歓迎会2
「くふっ、星体観測」
シャランシャランと絶界内に広がる無数の星々。白と黒の輝きを背に、月読が準備が終わったという笑顔で対峙する三人を見据える。
「紅羽、サティさん。最初から飛ばすわよ」
「分かってる。環境魔法を詠唱破棄なんてブッ飛んでるな」
「最初はサポート回るね」
散開。月読を中心にアイは正面から動かず藍色の魔方陣を展開。右手側に移動した紅羽も赤黒い魔方陣を展開。左手側のサティも赤、青、黄、緑色の魔方陣を重ねる。
アイの身体が絶海に包まれ、藍色のドレスを形成していく。頭に藍色のティアラが装着され、海が内包された魔装が完成した。
「魔装・絶海の女王」
続いて紅羽の身体が赤黒い炎に包まれ、鎧を形成していく。以前よりも黒く刺々しいデザインの全身鎧が完成。
「魔装・黒炎竜騎士」
最後にサティの魔装が完成。大剣とメガネが変化していく。そしてカナンに向かってセクシーポーズ。
「秋ちゃん見ててね」
「…みんなー頑張れよー」
アイは刀を、紅羽は槍を持ち、集中していく。
月読も白と黒の包丁を取り出し、だらんと自然体。
「準備完了かな?じゃあ…行く。流星群」
ドドドド!大量の星が全体に降り注ぐ
サティはスルスルと避けながら移動
「なんてパワーだ、負けてられない!龍砲!」
ドオオ!槍を突き出し龍気を放出
バンバンバン!星を破壊していく
「超位魔法の雨みたいね…絶海・津波」
ゴオオオ!アイが手をかざすと深海の津波が発生
瞬く間に星を呑み込んでいく…そして
「アーーイーー!我は泳げな_ガボガボガボ」「あっ、ごめん紅羽」
紅羽も一緒に流されていった
深海の水が召喚され、水位が上がる。膝の高さまで海水に浸され、月読の脚にギシギシと水圧が掛かる。
「深海上の闘い?面白い。ディヴァイン・セイヴァー」
ブンッ。白い包丁が輝き光が伸びる。純白の剣を形成。
「これで動きが鈍る筈だけど…あの剣半端無い…紅羽は、駄目ね」
遠くの方でプカプカと浮かぶ赤黒い物体を見つけ、「はぁ…」ため息を付く。海の上を流れる様に移動し力を溜め、月読に一閃
キンッ!「断罪」ガギン!「くっ…絶氷撃!」
ピキピキピキ。月読の周囲が凍る
アイは即座に後退。目を閉じ刀を鞘に納め力を溜める。
「……震撃」バリン!月読は氷を砕き進み出した。
「隙だらけ。滅殺_ダンッ!_っ何?_」月読の腕が弾かれ跳ね上がる
右側、遠くの方を見る。身長程の銃を構え、黒いゴーグルをしているサティが銃口を月読に向けていた。
「魔装・狙撃手。攻撃はさせない…形状変化・ガトリング」
銃身が筒状に変化
バラララララ!属性弾が連射される
キンッキンッドスッキンッ!「上手い。連殺」
ガガガガ!弾を弾くが軌道を変え月読に直撃していく
「フル・バレット」ドォォン!銃身のあらゆる場所から弾が発射。
直撃。水柱が高く上がる。
直撃を確認したサティは月読に向かって海の上を駆ける
「形状変化・ミサイルランチャー」
銃身が全長5メートルの筒状に変化
「良いね。巨大彗星」
ゴゴゴ!星が合わさり大きな星に変化。サティの方向に射出
「…ホーミング・ジャックポット__」
ドオオン!全長3メートルのミサイルが発射され「_ぐっ」サティは反動で後ろにブッ飛ぶ
発射されたミサイルは_ギュンッ!_巨大彗星を避け月読に向かう
ゴオオオ!破壊されなかった巨大彗星はサティに直撃
月読はミサイルを避けるが軌道が変わり追尾してくる
「追ってくる…か。奥義…天誅」
上段からの強力な振り下ろし_ギャリギャリ!_「_っ!斬れない」_ドオオオン!
キノコ雲が上がり海水が舞い上がる
月読の半身を吹っ飛ばした
そして即座に再生していく
「_痛い。む?」
そこに力を溜め終わったアイが眼前に出現
「隙あり。極光!」
斬!辛うじて避けた月読の右腕を斬り飛ばし、ディヴァイン・セイヴァーを持った腕が落ちる
「くふっ、アビス・セイヴァー。冥殺乱舞…」
ギュンッ!深淵の剣を持ち_ザザザ!「_うっ…」_アイを斬り刻む
ドサッ。アイが倒れ、月読は辺りを見渡す。
「ん?居ない?_「黒翔天駆…」_上?_「下り獄龍!」ドスッ!
