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願い星3

 破滅の月歌が墜ち、カナンの身体は砕けては再生し


 また砕けては再生する


 意識が飛び、覚醒し、また意識が飛ぶ


 どれだけの死を体験したのだろう


 痛みを通り越して麻痺に近い感覚で倒れ伏す身体は動かない




「くふっ、流石だ」


(痛すぎて喋る気力もねえよ…入り口は遠い…帰るのは無理そうだな)


 カナンが考えている間に銀皇が白色の魔方陣を出現させていた


(追撃ちですか…あ…嫌な予感)


「パーフェクト・ヒール」「_ちょっ!」


 銀皇の身体が白く輝き、傷が治っていく。ボロボロだった両手と、ローブが元通りに治った。


(ボスは回復しちゃ駄目でしょうが!)


 カナンはふらつく身体を奮い起たせて起き上がる。痛みの余韻が残る様に、ジンジンと身体が疼く。


 銀皇の両手に白、黒の魔力が溢れているのを眺めながら、ストレージから出した白色精霊石を飲み込んだ。



「どう…しましょうかねー」


「ディヴァイン・セイヴァー」


 ブオン!銀皇は先程より短い、5メートルの純白の剣を形成し、右手に握る。


「次は斬るのね…仕方ない」


 カナンも両手にダイヤモンドの刺身包丁を持つ。正直あの剣技を見た後では自信は無いが、打開策を得る為に銀皇に乗る事にした。



「アビス・セイヴァー」「うひょ!何考えてんすか!?」


 ブオン!銀皇は笑顔を浮かべ、純白の剣とは対極的な、深い闇を形にした様な剣を左手に持つ。


 白と黒の双子の様な剣を持つ銀皇は、光と闇を司る神の様に神々しく、それだけで見る者の心を奪い、圧倒する。




「白色精霊石はまだある…出来れば斬られたく無いけど…_っが!」


 無理だろうな…そう言葉にする前に、両足を斬られ胸を貫かれていた


 再び倒れ、再生し、魔方陣を多数展開しながらフラフラと立ち上がる


「痛え…死なないからって気抜いてたな…ポテンシャル・アップ!」


 溟海に教えて貰った星属性強化魔法を使用し、潜在能力を底上げする。




「これで何とか…__ギンッ!__なった!」


 銀皇の斬撃を辛うじて弾く


 ふわふわと浮いた手は反応がし辛く


 ザシュッ!「ぐっ…」何合か1度は斬撃を受けてしまう




 ギンッギンッ!「_ジリ貧だなー…千斬り!」


 ガガガガ!「楽しい。連断」ガガガガ!「ぐぐぐ!壱式!三枚下ろし!」


 ガッ!「む?」カナンの奥義、壱式で銀皇の両手を跳ね上げ


「弐式!一口大に斬る!」ギャリギャリ!

