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友達

 1ヶ月が経ったが、まだ友達は出来ない。


 初等部は簡単な歴史、国語、魔法の座学、算術、体育、道徳を主に学ぶ。魔道具の専攻は中等部からなので、カナンは退屈な日々を過ごしていた。


「本でも読むかなー」


 暇な時は学校の図書室に居るのが日課。ほとんど生徒はおらず静かで、考え事をするのに最適だからだ。


「今日も誰も居ないなー」


 窓からグラウンドでみんなが遊んでいるのが見える。キャッキャと笑う姿を眺めて、前世を思い出しながら、よく孤児院のチビ達と遊んだなーと思い出を振り返る。


「子供は外で遊んでいるのが似合うな…って俺も子供か。今の子供の遊びとか知らないから遅れてるとか言われそうで怖い」


 メガネを外し、窓を眺めながらボーッとする。


「何もしないってのは贅沢だよなー」

(前世は加速した時間の中でエリクサー飲みながら修行して、本当に1分1秒無駄にしてなかったな)


 ふっと苦笑しながら闘いの中に身を置いていた自分と、今の自分を比べた。


「今世は強くなってどうするんだ?魔王なんて居ない、邪神も居ない…でも強い魔物は居るか…」


 エレメンタルイーターを思い出す。


(人の問題は人が解決すれば良い、妖精や精霊とかは力はあるが戦う能力は低い…まずはリーリア達を守れるくらいは強くならないとな…あんなギリギリの戦いじゃダメだ)


「とりあえず…魔法杖を作ってみるか?」

(休みに魔法杖屋?に行くか…ん?)


 休みの日の計画を練っていると、ふと視線に気づく。ジーッと見られているので、カナンもジーッと見詰める。


(あっ隣のクラスの子だ、確かクラスの男子が可愛い可愛い言ってる子だったかな?)


 カナンが思い出している間、まだこちらをずっと見ているので、カナンも負けじと見詰める。


(今メガネを着けるのはまずいか…そういや普通のメガネ持って無いな…ってなんか用か?)


「なに?」

「…えっ?あ…あの…1年生?」

「そうだけど?」

「いつもここにいるの?」

「そうだよ、人居ないからね」

「そうなんだ、私もよく来るんだ、人居ないから」


 そう言って笑っているが、カナンはここでこの少女を見るのは初めてだった。首を傾げながら席を立つ。


「そうか、1人が良いなら出てくぞ」


 少女との接し方がよく分からないカナンは本を片付ける。


「まってまって!違うの!」

「……」

「あのね…近くで本読んで良い?」

「いいよ」


 本読みたいだけか、と再び席に座り。少女も近くに座り、二人で本を読んだ。


 ペラ ペラ チラ ペラ

 ペラ チラ ペラ ペラ


(なんすか)


「……俺はカナンだ(名前言って無かったな)」

「私、エリ!宜しくね!」


 元気良いなーと思わせる程に急に大きな声で喋り、ニコッと笑うエリ。


 ペラ ペラ ペラ チラ

 ペラ チラ ペラ ペラ

(……)


「ねえエリ」

「なっ、なにかな?」

「どうしたの?」

「…あの、お友達になって欲しいなって」

「ん?いいよ?」

「ほんと?ありがと!」


 嬉しそうにニコニコ笑うエリを見て、

(嬉しそうだな、俺と一緒でぼっちだったのか?)

 ひねくれた感想を漏らしそうになる。


 しばらく本を読むが夕方の少し手前の時刻になっているのに気づく。

(結構時間経ったな)


「エリ、そろそろ帰るね」

「あ、うん、私も帰るかな」


 本を片付け、一緒に図書室を出た。そして直ぐに学校を出る。


「家は中央区?」

「ううん、西区だよ」

「ふーん、遠くないか?」

「学校用馬車で通ってるから気にならないよ、カナンは何区?」

「東区だな、俺は歩きで来てるよ」

(えっ?まじ?学校用馬車なんてあんの?誰も教えてくれなかったぞ…あ、友達居ないからか)


「反対側だねー」

「そうだなー。でも西区にはよく行くよ」

「へー何しに?」

「西区の図書館に行ってる」

「ほんと!私も図書館によく居るよ!でもカナンを見たこと無い……(こんなに格好いいなら気付く筈なのに)」

「ん?なんて?」

「っ!なんでもないよ!」

「じゃあ見かけたら声かけるな」

「うん!お願いね!図書館にはお姉ちゃんが働いているからカナンの事知ってるか聞いてみよっかなー」


 カナンは立ち止まった。何か聞き捨てならない事を聞いた気がして気分がソワソワしだす。


「ん?カナン?どうしたの?」


(お姉ちゃん…だと?)


「エ…エリ…お姉ちゃんってリアナさん?」


「そうだよ?」

(確かに似ている!キリッとした目!おー似てるなー__じゃない!だめだ!エリと一緒に居たら微笑ましい目で見られてしまう!)


「そ、そうか。リアナさんって美人だよなー」

(どうする?行かないを選択するとおねーさんに会えない!)


「……む…あれ?なんで美人ってわかるの?お姉ちゃん普段は認識阻害のメガネしてるよ?」

(えっ?あ!一回顔が気になって解析かけてから見えるようになったんだっけ!)

「たまたま効果が薄れた時に見たんじゃないか?」

「ふーん、買い換えたら?って言っとこ」

(あぶねえ…いや、あぶねえのはこれからだ!下手したら俺の幸せおねーさん計画が一瞬にして崩れる!)


「停留所ここだから」

「ああ、また明日」

「じゃ」「ばいばい」


 そしてカナンは帰り道、歩きながら考える。その表情は険しく、負のオーラが漂い出している様だ。


「どう考えてもまずい…とりあえず落ち着く為に明日考えよう…寝るか」









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