淵の闇が部屋の中を支配する。
全てを呑み込む禍々しい力。
絶対不可避の超範囲魔法。
「その魔法…ずっと待っていたんですよ。その為に最初に魔力を拡散させたんですから。パーフェクション・ストレージ!」
最初に発動した祝福の聖域。
部屋の隅々まで浸透させたグリーダの魔力で超範囲魔法を包み込む。
「ぬぐぅ…収納しきれない…もう少し…もう少し」
「無駄…だ…お前ごときの魔力では…この魔法は…収納しきれない」
ギュイイイ!__
深淵の闇を収納していくが、規模が大きすぎて入らない。
「ならば、そのまま使います!禁呪・反転術式!」
深淵の闇を反転していく。
神聖属性に変換して行くがまだ足りない。
「無駄無駄無駄!深淵増大!」
ドオオオ!_深淵の闇が更に溢れだす。
「それなら!禁呪・邪の傀儡!」
ガシィッ!_
「ぬ?身体が…」
邪神の身体が制御を失って行く。
そして、魔力の制御が緩みだした。
「これはオリジナルが邪神を操ろうと開発した禁呪!邪神ちゃん専用魔法です!_っ今だ!収納!」
邪神の魔力制御が緩んだ隙に、一気に収納。
即時自分の魔力に変換していく。
グリーダの立体魔方陣が純白に光り輝いた。
「これでこの魔法が使えます!セイクレッドフォース!ジ・ヘヴン!」
天界から全てを浄化する光を呼び出す。
眩しくも優しい暖かな光。
天使が舞い降りて来そうな神々しい光に照らされ、ボロボロと崩れる邪神の身体。
「ぐあぁぁあ!神…壁!」
「無駄ですよぉ!神に仇なすこの力!神気破戒!」
バリンッ!_
「なんだと!ぐあぁぁあ!」
浄化の光が邪神に直撃していく。
動こうにもそこから崩れて行く身体。
再生していくが追い付かず、ゆっくりと崩れていく。
「ぐぅ…何故だ!何故…神気を壊せる!」
「それはですねぇ。今から約200年前、この大教会で私のオリジナル…グリーダ・ファー・アデライトは、イリアス・ヴルー・クロスハートと共に洗礼を受けているんですよ。そして…聖女の素質を得た」
「お前は…聖女なのか?しかしそれでは」
「ええ、理由にはなりません。だけど、その聖女の素質を知らずにエリクサーで育てていきました。それと同時に、進化の秘術を使ったオリジナルは魔王へと進化したのですよ」
「…そうか…それがお前の勝算か」
「そうです。聖女キリエ、イリアス・ヴルー・クロスハートと同じく…私も…」
純白の魔方陣を展開。
邪神を包む。
「神に仇なす存在…咎人なんですよ。封印禁術!」
聖女の固有魔法、封印禁術で邪神を縛る。
白い鎖が絡み合い、邪神の力を奪っていく。
「ぐあ…くくっ…我を吸収してお前は何を成す?」
グリーダはボロボロの身体を引き摺りながら邪神に近付く。
「そんなの…決まっているじゃないですか」
邪神の額に手を当て魔法を発動。
「可愛いお嫁さんになるんですよ。さよならです邪神ちゃん。__フュージョン」
邪神が光に包まれグリーダに吸収されていく。
「くくっ、楽しかったぞ」
「私はもう二度と御免ですがねぇ。ありがとうございました」
やがて、邪神は消えグリーダが一人残された。
「…やりましたよ…マスター…願い星ちゃん…」
ドサッ__
そして、糸の切られた操り人形の様に崩れ落ちる。
「身体が…動かない…無理…しすぎましたかね…」
指一本も動かない。
禁薬の使いすぎで身体にガタが来ていた。
「約…束…守れそうに…あり…ません…ね」
ゆっくりと目が閉じていく。
永い眠りにつくように。
「すみ…ませ…ん…」




