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隠し部屋へ

 深夜に目を覚まし、起き上がる。黒いジャージを着て、あくびを噛み殺しながら伸びをした。


「ん?カナン。何処か行くのか?」

「オード兄さん起きてたんだ。ちょっと王城に行ってくるよ」

「はははっ、夜の王城か、捕まるなよー」

「大丈夫。自信あるから」



 オードは魔力操作の訓練に夢中になり起きていた様だ。オードと少し話をして窓から飛び立つ。気配を消して夜の王都を上から眺めた。


「冒険者とかはまだ飲んでんのかー。そういやゴイームのおっちゃん何してるんだろ?…まあいっか」


 明かりがポツポツと灯り、飲み屋ではまだ活気に溢れ、冒険者が歌う姿が見て取れる。


 貴族街を抜け、王城に到着。慣れた動きで王女の部屋のベランダに降り立った。


 コンコン。ノックをして王女に来た事を伝える。直ぐに窓が開き王女が出迎えた。

 アイが作ったピンクのジャージを着ているので、物凄い違和感がある。



「やぁ王女。似合ってるな」

「えへへ、ありがとう。いらっしゃい。カナン君」


「早速行こっか。玉座の間にある王の椅子にスイッチがあって、黒色魔力を乗せて押したら、宝物庫の扉の隣に小さなスイッチが出るから、それも黒色魔力を乗せて押せば扉が出来るらしいぞ」


