迷子のキリエちゃん
某日某所
ゴオオオオ!10メートルにも及ぶ口を蠢かせながら迫り来る巨大な魔物。蟲王種、グラトニー・サンドワーム。
照り付ける太陽に反射する銀色の髪を靡かせる女性、キリエが蟲王を仁王立ちで待ち構えていた。
「くふふ、興奮しちゃって。可愛い子だねぇ_深淵の瞳・縛」
ピタリ。キリエの瞳が妖しく光り、蟲王が急停止した。抵抗しようとしているのか、小刻みに震えている。
「くふ、やっぱり使えた。夢の中で使っていた力。…やっぱり夢じゃ無かったんだね。…会いに行くからね。
アキ…アキ君…アキアキ…んー…何て呼べば良いのかな?私を救ってくれたから…アキ様…くふっ、まぁ良いや」
「ウゴ、ウゴオアア!」
「あれ?動き出しちゃった。まだ深淵が聖女の身体に馴染んで無いのかな…」
蟲王が再び動き出す。恐怖を植えつけられた蟲王。バシンバシンと身体を地面に叩き付け、プライドを傷付けられた怒りを全身で表現させていた。
「どうしようかなぁ…水が弱点だっけ?でも使えないしなぁ」
悩みながらも白色の魔方陣を展開した
蟲王が仰け反り、喉の部分が膨らむ
「効くかな?ホーリーレイ」
ガアアアア!蟲王が酸の球体を吐き出し、キュィイイン!遅れて光の柱が撃ち込まれ
ジュゥゥゥ!__
酸の球体が光の柱に蒸発され、辺りに酸っぱい臭いが立ち込め、酸の煙が充満した
「うえっ、臭いなぁ。これじゃ食べられないじゃない。仕方ない…」
再びブオンと魔方陣を展開。銀色で縁を描かれ、内部は黒と白の混ざり合わない陰陽太極図の様な魔方陣
「ゴオオオオ!」
蟲王が雄叫びを上げる。
砂が舞い上がり砂嵐が巻き起こった
「ん?環境魔法かな?くふっ、考える事は一緒だねぇ。環境魔法_星体観測」
キラキラと煌めく星々が上空、周囲に出現。
白と黒の光の球体が周囲に散りばめられた様にも見える。
「ガアアアア!」
視界の悪い砂嵐の中、蟲王は巨大な口を開けてキリエを呑み込もうと迫る。
「彗星」
ドンッ!__
「グギャ!」
星の1つが巨大化。
眼前に迫った蟲王を押し潰す。
「流星」
ドンッ!__
「ゴォァ!」
星が光速で撃ち込まれ。
「流星の雨」
ドドドド!__
星々が光速で蟲王を貫く。
「星の魔法は衰え無しか、良かった。魔装使えるかな?__月光」
1つの星から50メートルを超える仮初の月を作り出し、月の光を浴びる。
足元まで届く月のヴェールを身に纏った姿は…
「月光の女神。くふっ、奴らは今頃観てるかな?。キリエちゃんは戻って来たよー!これでとどめかな?__月蝕」
仮初の月が深淵の闇を纏い黒く染まる。
痛みでもがいている蟲王を見据え、口元が弧を描いた。
「奈落の月」
ドッッ! __
黒く染まった月が蟲王目掛けて墜落する。
ドドドド!__
奈落の月は蟲王を呑み込み、下へ下へ奈落を目指す様に墜ちていった。
「……ふぅ」
魔法を放ち、少し一息入れて魔装を解除したキリエ。
スタスタと墜落地点に足を運び、底が見えない程の大穴に手を向け魔力を調べる
「倒したかな?…魔力は感じないから倒したね。あっ…調子こいちゃったな。魔石残っているかな?」
砂が崩れて穴が埋まっていく様を見詰め、少し焦ったキリエはホイッと大穴に向かって飛び降りた。
「結構深いなぁ、砂だから掘れたのかな。まだかなー…まだかなー…あっ着いた」
真っ暗な大穴の底に上手く着地。
流石私と自画自賛し、光の魔法で照らしながら蟲王の死体を探す。
「おっ、あったあった。ボロボロだなぁ。頭吹っ飛んでるや。魔石魔石…真ん中にあった」
良かった良かったと身体を綺麗に裂き、魔石を取り出す。
頭程もある大きな黄色の魔石。
「アキも身体に魔石を埋め込んでいたっぽいから、これでお揃いかな?いや、まだ足りないか。フュージョン」
黄色の魔石がキリエの身体の中に吸い込まれる。若干の抵抗があったが無事取り込めた様だ。
「まずは1つ。アキに会う頃には全ての色を取り込めるかな?今のままじゃ弱すぎるから…アキ様に笑われちゃう…こんな芋虫アキ様なら1発だし。もっと強くならなきゃなぁ」
大穴から抜け出し、太陽の光を浴びて、んーっと伸びをする。
「そうだ!家出した混沌ちゃんはこの世界に来たんだっけ?魔力は感じないけど、倒されちゃった?でも魂くらいならあるかも!探して取り込めば強くなれる筈!」
両手を握り、よし!と気合いを入れて、ふと思い出す。
「サンドワームって巣にお宝貯める習性あるよね?蟲王だからお宝沢山あるかも!探そう探そう」
無事グラトニー・サンドワームの巣に辿り着いたキリエ。お宝の中にベッドを発見してしまい、そのまま眠りに付く事に。
「これって排泄された物だから…全部うんこなんだよね…まぁいいか」
星天魔法~白、黒、星属性複合属性。星属性で龍王をボコボコにする為に生み出したキリエちゃんオリジナル属性。
星体観測~星天の環境魔法。生み出した星を自在に操る。結構なチート魔法。