パワーレベリング4
「ところで姉ちゃん?は良いのか?」
「良い。考え方が違うからそれぞれ別の生き方になると思うし」
「ふーん。まぁ良いなら良いけど、面倒にならない様に言っておきなよ」
「…わかった」
軽く話しながらダンジョンへ到着。踊り場にて影に隠れていた健次を呼ぶ。
「健次ー出てきて」
「了解。っと…あっどうも棚橋です」
「…何故?ランニングしていたのは?それに…この魔力…」
「健次は影分身って忍術で活動しててな。今居るのは本体。ランニングしているのは2号だ。ってか健次、他人行儀だけど刹那さんと話した事は?「…無い」…そうか」
少し気まずい雰囲気で説明をしていく。健次はいつもの通りに見学。刹那も見学。カナンの後を付いていく形だ。ダンジョンツアーが始まる。
「じゃあ行くかー。一応俺が先頭。次に刹那さん、後ろに健次な」
「わかった」「了解」
階段を下りていく。特に喋る訳でも無く下り、踊り場に到着。すると青いドラゴンが出現。「ファイアバレット」バシュン!ブルードラゴンが撃ち抜かれ消えていく。カナンはさっさと魔石を回収して階段へ向かった。
「……」
「まぁ最初は驚くよなー。俺もそうだったし。ほら音市、置いていかれるから行こう」
刹那は何かを考える様に黙り込み、カナンの後を追う。健次は少し顔を綻ばせながら二人に付いていった。
「そういや刹那さんの能力って魔力ブーストだっけ?魔法の威力が上がるの?」
「そう。性能が倍になる。レベルが上がればもっと倍数が上がる」
「そりゃすげえや。レベルは?「30」…なら大丈夫か…」
赤の扉までサクサクとドラゴンを倒していく。その間刹那は何も言わない。ただじーっとカナンの魔法を見ているだけ。
ドラゴンを5体程倒し、赤の扉の前まで到達した。
「よーし、行くかー。気をしっかり持てよー」
「…この扉…凄い存在感」
「音市、直ぐに終わるから緊張しなくても大丈夫だよ。アキが凄いのは見てたろ?」
「…うん」
先輩面している健次をチラ見して、赤の扉を開ける。3人で中に入ると4匹の龍がお出迎え。健次は威圧になんとか耐えているが、刹那は胸を抑え苦しそうにしていた。
「アキ!音市がやばい!早めに頼む!」
「…流石に王種級は刺激が強いよなー。今回も早めに終わらせるか」
ギュンッ!魔方陣を2つ展開。白色と青色。
「グオオオ!」
「名前が少し変わったな。やられ役のスーパーウルトラ4色炎龍…なんかごめんな。シャイニング・ブリザード」
ヒョオオオ!輝く吹雪がやられ役のスーパーウルトラ4色炎龍を包み、凍らせる。
「マジックバレット」バシュン!
4匹の龍が砕け、魔石が転がる。
魔石を拾い、後ろを振り返ると刹那は落ち着いた様に深呼吸をしていた。
「ここじゃあれだから、奥に行くぞ」
「…わかった」
「大丈夫か?」
「…大丈夫」
奥へ行き、宝箱の部屋に行く。そこで少し休憩する事にした。カナンは椅子を出して二人を座らせる。
「とまぁこんな感じで進んで行くんだけど。体験は終わりかな。どうだった?」
「…凄かった…アキ…貴方は何者なの?この強さは異常」
「ただの魔法使いだよ。頑張って修行したんだ。指南役は勇者の様子が見たかったからなっただけ」
「私も、強くなれる?」
「努力次第かな。別に俺が教えなくても刹那さんは強くなると思うぞー。なぁ健次」
「え?いや、まぁ音市は元々勇者の中では強い方だからな。俺みたいな役立たずとは違うし」
姉の永遠は回復系統の魔法使い。妹の刹那は攻撃系統の魔法使いで二人で組めば勇者の中ではトップクラス。指南役の中でも音市姉妹は有名人だ。
「棚橋は、何と引き換えに鍛えて貰っているの?」