 弐式で両手を少しずつ削る


「参式!平作り!」参式でローブを斬り刻み

「裁断」「パリイ!」キンッ!「くふっ、奥義…」


「零式!舟盛り!」「…天誅」


 ガキィィン!ぶつかり合う刃と刃


 ギリギリと一瞬の鍔迫り合い



「貰ったぁぁ!ディメンション・カットぉぉ!」


 ギャリギャリ!銀皇の中心目掛けて空間を斬っていく


 ギュンッ!素早く銀皇が後ろに退避


 剣を投げつけ斬撃を止めるが、両手の剣は真っ二つに


「アホー!剣だけかい!」「賞揚、だが…足りぬよ…鬼哭」


 銀皇が両手を拝むように合わせ、突き出す

「__ごふっ!」カナンの腹を貫いた



 貫かれながらも銀皇を見据えるカナンの目に、諦めの文字は無い


「ぐっ…銀皇…近くで見て分かったが…美人さんだな」

「くふっ、ありがとう。君も…君は」

「…俺の名前は秋だよ」

「ふふっ、秋。君も素敵だよ」


 笑い合う銀皇とカナン。会話をする余裕など無いが、この瞬間毎に移り行く状況に楽しさを覚えていた。


 銀皇が両手を引き、少し下がりながらカナンを見据えている



「流石は超越種か、潜在能力が高い…」


「秋、次は何をしてくれる?」


「ははっ、何言ってんだ。正直手は尽くしているんだよ。ったく、そんなに強くなってどうすんだよ」


「勿論楽しむ為。もっと強くなってからまた来ても良いんだよ?」



 入り口を指差す銀皇。逃げても良い。そう言う様に微笑みを向けた。



「んな無礼な事出来るか!俺は超えるんだよ!お前を!そして!…そして…ん?」


「くふっ、答えは出たかな?」


「……ははっ、そうか…ありがとう銀皇。本当に、お前は俺に取っても願いの星だったのか」



 カナンは何か探し物を見付けた様に笑い、右手を上げ魔法を発動する。



「称賛。ここまで登っておいで。星体観測」



 微笑む銀皇の呟きはカナンの魔力の奔流に書き消され、銀皇も魔力を解放し、星を形成していく。



「解析しておいて良かった!マジック・リプロダクション!」


 溟海に貰った複製魔法。魔法を再現する魔法で解析していた魔法を再現していく。


「ぐっ…難しい…立体に…ならない」


 一度見ただけの魔法を再現するのは困難を極める。特殊な魔法なら尚更だ。


 銀皇の魔力を見ながら、焦る表情で魔方陣を展開していく。



「ぐ…(早くしないと銀皇の魔法が完成しちまう)…立体魔方陣は諦めるしかねえ…でもこれで充分か」



 ブオン!銀色の魔方陣を展開。少し歪な魔方陣が回転していた。完成した魔方陣を見て、苦笑しながら銀皇を見据える。



「ははっ、お粗末な魔方陣ですまねえな」

「…初めてにしては上手」



 進化魔法。完全な再現が出来ず、悔しさが込み上げてくるが、更なる高みの第一歩。嬉しさの方が勝っていた。



「規模は小さくなっちまったが、この魔法は…好きな魔法を1つだけ進化出来るみたいだ」


「上出来。断罪の月」


 ゴゴゴゴ!白と黒に染まった超質量の月が墜ちてくる。それを見たカナンは進化の魔法を発動。


 望んだ魔法が進化し、懐かしい感覚にカナンの顔に笑顔が溢れた。



 ゴゴゴゴ!月がカナンに墜ち、接触する。


 カナンは上に手を伸ばし、月に触れると


 フッと月が消えた。



「…何?消えた?」

「…ははっ、やっと…使えた…藤島秋の昇華魔法!」



 上に伸ばした手を握り、ガッツポーズを。そして噛み締める様に目を閉じる。ようやく手にした最強へと至る魔法。



「流星」ビュン!星が墜ちる


 しかしカナンに衝突する前に消えた



「なあ銀皇。俺、前世では結構強かったんだ。でも転生してから熟練度がリセットされて、ゼロからのスタートになっちまってな…一番使っていた魔法が劣化して、かなりショックだったよ」

「転生?彗星」



 ドオオ!大きな星が落下するがカナンの前に来ると消えていく



「ああ、それに前世は転移者でな、周りから役立たずって言われてたよ」

「こんなに強いのに?月蝕」

「皆この魔法の価値を勘違いしていたんだ。それに、前世の俺は魔力が低かった…上位魔法で息切れするくらいに」



 巨大な月が出現し、黒く染まっていく



「勘違い?奈落の月」


「ははっ、転移者って不思議でな。最初に願い、求めた力にボーナスが付くんだ。竜の勇者に憧れた少年は聖なる竜の力を得た様に…この世界の理不尽に絶望し、全てを潰してしまいたいと涙を流した少女が重力の力を得た様に…そして、地球に帰りたいと願い、命を救ってくれた子供達に不衛生な環境でも、お腹一杯ご飯を食べさせてあげたいと願った男は…」



