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邪神に挑む2

 グリーダと邪神の闘いは熾烈を極めた。


≪小賢しい…ダークネス・フルフラッド≫「テレポート!両断!連断!剛断!」


 グリーダは邪神の超範囲魔法をテレポートで躱し、デスサイズで物理攻撃を加える。


≪…ヒール≫「むぅー!」


 邪神は攻撃を受けた箇所の再生に加え、回復魔法で追加の回復をしていく。




「……」≪……≫




 やがて、互角の闘いに業を煮やしたグリーダと邪神は、向かい合い睨み合った。



「邪神ちゃんの固有能力は、超再生と超魔力回復ですかね(まずいですねぇ…邪属特性でドンドン強くなっている…)」


≪…そうダナ。モウ1つあるが…お前の固有能力はナンダ?魔力が減ラない所をミると魔力系統か?≫


「ふふふー。気になるんですか?知りたいんですか?良いでしょう!教えて差し上げますよー!」



 得意気な顔でストレージから空の小瓶を取り出す。すると、みるみる空の小瓶が七色の液体で満たされた。



「禁薬作製。これが私の能力の1つ。私が魔女っ子たる由縁でもあります。因みに、この薬はエリクサー。だから私も、魔力切れが無いんですよ」


≪クックック。面白い≫



 グリーダはこの能力がお気に入りだ。オリジナルグリーダがずっと飲んでいた禁薬に関係しているのは確かだが、それよりもカナンがずっと禁薬を研究していたお蔭で手に入れた能力だと感じている。



「では、ご希望に答えて。物理戦闘特化の禁薬でも作りますか。禁薬作製・剛鬼の秘薬」


≪ムダな事を。我の力を得ると言うが…そもそも格が違うだろうに≫


「ええ、知っていますよ。私よりも格上の存在に融合は通じない。でも、弱らせて私の格が上回ればチャンスはあるんですよ」


≪少なくトモ、二つ分は格が違う。精々足掻いてみセヨ≫


「言われなくても…そうしますよ!」



 グリーダは手に持っていた赤い液体を飲み干す。ドクンッ!グリーダの身体が脈打ち、赤いオーラを放つ。



「くっ…仕切り…直しです」




 ______



 最凶の扉の前で待つカナン、月読、リーリア、矢印は戦闘音を聞きながら闘いを待つ。


 外は夜も更けている。もう数時間は経っていた。



「…さっきよりも激しい。互角の闘いなのかな…」


「…互角じゃない。邪神の方が格上。グリーダちゃんは無理して闘っていると思う」


『女の意地って奴だね。アキ、戻ってきたらちゃんと結婚してあげるんだよー』




「ああ…_ブブブ_ん?通信?健次どうしたー?」


≪ああ、やっと繋がったー。これ渡されたけど使い方分からなかったんだけど…ってまぁそれは良いや。なんか魔王に会いに行くのを天草から聞き付けた御堂が、自分も行くって押し掛けてきてさー。面倒くさいんだけど、どうしたら良い?≫


「潰せば?」


≪いや、一応クラスメイトだから抵抗あるだろ。なんとか部屋から出てもらったから良いんだけど、多分まだ部屋の前に居るんだよ≫


「ふーん。…でも別に窓から逃げれるだろ」


≪外は窓を見張っている奴らが居るんだよ。それに今音市が居るから影に逃げて置いていく訳にもいかないし…≫


「分かった。様子見に行くわ」



 カナンの口からため息が漏れる。実際どうでも良いが、健次が困っているので重い腰を上げる事にした。



「月読…少し抜けるな。動きがあったら教えてくれ」


「…分かった。多分まだ中盤戦だから、一時間は大丈夫だと思う」


「了解」



 カナンは転移魔方陣に乗り、ダンジョンの入り口へ。そのまま真っ直ぐ健次の部屋を目指す。


 辺りは暗く、灯りの魔導具がポツポツ光り人の気配が少ない。



「ったく仕方ない。…ん?行くのは良いけど何すれば良いんだ?潰せば良いのかな?」



 素直に断れば良いかと、居住区の奥へ。勇者は3階建てのアパートの様な家に住んでいる。その中の一際ボロいアパートの周りには勇者達が居た。



「ん?子供?」「迷いこんだのか?」


「どうもー、ちょっと用事があるので通らせて貰いますねー」


「お、おう?用事?」



 面識の無い勇者を横切り、アパートに到着。扉の前には見覚えのある勇者。御堂聖弥、天草楓、音市永遠らの姿が見える。


 扉の前に居た勇者達が近付いて来たカナンに気付き始め、御堂聖弥が真っ先に前に出た。



「魔王に会いに行くと聞いた。俺達も連れて行ってくれるんだよな?」


「ん?なんで?やだよ。俺は健次に用事あるから邪魔なんだけど」


「俺達は魔王を倒さなければいけないんだ。協力して貰えないか?」


「貰えないねぇ。そもそも俺には協力する義理も義務も無いんだよ。そんな事より話聞いてた?邪魔なんだけど」



 周りに居た勇者達がカナン1人を囲む様に集まって来た。それに気を大きくした楓が前に出る。



「ねぇ、私達は魔王を倒して一刻も早く日本に帰りたいの。魔王が居たらこの世界の人間も危険なのよ?協力しなさいよ」


「ふーん。協力した先に何がある?それに普通の魔王が居ようが居まいがこの世界に大して影響は無い」


「どうしてそんな事が言い切れるんだ!今も魔王によって苦しんでいる人が居るっていうのに!」



 感情をあらわに力説する聖弥に、カナンは目を細める。何を根拠にそんな事を言っているのか理解は出来ないが、恐らく強硬派に何か吹き込まれたのだろうと推測。


 聖弥達を含め、周囲を囲んでいる勇者の数は28名。


(ここに居る全員が強硬派に属する勇者かな?だとしたら掻き回すか)


