表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
165/285

お仕事始めます

「おはようカナン」

「おう、おはようモリー」


 朝起きたら全身筋肉痛に陥り、ヨロヨロと学校へ行く。そしていつも通りだらだらと過ごしていた。



「そういえば大教会行ってきたぞ」

「へぇー、どうだった?勇者居た?」


「結構居たぞ、40人くらい」

「え?そんなに居たの?教会の人は大変そうだね」


「そうだな。因みに週末は大教会で働く事にしたよ。料理人見習いって形で」

「凄いね。まぁ、カナンの事だから何か面白い物でも見つけたんでしょ?。面白い報告よろしく」



 相変わらず何でも出来るねー、というモリー。そこには嫉妬は無く、誇らしい雰囲気で接していた。カナンは、俺が女神の敵だって分かっても友達で居てくれるかな?と不安と期待が入り交じる。



「了解。なんか全員転移者だったぞ。多分女神が集団で召喚したみたい」

「…それってさ、僕が聞いて良い事なの?」


「いずれ分かるから良いんじゃね?後は追々かな」


「はははっ、期待してるよ。ところでカナンと勇者、どっちが強い?」


「あー分かってると思うけど…俺1人対勇者全員だと、俺の圧勝だな。殺して良いなら10秒もいらないし」

「あー…やっぱり?いっそのことカナンが魔王倒せば良いんじゃない?」

「ははっ、俺は魔王に味方するタイプなの知っているだろ?」




 平日は休まず学校へ行き、夜は願い魔法の研究や通信をしていた。そして週末になり、大教会へ行く日になった。日が昇る前に出発する。



「いってきまーす」

「気を付けてねー」



 母に挨拶をして、王都を出る。ひんやりした空気が肌をピリピリと刺激し、遥か向こうに太陽が昇る前の薄明かりが見える。防寒の魔法を施し、飛ぶスピードを上げていく。



「魔法進化は使える様になったから、何とか週末に間に合ったな…願い魔法は難し過ぎる」



 願い魔法は特殊魔法。理論と星属性があれば出来る様な簡単な物では無く、想いや願いという概念を1から構築しなければならないので、高度な感覚が必要。


 漠然としている概念なので、理論派のカナンは苦労している様だ。



「でもこれで、霊山のジャッジメントとも渡り合えるかな?挨拶が致死ダメージだから困る…」



 山を越え、森を越える。やがて霊山と大教会が見えてきた。朝日が顔を出す頃に到着。大教会近くの路地裏に着地した。



「早く着きすぎたかな?まあ良いや、教会行こ」



 広場には巡礼者達が教会に向かって祈りを捧げている。教会の向こう側は東になっており、霊山から出てくる太陽を神聖視している様だ。


 それを眺めながら教会への階段を登っていく。巡礼者も登っているが、朝の時間に礼拝堂に入れるのは位が上の巡礼者、力のある商人や権力者が主だ。


 礼拝堂に行く前に受付を発見。



「すみません。試験で合格した者なのですが、担当の方はいらっしゃいますか?」


「はい、ではカードの提示を…ありがとうございます。では調理系なので、この地図の…ここですね。部屋に入ってバッカスという者を訪ねて下さい」


「ありがとうございます(酒好きそうな名前だな)」



 地図を貰い、礼拝堂の裏手へ回り、居住区の方へ。居住区は広い。大教会内では千人以上が働いているので、背の低い団地の様な作りで、中心に大きな調理施設がある。その施設が目的地であり、働く場所になる。



「へえー大きいな。ここの事務所だったな。入ってみよう」



 調理施設は体育館3つ分程の大きさ。調理施設の中へ入る。入って真っ直ぐ行くと食堂。右が調理エリア。左が事務所と書かれた案内を読み、左の事務所へノックをして入った。



「すみませーん」「はーい」

「試験に合格した者なのですが、バッカスさんいらっしゃいますか?」

「ちょっと待ってねー。バッカスさーん」


 事務所の奥から眠そうに欠伸をする男がやってきた。線の細い40代のおじさん。


「はいよー、合格の人だなー。書類書類っと、あった。カナンだな。えーっと、週一勤務って事だけど週末のどっちかに来て貰えれば良いよ。15歳未満の見習いだから9時から16時で、基本は雑用。食堂でおかずを渡す役とか、食器洗い、食材の下処理とかだなー」


「了解です。勤務は来週からですか?」

「あー人手が足りなくてな。今日出来る?「はい」おっ、ありがとう。じゃあ更衣室は入口の右に入って少し真っ直ぐ行くと男用の更衣室があるから、これに着替えてくれ。その後は…とりあえず食器洗いかな」



 事務所で白い上下の服、エプロン、帽子、見習いバッジを受けとり、更衣室へ。



「なんか食品工場みたいだな…給食センターかな?」



 誰も聞いていない一人言を呟きながら、着替える。その後は食器を洗うエリアへ向かった。



「すみませーん。カナンです。よろしくお願いしまーす」

「おっ!補充が来た!カナン君だね!今の内この調理器具洗っといて!今から朝食だから忙しくなるよー!」



 担当の場所に案内され、軽く説明を受けて流し台で洗いを開始。ジャバジャバと洗って行くが、真面目に働く気の無いカナンはちょいちょい魔法を使って洗って行く。



「ヨシュアはどこにいるんだろ?住み込みって言ってたけど」



 次々と朝食の食器が上がってくる。配膳係がワゴンで絶え間なく持ってくる様は戦場だ。10人程がせっせか洗っている。



「うーん。仕事中は抜けれないなー。勇者との接点ってあるのか?」


「よう新入り。えー…カナンか、カナンが来てから大分楽になったよ。洗うの早いな!」


「そりゃどうも。…ロブさん。あの…面倒になってきたんで魔法使って良いです?」



 バッジに名前が書いてあるので、先ずはそこを見る。割りとベテランっぽい人に思いを告げてみた。



「え?魔法使えるの?有難い!よろしく!」

「はいよー。エリアクリーン」



 シュッと洗い場がカナンの魔力で包まれ、数秒でピカピカに。



「はい。食器出したら休憩しましょう」

「「「へ?」」」


「あれ?」


 驚くのも無理は無い。この世界の洗浄魔法は水魔法の強い水流でジャバジャバやるものだから。



「…救世主だ」「これで馬鹿にしてきた奴らをヒィヒィ言わせられる」「すげえ…」

「あっ…そういえばクリーンってチート魔法だった…」



 洗い場の面々にとって、週末限定の救世主が現れた瞬間だった。

クリーン~赤、青、黄、緑色複合中位魔法。主人公が不衛生な環境が嫌で真っ先に取り掛かったオリジナル魔法。上位にエリアクリーン。超位にフル・クリーンがある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