 ゴゴゴゴ!深淵に染まった巨大な月が墜ちてくる


 カナンは両手を天に向ける


 やはりフッっと月が消えてしまう



「時空の力を得た。空間属性のストレージ…藤島秋が最初に手にした魔法。そして…一番使用した魔法。この魔法にボーナスが付いた」


「収納の魔法…魔法を収納したというのか」


「ああ、ただのストレージは調度品や食料品等限定された、一定の大きさの物までしか入らない。だが俺の、藤島秋のストレージは違う。人や魔物以外ならほぼ全て収納出来る」


「くふっ、面白い。ならばそれを超える魔法を使うまで」



 ドンッ!巨大な月に漆黒の魔方陣が刻まれ、ゆっくりと回転していく


 カナンも立体魔方陣を展開していく



「収納した魔法はストレージ内で俺の魔力に変換し、膨大な魔力プールになる。だから相手が強ければ強い程、俺も強力な魔法が使えるんだ!」



 巨大な月が妖しく輝き、銀皇の魔法が完成した



「破滅の月歌」



 深淵の月が墜ちる


 空間が軋む程の超魔力の塊


 破滅を与える超質量



「無駄だよ銀皇。秋のストレージは、認識した魔法は全て収納出来る。容量は無限だ。パーフェクション・ストレージ」



 両手を向けると、フッと破滅の月歌が収納される。そして即座に魔力を変換。立体魔方陣に、銀皇の魔法の魔力を全て乗せた。


 カナンの立体魔方陣が虹色に輝き、更に銀色の魔力が溢れ出す



「驚愕。人の領域では無いな」


「そうだな。これが俺の…藤島秋の闘い方。色んな強敵に卑怯と言われながらも絶対に曲げなかった戦闘スタイル。まぁ…混沌(カオス)に貯めてた魔力ほとんど使ったせいで魔力が無くて、最期はヤバい薬に手を出して自爆しちまったが…」



 ははっ、と邪神と闘った事を思い出して苦笑する


 立体魔方陣から光が溢れる。魔力が足りず構想のみだった魔法が膨大な魔力により完成した。



「ありがとな、銀皇。魔崩壊の星」



 ギュンッ!10メートル程の銀色の魔力を纏った七色に輝く星が出現


 触れる物全てを分子分解していく


 魔力、空気、音さえも分解しながら銀皇へ向かっていく



「くふふ。最高」



 銀皇が受け入れる様に衝突し、サラサラと身体が崩壊


 抵抗があるのか少しずつ崩壊していく


 カナンは銀皇の元へ向かった



「また…来るの…だろう?」

「そうだな。また遊びに来るよ」


「楽しみに…待っているよ…秋」

「ああ、銀皇……月読って呼んで良いか?」

「ツク…ヨミ…?名か…?…くふふ…あり…がとう」



 お礼を言い、微笑みを向けていた銀皇の身体は完全に崩れ去った。辺りを見渡す。闘いの跡が色濃く残るクレーターの数々。離れた場所には銀皇が外した仮面が落ちていた。それを拾い、しまうと遠くに見える扉へ向かう。



「早く扉に行かないと…無理しすぎた反動が怖い…」


 急いで扉へ向かう。今いる部屋で気を失うと、1日経って願い星が復活する可能性がある為だ。


 やがて扉に到着し、中に入る。中心に銀色の宝箱がある部屋に到着し、全ての魔法を解除。そして倒れ込む様に崩れ落ち、深い眠りに入った。

アビス・セイヴァー~深淵の力を纏った魔法剣。ディヴァイン・セイヴァーと対極にあり、邪神ちゃんがよく使っていた神剣。



マジック・リプロダクション~複製魔法。魔法を再現する魔法。ある程度理論が分からないと完全には再現出来ない。再現する魔法によって使う属性が違う。



パーフェクション・ストレージ~空間属性魔法。完全なる収納。ほとんど何でも収納出来る。魔法を収納した場合、内部で主人公の魔力に変換出来る。容量無限なのでその気になればこの星も収納出来るかも。



魔崩壊の星~赤、青、黄、緑、白、黒、灰、銀色複合神位魔法。主人公オリジナルの崩壊魔法を改良し、星属性で強化した魔法。魔力消費が膨大なので構想止まりだったが、今回実現した必殺魔法。




因みに願い星ちゃんの進化先は複数あります。ポ○モンで言うイ○ブイみたいな感じですかね。

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