 カナンが薄い笑いを浮かべる。



「ははっ、どこにだよ。えーっと…名前何だっけ…あっそうだ。聖弥さんは自分達は正義だと自信を持って言える?」


「当たり前だろ!俺達は勇者なんだ!」


「ほほぅ。正義の勇者様ねぇ…その割には勇者様達で健次の事を虐めていたけど?それも正義?」


「何の事だ!そんな訳無いだろう!俺達は仲間だ!」


「何ともまぁ…おめでたいねぇ。えーっと、そこの和樹って勇者さん。どうして健次を虐めていたの?」


「は?俺?い、虐めて無いぞ。俺と棚橋は…努力し合う仲間だ」


「沢田も仲間だと言っている。でたらめを言って話を変えようとしてもそうはいかないぞ!」



 カナンはもう面倒になって来たので魔方陣を展開。周りが警戒する中、魔法を発動させる。



「何をする気だ!この人数差で勝ち目があると思うなよ!」


「か弱い子供相手に何を言ってんだよ…もういいや。大いに揉めてくれ。魔法進化…メモリートランスファー・ザ・ビデオ」



 記憶を転写し映像にする魔法を進化させ、この大教会に刻まれた記憶を映像化する。


 健次が虐められている様子、一部の勇者の悪行を空中に映す。ランニング中に足をかける勇者。教育と称して騎士と一緒に殴る勇者。目の前で悪口を言う勇者。それを見て見ぬ振りをする勇者の姿。


 そして、強硬派が勇者達を奴隷化する計画の映像が映し出された。




 カナンは密かにアパートの中に魔力入れ、勇者達が映像に注目した瞬間にテレポート。アパートの中に入った。



「健次ー、居るかー。引きこもりの健次ー。当事者なのに出てこない健次ー」


「いや、ごめんな。なんか出ずらくてさ…悪かったって_「ほれっ」_ん?魔石?_「マナ・フュージョン。マナ・フュージョン」_っ!あひぃぃぃ!」



 カナンはとりあえず、何故か悪者にされた仕返しに健次をブリッジの刑に処す。それを横目に刹那がトコトコやって来た。



「アキ、待ってた」


「やぁ刹那さん。ちょっとダンジョンの最下層に居たんだ。また戻るんだけど来る?「行く」はいよ。そうそう、健次が呼ぶから仕方無く来たら悪者にされたんだけど、健次に八つ当たりして良い?「存分に」了解。マナ・フュージョン」


「3連続は_っらめぇぇぇぇ!」



 健次の究極ブリッジを見ながらカナンは思う。(あれ?結局何しに来たんだっけ?)



「アキ、人間って…こんなに反るんだね」


「…ああ、すげえな。とりあえずダンジョンの前に転移するから掴まって」


「分かった」


「健次も行くぞー。テレポート」


 バシュン。魔力を置いておいたダンジョンの入り口まで転移。


 勇者達がどうなったのかは特に興味が無かったので見ていないが、混乱ぐらいはしてると良いなと記憶の片隅に追いやる。


 実際はかなり混乱していた。空中に特大サイズの映像だから無理も無いが、矛先をカナンから強硬派に変えた聖弥が夜の大教会を突き進む。



 カナンは刹那を連れ、健次を引きずりダンジョンの最下層へ。行けるか分からなかったが、無事最下層まで転移出来た。


 昇天している健次をそこら辺に置いて、そわそわしている月読の所へ。



「ただいま。状況は?」


「今少し収まったから会話でもしていると思う。…そこの女の子。来て」



 月読はちょいちょいと刹那を手招き。首を傾げた刹那がトコトコ月読の前へ。


 そして、月読はヒョイっと刹那を抱っこして扉の前に設置していたソファーに座った。その上にリーリアと矢印が乗り、刹那は抱っこされたまま動けない。



「アキ、助けて」

「…多分刹那さんの事が気に入っただけだから、しばらく身を任せておけば解放してくれると思うぞ」


「分かった。私、刹那」

「…月読。よろしく」

『リーリアだよー』



 月読と刹那がお互いの眠そうな目を合わせて会話を始める。


 カナンはそれを横目に扉に手を当てて、中の様子を見ようとするが出来なかった。扉に耳を当てて音を聞こうとすると、少しだけ会話が聞こえ…「こ…闘いが終わっ…ら!マ…ターとXXXするんですから!」…そっと扉から耳を離した。






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