上空から強襲した紅羽の槍が月読の肩を貫いた
「称賛。断罪滅殺」
斬!斬!斬!「ぐわっ!」_紅羽を斬り飛ばし
月読が片手を上空に向ける
ドンッ!直径100メートル。大きな月が出現
再生したアイ、紅羽が月を見て顔を顰めた。
月の光に照らされ銀色のローブを纏い、銀色のヴェールに包まれ、星体観測の力が上がっていく。
「魔装・月光の女神。もっと…楽しもう。半月」
月光の女神が薄く笑う。そして深淵が月の半分を黒く染めていく。
「うわー…なぁアイ。零の時間は使えないのか?」
「無駄ね。月読ちゃんの超攻撃特化じゃ、この絶界内で展開中に魔方陣が壊されて終わりよ。紅羽こそジェットアーム使わないの?」
「使わない」「なんで?」
「だって壊れるのやだもん」
「もう…駄々っ子ね」
「という事でアイ、頼んだ」
「はいはい」
紅羽がアイの左目に戻り、ドンッ!紅羽の魔力を上乗せしたアイの力が跳ね上がる。
「絶氷海・剣」
ザー!刀に絶海を乗せ、半月と同じ位の巨大な氷の剣を形成
「アイ、お待たせ。援護する」
スチャッ。ミサイルランチャーを構え、キィィィン!魔力を溜めていく
「くふふ、やっぱり秋に付いてきて良かった。断罪の月」
ゴゴゴ!大きな半月が墜ちてくる
ギシギシと空間が揺れ、圧倒的質量、圧迫感にアイとサティは胸を締め付けられていた
「…アキはこんなのと闘ったの?…やるしか無いわね!絶氷剣技!海割りの巨剣!」
アイが大質量の氷剣を正面に振り下ろす
衝突。ゴッ!!!月に少しだけめり込んだ刃がピキピキと音を立てて行く
「ぐぅぅ…力が足りない…紅羽!まだ行ける?」
『ぎぎぎ…我も精一杯だ…ぞ…』
「…アイ、紅羽、溜まった…撃つよ。メガクラッシュ・ジャックポット!__」
ドォフッ!大きなミサイルを撃ち込み_「ぐっ_これどうにかならないかなー」_反動で再び後方へ吹っ飛ぶサティ
ドゴオオン!半月へ衝突「称賛」月が砕け、バラバラと残骸が墜ちてくる
「はぁ…はぁ…魔法を1つ防ぐだけでこんな…」
手が震え、膝を付くアイ。飛ばされたサティも直ぐに戻ってきた。
「先輩方、月は…」
ドンッ!再び大きな月が浮かび上がる
「巡る。月蝕」
月が深淵に染まっていく
「…ねぇサティさん。本気…出さないの?願いを叶えた究極のエルフは、力を得るんでしょ?」
「…んー、副作用が後2、3年したら制御出来そうなんだけど…今だと…数分かな」
サティはメガネを触り、考え込む。
「サティさんなら出来るわよ。それに、副作用はアキが解消してくれるわ」
絶界の端に立って勝負の行く末を見ているカナンを見て、「終わったら襲いましょう…」とサティの気持ちを煽る。
「…分かった」サティの意思を確認したアイは、ほとんどの魔力をサティに渡し、トコトコとカナンの元へ向かう。
「悔しいけど、私達は修行不足ね。紅羽」
「そうだな。必ず追い付いてみせる」
紅羽が出てきて、二人でカナンの元へ到着。
「おー、アイ、紅羽。見学か?」
「ええ、私達は修行不足。それに良い機会だもの、サティさんの本気って見てみたいと思わない?」
「あー、感情抑えているから、力も抑え込まれているもんな…でも後が怖いんだけど…」
「そこは…まぁ…頑張りましょ?」
遠い目をするカナンを見て、アイと紅羽がふふっと笑う。
「サティ、貴女の力を魅せて。愛を語ろう」
月読が深淵に染まった月を待機させ、恍惚とした表情でサティを見据える。
「秋ちゃん秋ちゃん秋ちゃん…観ててね。私…頑張るから…」
感情を抑えていたメガネとブレスレットを取り外す
ピキピキ。ピキピキ。抑えていた力が解放される様に、場の空気が一変。静けさの中に笑い声がこだまする。
「ふふっ、ふふふ」
「くふっ、くふふ。行くよサティ。奈落の月」
ゴゴゴゴゴゴ!深淵の月が墜ちる
静寂を壊す大質量の月
サティは口元が弧を描きながら複数の魔方陣を展開し重ねる
魔方陣が赤、青、黄、緑、白、黒、灰色に光り
「始元の剣」
大剣が七色に輝き、奈落の月に向かって駆ける
「グランド・クロス・サウザンド」
ザザンッ!!超光速の剣技
「くふふっ、サティ、最高だ」
ガラガラガラガラ!奈落の月が十字に分割され砕かれる
「え?サティちゃん、あんなに強いの?」
「サティさんブッ飛んでいるわね…何よあの剣」
「ちょっと自信無くすレベルだな…」
「ふふふ」
残骸の中に佇む究極のエルフ
月読を見据え、余裕の表情で笑っている
「…月読!私がイカせてあげる!」
「「「……」」」