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勇者のドラゴン討伐

「こいつで一区切り。マナ・フュージョン」


「おおおっふぅ!………もぅ駄目、お嫁に行けない…」


「野郎が何言ってんだ。耐え忍ぶ者になれよ。これでレベル50。全部上位種以上の魔石だから良い感じに上がったかな」


「50…なんか一気に強くなったけど、今どのくらい?」


「転移者って最初は魔力に馴染んで無いから、最初はくそ弱いんだ。それを踏まえて他の勇者だとレベル50で冒険者Bランクくらいだから中の上だな。健次は能力だけなら冒険者Sランク以上。攻撃忍術さえまともに使えればドラゴンくらいなら1人で倒せるぞ」



 1日でドラゴンを倒せるまでに急成長した健次。魔力が馴染めばもっと強くなるが、今日はこのくらいにしておく。



「この家は1日が最大1年くらいまで時間を引き伸ばせる家だから、少し忍術の勉強でもするか?多分黒のエリアはまだ連れて行けない気がするし」


「するする。王種級を見ただけで震えが止まらないから、それが無くなるくらいまでは頑張りたいな」



 黒のエリアはまた今度にして、技術を伸ばす事にした。忍気を上手く使う為に魔力と忍気を合わせながら、針に糸を通す様な精密な忍気操作の会得を目指す。



「っとその前に、昼ご飯食べる?」


「食べる。あるの?ありが…と…」



 牛丼を出した瞬間に健次が泣き出し、がっついた。



「おかわりあるからゆっくり食べな」


「あり、がとう…うぅ…帰りてえよ…」


「……」





 ______




 その頃。


 ドラゴン討伐に向けて作戦会議をする聖弥一行。


 足手まとい(健次)が居なくなったのでスムーズに会議が進む。



「止めは聖弥に任せるから、指南役達で攻撃。弱ってきたら力を溜めてくれ」


「了解しました」


「他の勇者達は聖弥のサポート。付与魔法を皆で聖弥に重ね掛けすれば皆もレベルが上がる筈だから連携はしっかりな」


「「「了解しました」」」



「あの、ゴイームさん」


 最終確認が終わり、いざ出発という所で指揮を執っていたゴイームを呼び止める聖弥。



「なんだ?」


「あのアキって奴は何者なんですか?とても強い様には見えませんでした。魔力もゴイームさん以下だと思いますし」


「…そう思うなら弱いって思っとけば良いんじゃねえか?アイツは突っ掛からなければ害はねえぞ?変な奴が居る程度に思っとけ」


「…でも、あの勝手は許されない」


「ははは、お荷物を持ってってくれて他の連中は喜んでるぞ。まっ、固く考えない事だな」


「そうだぞ聖弥、お前は真面目だから肩の力を抜いていけよ」


義隆(よしたか)、お前は気を抜きすぎだ」



 聖弥の幼なじみの義隆が場を和ませる。ガタイの良い彼は大きな盾を持ち、豪快に笑っている。


 場が和んだ所で勇者一行は階段を下りる。各自緊張した面持ち。ほとんど指南役が前衛を勤めるので勇者達は見学みたいなものなのだが。



「せ、聖弥君。頑張ろうね!」「私がしっかりサポートするからね!」「聖弥君ならドラゴンなんてイチコロよ!」


「ありがとう皆。危なくなったら直ぐに逃げてね。絶対皆を守るよ!」


「「「きゃー!守って!」」」



 聖弥の事を中学の時に出会ってからずっと好きな3人組、絵里香、歩美、千恵。あまり成績は良くなかったが、頑張って高校まで一緒になろうとする執念があり、いつも聖弥と一緒に居ようと画策している。聖弥に近付く女子にはこの3人組が立ち塞がるのが日常だ。



