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溟海の家へ

 週末になり、カナンはリビングでボーッとしながらお茶をすすり、向かいに座るカタリナはモキュモキュと朝食の白米を食べていた。



「寒い日は熱いお茶が旨いなぁ。今日はお弁当を持って溟海さん家に行こうかな」


「兄ちゃん。哀愁漂うおじいちゃんみたいだよ。リナも溟海さんの所に行きたかったけど、今日は店番するから行けないかな…」


「親孝行をするリナは偉いなー」

「兄ちゃんもたまには店番しようよ」

「兄ちゃんやる事沢山あってな、中々店番出来ないんだよ…茜ちゃんがその分頑張るから大丈夫」


「出た、他力本願。まぁ忙しいなら良いんだけど。一応茜さんに声掛けてね。なんか用事あるみたい」


「用事?分かった。後で店に行くよ」



 カタリナは先に家を出て店番に向かった。カナンはもう一杯と言いながら再びお茶をすする。



「梅昆布茶飲みたいな…梅干しって誰か作ってないかなー。海の向こうのジーパンに行ったら何かしらありそうだけど…」



 ずずずと緑茶をすする。南の地方に行った時、茶の木っぽいものを見付け作成している。



「さて、店行くか」



 準備が終わり、店に行く。寒かったが、直ぐそこなので1分で到着。



「いらっ…_あっ、カナン君」

「やぁ茜ちゃん。用事あるって聞いたけど」


「用事というか、相談なんだけど…」

「ん?珍しいな。どうした?」

「ペットを飼いたいの…」



 現在、茜はカナンが改装した店から徒歩2分の、庭付きの家に住んでいる。オードはよく行っているが、1人の時は寂しいとの事。



「良いぞ。何飼いたいの?」

「ワンちゃんが良い…」


「犬か…王都でペットを飼うなら申請がいるから覚えといて。あと犬は数が少ないんだよな、狼は多いんたけど…従魔屋さんに行けばペットコーナーあるから今度見てきな」


「分かった!ありがとう!」



 用事はこれだけだそうで店を出る。視界の隅にスキンヘッドのムキムキな物体が見えたが、気のせいだと思い路地裏へ。



「行くか…ん?おっちゃん久しぶりだな」

「カナン、久しぶりだな。ちょっとお前の家の店が可愛い過ぎて入れなかったから、カナンが来るの待っていたんだよ」


「そうか、最近ここらで聞く不審者情報はおっちゃんだったか、早く両手を出してくれ。衛兵の所に行こう」


「ちょっ、勘弁してくれ!仕方なかったんだ!」



 最近聞くゴリゴリマッチョの男が話し掛けて来るという情報を思い出す。比較的若い女子の多いこの周辺では、恐怖の対象でしか無い。



「冗談はさておきどうしたの?」

「冗談に聞こえねえよ…大教会で勇者が現れるのを知っているな?その指南役を募集しているみたいなんだよ。ちょっと名を上げるのに行ってみようかなって」


「ふーん、行ってらっしゃい」

「興味無い?カナンだったら良い指南役になれるんじゃないか?」


「一緒に行かないか?って事ね。俺学生だから無理。それに勇者を鍛えるなんて虫唾が走る。…あっ、おっちゃん俺の事喋らないでねー」


「やっぱりそうだよなー。カナンの事は喋らないよ。喋ったら地獄を見そうだし」


「そうだね。大教会行くなら昼過ぎに送って行こうか?色々様子見たいし。この国に噂が流れた時点であっちではもう勇者居そうだし」

「おっ!頼むわ!」


 ゴイームと店の近くで昼過ぎに待ち合わせをし、カナンはそのまま溟海の家へと飛び立つ。



「勇者が現れるって事は、女神がどっかから召喚でもするのかねぇ」



 直ぐに山の湖の前に着き、水の結界を抜けて、湖に到着。溟海が言うには、水の結界は天異界からの監視を妨害する結界らしい。

 家の前に行くとふよふよと矢印が出迎えてくれた。



「やぁ矢印。…ここで待っててくれたのか?ありがとな。そういえば白色の精霊って付いてきてたみたいだけど、どこに行ったの?…えっ?合体したの?…確かに魔力上がってるな」