「引き換えっていう訳じゃないけど、アキの味方になるって約束をしてる。後は諜報活動をして情報を仕入れる事かな」
「そう…私も味方になる」
「良いのかい?俺の味方になったら、色々な奴が敵になるぞ。教会とか教会とか教会とか」
「良いよ。別に教会の信者じゃない。それに私なら女子勇者の情報も集められる」
「確かに健次が女子の勇者の情報を手に入れたら、先ずは犯罪を疑わなきゃいけないからな」
「犯罪は犯して無いぞ…影に居るからたまにパンツは見えるがそれだけだし」
「…ギルティ」
ドスッ。「ぐはぁ…」腹パンを受け崩れ落ちる健次。今日の刹那はスカートだからだ。
「一応契約してもらうけど良い?契約しないと教会の契約に上書きが出来ないからしなきゃいけないんだけど」
「うん」
「じゃあ先に解析。……こりゃ…強硬派には敵対しない、人間の為に闘う、魔族に憎しみを植え付ける、…まだあるのか?……うわ……魔王を倒したら奴隷になる契約……強硬派の奴ら、やらかしてんな…。じゃあ上書きするな。コントラクト」
淡い光が刹那に入り、味方になる契約を上書き。勇者の契約内容はヤバめだが、まだ魔王は倒さないので後回しにする。
「味方になる契約完了。まぁ破っても害は無いから。俺が敵になるだけだし。という事で、パワーレベリングでもするか。魔石持って、マナ・フュージョン」
「んっ、くっ、これ、は」
「レベルを1上げる裏技。この魔法は俺しか使えないから、俺の味方限定の裏技だな」
「凄い…これで1…レベルが5つ分の上げ幅かな」
「次に行けそうだったら言ってな。まだ魔石はあるから」
「あり、がとう…」
復活した健次はボーッと眺めていたがふと気付く。アキが優しい。自分の時は容赦無く、待った無しでマナ・フュージョンされた事を思い出した。
「アキ…ちょっと扱いが違うんじゃないかなー。俺の時は容赦無かっただろ」
「そんな事は無い。平等だ」
「いや平等って嘘だろ!ブリッジし過ぎて腰ヤバかったんだからな!アレか!やっぱり音市が可愛いからか!ひいきしやがって!」
「まぁ熱くなるなよ。血圧上がるぞ」
「まだ若いから良いんだよ!「棚橋…私可愛いの?」ああすげぇ可愛いぞ!お人形さんみたいで今すぐ抱き締めたいくらいだ!他のクラスでも人気だったんだが姉の永遠が怖すぎて話し掛けられないで有名なんだよ!くそ!あれから腰痛すぎて寝込んだんだからな!」
「…男子に可愛いって初めて言われた」
余程マナ・フュージョンブリッジが辛かったのだろう。少し嬉しそうにしている刹那を無視して熱くなる健次。カナンは面倒そうに健次をスルー。
「あっそうだ。宝箱開けよう」
「俺の想いが流された!「棚橋…私可愛い?」ああ!すげぇ可愛いよ!」
赤い宝箱を開ける。中には赤水晶と忍玉ともう1つ、魔法玉が入っていた。そして蓋の裏にはメッセージ。
「えーっと?_今ですねー。願い星ちゃんに料理を習っているんですよ。でもどうして漬物が爆発するんですか?マスターが手取り足取り腰取り教えて下さいな。次はゆで卵に挑戦します。琴美より_…爆発は俺も分からないと思うぞ」
とりあえず健次に忍玉を渡す。中身は、暖房の術、防火の術、火走りの術が入っていた。冬は寒いので快適になりそうだ。
魔法玉を解析してみる。中身は上位魔法のダークフレイム、フレイムストーム、バーストフレイムの3つ。刹那に渡し、魔力を流させる。
「魔法?_凄い…3つも。上位魔法…魔方陣を展開するタイプ」
「まぁ練習すれば威力と精度は上がるから頑張って。まだ階段下りる?「下りる」はいよ。健次の強化は後回しな」
「ああ!やっぱりひいきしてる!「棚橋…」音市はすげぇ可愛いよ!」
賑やかになって階段を下りて行く。刹那の強化をしながらなのでゆっくり進みながら。