「呑気なものね」「勇者の自覚…足りない」



 3人組を呆れた目で見る二人の女子。姉の永遠(とわ)と妹の刹那(せつな)。双子の姉妹。本来違うグループのリーダーだが、臨時でドラゴン討伐に参加している。



「姉さんは…どう思うの?」

「ん?アキって奴?足手まといと一緒に行くぐらいだから強いんじゃない?刹那は気になるの?」


「うん…強いのは確か。でも味方じゃない」


「敵ってこと?」


「わからない…けど…勇者に興味は無さそう」


「ふーん。刹那の勘は当たるから気にしとくわ」



 途中止まったが、勇者一行は階段を下りていく。ゴイーム含め指南役10名を先頭に。


 やがて踊り場に到着した。


「グオオオォォ!」


「よし!黒色のドラゴンだ!各自作戦通り戦闘準備!」





 ______





 むむむと瞑想しながら難しい顔で忍気を練る健次。1日2日で出来る物では無く、難航していた。



「なぁアキ…忍気操作って難しいんだけど…」


「そりゃ魔力と忍気を合わせて操作するから難しいさ。とりあえず2日分はやったから出るぞ」


「それだと…まだ外だと10分経ってないけどなんで?」


「いきなり加速空間で長いこと過ごすと頭おかしくなるからな」



 習得した忍術は一定値なら使用出来るが、忍気操作が上手ければ威力が跳ね上がるのは魔力操作と一緒。


 ほんの少しだけ上達した健次は、浮き上がる気持ちを抑えながら時空の家から出る。



「さて、最下層に用があったけど取り込み中みたいだから…そこの魔方陣から出るか」


「そこの?これ転移魔方陣?すげー!」



 まだ爆発音が響いているので帰る事に。ここまで響くとかどこまで激しい闘いなんだろうと思うが、捲き込まれるのは嫌なので魔方陣に魔力を通す。


 バシュン。ダンジョンの入口にある踊り場に転移。辺りを見渡すが勇者一行の姿は無かった。



「下に行ったのかな?」


「俺が居なくなったからスムーズに会議が進んで、ドラゴン討伐に行ったんだろうなぁ」


「まっ、そうだろうなー。とりあえず見学しよっか」


「良いけど、あんまり御堂を刺激しないでな。あいつ面倒くさいから」


「面倒くさいのは最初から知ってるぞ」


「親父が警察の偉い人らしくて、何かあると直ぐ親が出てくるから…ってここでは居ないから良いのか?でも御堂自体面倒だから良くないのか?ん?まぁ良いや。行こう」



 なんかあったらアキに任せよう。その方が面白そうだし、影に逃げれば安全だし。そんな考えでカナンに付いて階段を下りていく。



「御堂聖弥とは高校から?」


「いんや小学校から一緒。って言ってもクラスは違うから、初めて話したのは高校からかな」


「じゃあ天草楓(聖女)とも小学校から?」


「小学校からだよ。クラスは一緒だったけど特に話した事は無い…いや1、2回はあるかな?忘れたわ」


「健次…友達いた?」

「……居たよ」


「「……」」



 少しの沈黙の後、踊り場に到着。そこでは丁度ドラゴンとの戦闘が始まっていた。


 カナンと健次は階段に腰掛け戦闘を眺める。後方にいるサポート勇者達は二人に気付かず、指南役達と聖弥の闘いを観戦していた。



「指南役も大変だなー」

「アキが手伝えば数秒で終わるんじゃないか?」


「やだよ。俺にメリットが全く無いだろ」


「まぁ、そうだけど…俺はどうして鍛えてくれるんだ?」


「忍者って格好良いからな。後、健次は俺に似ている気がするし」


「そっか、まぁ何にせよ、俺はアキのお蔭で救われた。ありがとう」


「何回言うんだよ…あっ、騎士の人やられたな」



 勝負は拮抗しているが、集中力が切れた所を攻撃され沈黙する騎士。直ぐ様近くの者が担いで退避させる。



「ぐぅ…ああ…」


「勇者様!回復を!」


「任せて頂戴。_ミドルヒール!」


「くそっ!俺は力を溜める!その間、時間を稼いでくれ!」



 永遠が回復魔法を唱える。騎士は深手の傷の様なので時間が掛かりそうだ。


 聖弥が力を溜めている。一撃に掛ける様子。



「うわ…押されてんなー…アキ、助けないのか?」


「しゃしゃり出て良い物じゃないよ。騎士も死にはしないから大丈夫」



 騎士が倒れた事で、拮抗していた状態から徐々に劣勢になってきた。ドラゴンが息を吸い込む。



「ブレスが来るぞ!勇者を守れ!」


「_ハイシールド!」「シールドサークル!」「ブレスガード!」



 ゴオオオ!ドラゴンが黒いブレスを吐きシールドにぶち当たる。


 ギシギシと軋むシールド。指南役達は歯を食い縛り耐えていた。



「集中を切らすな!耐えろ!」


「_皆!あと少しだ!頑張れ!__っよし!力が溜まったぞ!魔装・ブレイブ!」



 聖弥の力が溜まり、皆安堵の表情を浮かべる。聖弥から白色の光が溢れ、キラキラと眩しい。光の鎧に包まれた姿は物語に出てくる勇者の様。



「眩しいな。最初は凄いと思ったけど、今はそんなに強く感じない。俺が強くなったからかな?」


「ユウトの方が3倍強いなー…あっアイツは竜化があるからか。勇者から見たらチートだよなぁ…」



 ボーッと眺めるカナンと健次。ふと刹那が振り返り二人に気付くが、よそ見は危ないので視線を聖弥の方に戻した。



「行くぞー!聖烈斬!」



 聖弥の剣が白く輝き大きな刃となる。そして上段からの振り下ろし。


 ドンッ。ドラゴンの肩から腹にかけてを斬り裂いた


「グギャァァァ!」


「ドラゴンは弱ってる!これで止めだ!聖烈斬!」



 横に回り込んだ聖弥は剣を振り下ろし首を狙う。ガスッ!なんとか斬る事に成功。ドラゴンの首が落ちた。



「はぁ、はぁ、やった…」


「うぉぉぉ!やったぞぉぉ!」「流石真の勇者!」「「「きゃー!聖弥君カッコいい!」」」



 喜びを露にしてやりきった表情の面々。カナンと健次は見学が終わったので階段を上り、この場を後にした。その姿を刹那がジーッと見ていたが話し掛けられ無かったのでスルー。



「良いもん観れたなー。あっ健次の部屋ってあるの?」


「あるよ。来る?」


「行く行くー。そこで夜まで時間潰すかな」









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