「へえ、知らなかった。何処で知ったの?」

「ちょっと伝があってな」


 王女にはグリーダを討った事は伝えてあるが、記憶を読み取った等詳しい事は言っていない。



「あっ、王女に魔王の呪いを掛けたの、グリーダだったよ。

 魂を空にして身体を乗っ取ろうとしたみたいだな。だからもう安心して良いぞ」

「…そうだったんだ。ありがとう。本当に…怖かった…また命を狙われるんじゃないかって…」



 カナンは安堵の表情で泣きそうな王女を慰めるが、黒とピンクのジャージ同士だから家感が強くてムードが薄いなと苦笑する。


 王女が落ち着き、こそこそと出発。扉から出ずに王女を抱えてベランダから出る。このまま拐って下さいの言葉はスルーした。


 ぐるっと回り、1つ下の階。廊下の窓から侵入。巡回が居ない事を確認して玉座の間へ向かう。そして扉の前に立っている兵士を発見。



「すまん、怒られてくれ。ディープスリープ」

「ごめんなさい」


 ドサッ。兵士が眠りに落ち、扉を開けて玉座の間へ。

 赤い絨毯が真っ直ぐ伸びて、途中に階段があり、その先に玉座があるスタンダードな作り。

 サイドには貴族が立つスペースがあり、変わって無いなーと思いながらも玉座へ向かう。



「椅子の後ろにある筈…あった。ポチッとな」

「なんか魔力が下に流れたね」


 小さなスイッチを見つけて黒色魔力を乗せて押すと、ヒュッと魔力が下に流れた。どうやら正解の様で、こそこそと玉座の間を出る。


 宝物庫はその下の階。厳重な扉を抜けた奥の方にある。

 前世で秋が行った時はゴテゴテした剣や鎧が飾ってあるだけの詰まらない物だった。


 階段を降り、巡回の兵士が行くのを待ってからこそこそと進む。

 王女から時折襲ってくれないかなーと聞こえるが、襲ったら問題なのでスルーする。



「ここを抜けたら宝物庫があるエリアだけど、流石に巡回が多いな…何か良い方法は…まあ皆寝かせれば同罪か…スリープ・クラウド」

「あぁ、私共犯者になっちゃった…」

「今更じゃねえか?」


 睡眠効果のある雲を出現させ、範囲内に入った兵士を全て眠らせる。

 夜勤は新米が多いのを知っているので直ぐにバレる事も無い。


 スタスタと奥への扉を開けて、通路を進む。

 途中にあった鉄格子を魔法で開けて更に進む。

 やがて宝物庫に続く重厚な扉が現れた。



「宝物庫って何があるんだろ?入った事無いや」

「200年前は、なんかゴテゴテした剣や鎧があったけど、今はどうなんだろ?時間あったら見る?」

「うん!見るだけだからね!」



 扉の横にある壁を手分けして、くまなく調べる。


「カナン君。これかな?」

「ん?これかな?ただの出っ張りみたいだな。押してみるか。ポチッとな」


 再び黒色魔力を乗せて押すと、ガコン。と壁が開き、通路が出現した。

 カナンと王女は顔を見合わせ、ふふっと笑うとカナンを先頭に中に入る。



「少しカビ臭いな、まあずっと閉め切っていたから仕方ないか」

「何があるんだろうね」

「記憶では資料関係だけど…」


 突き当たりにある扉を開けると、10メートル四方の空間。

 壁には本棚が並び、中央には机。その上に置いてある埃を被った魔石らしき石。


「資料関係が主かな、国の成り立ちとか裏帳簿とかあるけど…面白そうだから慰謝料変わりに貰って良い?」

「良いんじゃないかな?空気がこもっているから国王も知らないと思うし」

「そいじゃ遠慮無く」


 本棚ごとストレージにしまっておく。歴史、奴隷の取引資料や、裏帳簿、国民が知ったら信用がた落ちだなーと思いながらしまう。


 本棚を全てしまい、中央の机へ。上に置いてあった石を見てカナンの表情が曇るが、他も調べていく。


「引き出しには…実験記録か…最後に書いたのが秋が居た時代だから、グリーダが使っていた部屋かな」

「これだけの資料、ロブ王国に持って行かなかったのかな?」

「それどころじゃ無かったらしいぞ、国民を味方につけたイリアに半ば追放って形でロブ王国に行ったらしいからな。あまり物は持ち出せなかったんだって」

「ふーん」


 記録を読み、思い出すな…とため息を一つ。


「読む?良いもんじゃないけど、俺の記録もあるぞ」

「う、うん。……何…これ」

「人体実験の記録だな。王国民と転移者との比較を見たら面白いぞ」

「…転移者の方に丸印か多いけど…」


「魔石を身体に埋め込んで各色の適性を得られるかの実験だ。

 王国民は10%で適性が得られる。けど埋め込まれて50%で死ぬ。転移者は平均50%で適性が得られる。死亡確率は10%。つまり…次元を越えた力を持つ転移者はカスタマイズしやすいって事だ」


「そんな…じゃあカナン君も…?」


「ああ。この人体実験で…運良く全ての色に適性がついた。その割りには上手く魔法を発現出来なくてな。役立たずって言われたよ」

「……」


 凡人だからな、と軽く笑っているが王女は笑えない。どんな痛みを、辛さを、苦しみを体験したのだろうと。



「人間から離れて、あながち変態種ってのも間違いじゃないかもな…さっ、もう用は無いから行くぞ」

「…うん」

「こうやって生きてるんだ。王族として気に病む事は無いさ。終わった事だ」



 隠し部屋を出る。まだ時間はあるので宝物庫へ。魔法で鍵を開けて中に入った。


「なんか実用性の無い物ばかりだね。あっ、可愛いブローチ…違う…赤甲虫の化石だ…」

「大して変わって無いかなー。ん?見た事ある剣だな…なんだ聖剣か、いらね。おっ!転移石だ!解析解析」



 転移石を解析。しばらくして無事理論を解析したカナンはご満悦の様子。王女は少し雰囲気の柔らかくなったカナンを見て少しホッとする。


 特に目ぼしい物は無かったので宝物庫を出る。兵士達はまだ寝ている状態なので、堂々と通路を通り、王女の部屋に行く。



「これで探検は終わりだな。隠し部屋の資料は面白いのがあったら教えるよ」

「ふふっ、よろしくね。カナン君楽しそう」

「そりゃそうさ。国を揺すれるんだぞ?まあどうこうしないけど、知るって事は大事な事さ」


 王女に別れを告げ、スリープ・クラウドを解除。ざわざわする王城を暫く眺め、家に帰った。


「ただいまっと。兄さんは流石に寝てるか。俺も寝よっと」



 カナンはベッドに入り目を閉じる。夢の中で自慢気に実験結果を伝えるグリーダの声を聞きながら、深い眠りに付いた。

そろそろ次回はキリエちゃんVS芋虫ちゃんですかね。

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