聖女と話す2
「おはようカナン。学校休んでいたけど何を悪さしてたの?」
「おはようモリー。普通に寝込んでいただけだよ」
「ふーん。程々にね」
数日寝込んでなんとか回復した3人はそれぞれ活動を始める。一番早く回復した月読はサティの所へ。愛の授業を受けるそうだ。
「そうだ。近々大教会に留学行くから宜しく」
「あーそうなんだ。どうせ頻繁に帰って来るんでしょ?土産話よろしくねー」
「はいよ。そうそう大教会の地下にダンジョンがあってな…」
「ふんふん…」
モリーと雑談をしながらの学校が終わり。週末を迎える。モリーは友達が沢山居るので特にカナンが居なくても寂しくは無いそう。気持ち良い笑顔で行ってらっしゃいと言われたので、逆にカナンが寂しくなってしまった。
(月読ー行くぞー)『先行ってて』(はいよ)
離れていても月読とは念話が使えるので、大教会に行く為に呼ぶ。
あの闘い以降、サティと一緒に居る時間が多いのでカナンは1人の時が多いのだが、大教会には行く様子。
自由だなーと思いつつ、1人で大教会へ向かった。
「おはようございまーす。あっどうもロブさん」
「カナン君!待っていたよ!」
「はぁ、まあこの前みたいにすれば良いんですよね?」
大教会に到着。先週同様、闇の日は皿洗いの仕事。特に何事も無くクリーンを掛けまくる。
「あっカナン君、バッカスさんがいきなり食器洗いに回して悪かったって言ってて、カナン君の配属を調理に回せるけどどうする?って言われたんだけど…「あっ、楽なんでここで良いです」…ほんと?良かったぁー」
「闇の日限定ですからね。仕事は単調の方が良いですよ」
「そうだよね!うん。言っておくね!」
食器洗いエリアの全員が安堵の表情。カナンはふと考え、丸い玉を取り出す。ロブが首を傾げているが構わず洗い場に設置した。
「この流しに食器を入れて、この玉に魔力を通したらクリーンの魔法が発動するんで、これでこっそり楽しましょう。他の部署には秘密ですよ」
「_なっ!なんて素晴らしいものを!天才だよ!カナン君!」
食器洗いエリアから惜しみ無い拍手が贈られる。拍手を聞いて見に来た他の部署から、仕事しろよという目で見られるが皆は気にしない。
気持ちが1つになった瞬間だった。
「カナン君はいつでもサボって良いよ!」
「あっ、じゃあ行ってきます」
公式にサボれる様になったので、フラフラと徘徊する事に。別に魔導具がバレても今更かなぐらいにしか思わなくなっていた。
「さぁ、何しようかなー。月読はまだ来なさそうだし、ってか来るのか?まぁ良いや。教皇の所行こ」
途中また猫がにゃんにゃん付いてきたが一撫でして再び歩く。礼拝堂を横切り階段を登り、教皇の部屋をノックする。
コンコン。「…また居ないか…お邪魔しまーす」
いつもの通り勝手に入り、ソファーに座り古代の資料を読み始める。
「紅羽が泳げる様になる魔導具って無いかなー。大きな2つの浮きが邪魔してガボガボしてるから…それ以前に水が苦手か…ん?やぁ。1週間ぶりだね聖女さん」
「…ねぇ、茜にはいつ会わせてくれるの?」
「…何言ってんだ?遠い国に居るから、手紙を今送っているんだよ。数ヶ月後に手紙が届いて、返事が来るのはまた数ヶ月後。1週間やそこらで事が動く訳無いだろ」
カナンは不機嫌な様子で話す。挨拶くらいしろよと思っているだけなのだが、若干の敵意を持っている楓には伝わらない。
「じゃあ何処にいるのかを教えてよ。私が直接行くから」
「ふーん。約束を守ったかどうか分からないのに教えれ無いなー。それに聖女さんじゃ無理だな」
「…約束は守ってる。無理ってどういう事?」
「まず何て言って出ていくんだよ。1人で出ていって勇者達の中で不和が生まれる前提で行くなら大した度胸だが、そもそも転移者の地位は低いからな。聖女さん…勇者達も含めて何も知らない子供が大教会から外に出て、騙されたり、盗賊辺りに捕まったら殺されるか良くて性奴隷堕ちだぞー」
カナンは簡単な事実を述べる。しかし楓が信じる様子が無い事に違和感を感じ始めた。
「そんな事ある訳無いじゃない…勇者は世界の希望よ」
「弱いのに?」「_っ!」
「この世界は力有るものが正義になる事が大半だぞー。ところで魔王を倒すって言うけど何処にいるかわかるの?」
「ええ」「ふーん。どこ?」
「教える訳無いじゃない」「じゃあその情報買うよ」
「…お金で喋ると思うの?」
「お金じゃないぞー。これで買う」
ソファーの裏に手を伸ばし、ストレージから出した箱。その箱を開け、1つの包みを楓に渡す。
「開けてみ」「…_っ!」
「数ヶ月は女子全員に行き渡るけど、情報…売るかい?」
「…わかった…でもこれをどこで?」
「あぁ、文献調べて作った。まぁそれは良いとして、どこを攻めるんだ?」
「大森林を抜けた先、魔族の国の王を討つの。そうすれば世界が救われる」
「……はぁ…そうか…(何故今なんだ?信仰が必要なのか、準備が整ったのか、それとも焦っている?天敵が現れたとか?)…また人間は罪を重ねるのか」
「…それってどういう…」ガチャ
「ん?アキ来てたのか。聖女様もお待たせして」
教皇が入って来たので話が終わる。カナンは生理用品の入った箱を楓に渡し、要件を済ませる。
「教皇さん推薦書って書いた?」「おお、あるぞ…っとこれだ。ほれ」
「どうも。お礼にこれどうぞ」
ソファーの裏に手を伸ばし、ストレージからウイスキーの入った箱を取り出し渡す。
「これは?」「あるルートから入手した幻の酒だ(俺が作ったけど)今夜なら暇だから付き合うよ?」
「え?ほんと?良いの?ありがとう!いやー最近皆言うこと聞かなくてなー!……ごほんっ。ありがとう。では10時頃に」
舞い上がるおっさん。ストレス溜まってんなー…と眺める。楓は初めて見る舞い上がる教皇に驚いていた。
「じゃあそれまでダンジョン潜ってるからまたなー」
「「え?」」
バタンと出ていくカナンを見て、聞き間違いかな?と顔を見合わせる教皇と楓。あの凶悪なダンジョンに1人で潜るなんてある訳無いと言い聞かせ、楓は教皇と話を始めた。