『おっ、アキだー!紅羽ー!アキが来たよー!』


 霊山で会った白色精霊の所在がわかり安心するが、謎生命体の精霊の中身ってどうなっているのだろう…という思いが強くなってくる。思考の海に潜ろうという時に、家から真っ赤なジャージを着た紅羽が出てきた。



「やぁ紅羽」

「アキ、いらっしゃい。アイは溟海さんと組手しているから、もう少ししたら来ると思うぞ」


「はいよ。昼ご飯食べたら用事あるから俺に合わせなくても良いぞ」

「どこか行くのか?」

「ああ、皆集まったら話すよ」



 紅羽、リーリアと並んで家の縁に座り、お茶をすすりながら、湖の上で闘っているアイと溟海を眺める。



「紅羽、ジェットアームの調子どう?」

「ある程度使いこなせているかな。でも気を抜くと飛んでっちゃうから難しい」


「くっくっくっ、飛んだは良いけど降りれなくなって泣きそうだったな」

「う…思い出さないで…」

『あの時の紅羽可愛いかったよ!』



 魔導兵03が使っていたジェット機構の武器は改造して紅羽が使っているが、機能が多すぎて難しい様だ。因みに03はまだ大事にストレージの中にしまってある。起動して色々送信されたら困る為だ。


 昼前に組手が終わり、二人がこちらに向かってきた。



「やぁ秋、いらっしゃい」「おはようアキ」


「よっ、お邪魔してます。お茶飲む?」



 二人にもお茶を渡し、皆で縁に座ってカナンが作ったお弁当を食べる。アイは青いジャージ、溟海は紺色の甚平を着ている。



「食べたら大教会に行ってくるよ」


「あら、何かあるの?」

「ああ、神託が降りて勇者が現れるらしい。ダンジョンコアの様子も気になるし、ちょっと見てくるよ」


「気を付けてね。後で見たいから映像に記録しておいて」

「はいよ。まあ年々勇者は弱くなってるって聞くし、女神は大した力は与えられないと思うけどな」


「秋ちゃん……おはよう。こんにちはかな?」



 雑談しているとサティが湖の家にやってきた。いつも通りの無表情でエロい事を言おうとするが、皆が居たので自重した様だ。



「サティちゃん。ご飯食べたら大教会へ行って、勇者見学してくるね」

「…行ってらっしゃい。夜にまた会いに行くね」


「ん?どうしたの?」

「指南役の勧誘が凄くて…暫くここでゆっくりする」



 いつもなら付いてくると言い張るサティだが、大教会には行きたくないらしい。毎日の様に勇者の指南役をお願いされ、ウザくなって湖の家に逃げ込んだ。


 門下生には、教会がウザいから落ち着いたら戻る…と書き置きをしたせいで、現在門下生と教会関係者がギクシャクしている。



「指南役になって、最後の最後で裏切りとか面白そうだけど、サティちゃんは柄じゃないからなー。学生じゃなかったらその役やってたかも…」

「アキは得意そうだな。勇者を嘲笑うの」


「そういえばダンジョンコアに変な魔力が入ったかもしれないから、直接見に行けるかしら?」

「変な魔力?あー、分かった」




 お弁当を食べ終わり、昼過ぎになったので皆と別れ、ゴイームを迎える為に店へ行く。


「おっちゃん、行くぞ」

「おう、頼んだ!」

「スリープ」「_えっ!?カナ……んごごご!」


「イビキすげえな…サイレント」


 ゴイームは起きた状態で飛ぶとうるさそうなので、寝かせてから運ぶ。



「どんな奴が勇者だろ…楽しみだねぇ」



 黒い笑顔を浮かべながら大教会へ向かった。

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