学校へ
夏休みが終わり、学校が始まった。
夏も後半、残暑が残る季節。朝早く、カナンは1人リビングでお茶をすする。
アイ、紅羽、サティは修行に励む為に、溟海の家で合宿している。溟海の家に石もあるので、リーリアと矢印もそこに入り浸っている。
「完全1人は久しぶりだなー。夜這いには来ると思うけど…」
因みにオードと茜に溟海を紹介してある。休日はカタリナを連れて溟海合宿に参加するつもりの様だ。
カタリナは式典のせいで海に行けずグレていたが、お米を食べたらご機嫌になった。
カナンは食いしん坊だなー、と未だに気付かない様子。
「おはよう。カナン」
「おはよう父さん。朝ご飯作っておいたよ」
「おっ、ありがとう」
父と母は先日旅行から帰り、仕事に復帰した。帰ってきた時に女性陣を紹介してある。その時少し顔が引きつっていたが、快く祝福してくれていた。
「そういえば、家の事だけど買い取りなら良いって所はあったぞ。家から徒歩2分くらいだから丁度良いし」
「おっ、良いね。ありがとう。見に行けるかな?」
「そうだなー、夕方なら大丈夫か…一緒に行くか?」
「行く行くー。じゃあ夕方ね」
父と夕方の約束をして家を出る。1人なので寂しいと思いながらもとぼとぼ学校へ向かう。
「そういやグリーダの記憶で見たけど、王城に隠し部屋があるんだよなー…行こうかな?…面白そうだから王女も巻き込むか」
通信で話す程度で、夏休み中は王女に会っていない。王城探検をして、怒られる前に先手を打とうというセコい考えだ。
やがて学校に到着した。今日は講堂で始業式をした後、クラスで連絡事項等で終わりなので早く終わる予定。
「おはよう。モリー」
「やあ、おはようカナン。一月振りだねー」
「親戚の所行っていたんだよな。エルメスだっけ?」
「そうだよ。親戚はエルフだからねー。森に行って親戚の叔父さんと薬草の勉強してたよ。カナンは店番?」
「いんや、色々奔走してたよ。聖女の復活ショーを見に行ったけど失敗してたし」
「あぁなんか邪魔が入ったらしいね。白の結界使いとか、白仮面とか、白タイツとか言われている指名手配犯でしょ」
「白タイツ…」
夏休みの出来事を語り合い、始業式が終わる。だらだらとクラスの教室へ。
「魔導具コンテストの結果は教員室の前にあるホールで掲示してあるらしいね。後で行こっか」
「おっ、楽しみだなー」
「確か魔力の少ない子供の防犯グッズだったよね。普段の行いからは想像も付かない程の優しさを見せてるけど、何企んでるの?」
「…何も企んでねえよ。純粋に子供の安全を考えてるだけさ」
「はははっ、冗談だよ。この国だけでも子供の年間誘拐数は未遂も入れて一万人は行くらしいからね」
「難儀な世の中だよな」
連絡事項等が終わった。授業に関する事と、道徳的な事、冬休みまでの予定等を連絡され、カナンとモリーは魔導具コンテストの結果を見る為にホールへ行く。
「結果は…良かった…入賞してた」
「おめでとう。準優勝だね。これで魔導具の免許取れるね」
「これで、学校での目標は達成かな。優勝はクリスか。何作ったんだ?…ラブノック…1対の魔導具で、離れた恋人に振動を伝える魔導具か…あいつらしいな」
「凄いねー。これ一般とか専門学校からも応募されてるからレベル高い筈だよ。あれ?優勝のラブノックは設計図公開されないみたいだね」
「王族の工房で作る事が決定したからって書いてあるぞ。多分ラブノックは戦争とかにも利用出来るから悪用防止じゃないか?」
「振動で信号も送れるし、凄い発明だねー」
結果に満足したカナンは、これで魔導具免許が取得出来、販売許可証を取れば、作成した魔導具をミラの店で販売出来る様になる。
カナンはこれからもっと忙しくなる店の未来を見据えて苦笑するが、家族が良い暮らしをする為だから自重する気は無い様だ。
教員室へ行き、魔導具関連の書類を貰う。この書類を魔導具協会に提出すれば、免許の発行がされる。
「じゃあまた明日なー」
「ばいばい」
モリーと別れ、中央区にある魔導具協会へ向かう。魔導具店の隣にあり、直ぐに着いたので中に入る。普通の役所の様な場所をここで魔導具作成はしておらず、事務局という具合だ。
「こんにちは。これお願いします」
「免許の発行ですね。少々お待ち下さい」
受付のおばさんに書類と学生証を渡し、暫し待つ。昼前なので昼御飯を何にするか考えていると、名前を呼ばれた。
「はい、カナン・ミラさん。説明や規約に関してはこちらの冊子を読んで下さい。2年置きに更新の手続きがありますので、お知らせはしますが忘れない様にお願いします。こちらのプレートに魔力を流して下さい」
「はい、これで良いですか?」
「はい、これで完了しました。学生証をお返しします。講習会の案内等はこちらの魔導具協会で手続き出来ますので、何かありましたらお気軽にいらして下さい」
「ありがとうございます」
免許証を受け取り、協会を出る。これで魔導具職人の仲間入りを果たした。家族に報告する為に帰宅する事に。
「ただいまー。母さん免許取れたよー」
「あらぁ!おめでとう!お祝いしなきゃねー!」
「ははっ、いつも通りで良いよ」
昼休憩をしていた母に出くわし、免許取得の報告。宝石商と魔導具職人なんてお嫁ちゃんも安泰ねー、とニヤニヤ言われ、はははと流す。
夕方まで時間があるので、夕食の用意だけする事に。マグロ等を使い少しだけ豪華な夕食を作り、ストレージにしまっておく。
やる事も終わり、少しゆっくりしていると父が帰宅。一緒に家を見に行く為に一緒に家を出る。
「あっ、魔導具の免許取れたよ」
「おお!おめでとう!その歳で取れるなんて凄いな!」
「たまたま入賞したお陰だよ」
2分程歩いたら目的の家に着いた。一般的な1階建ての普通の家。
「小さな庭付き一戸建てか。改装しても良いんでしょ?」
「購入したら自由にして良いってさ。中見てないけど、買うか?」
「改装するから中はいいや。まあ買いだね。お金は後で渡すよ」
「了解。あと店の隣の土地も買ったんだ。店を広くしようと思ってね」
「へえ。良いね。増築ならやろうか?10分も掛からないよ」
「え?ほんとに?…じゃあお願いしようかな」
「了解」
父との用事を済ませ、帰宅。家族が続々帰ってきたので少し豪華な夕食を振る舞った。カナンは部屋に行き、1人でベッドに横になり、王女に連絡を取る。
≪カナン君?こんばんは≫
「やぁ王女、夜行って良いか?城に隠し部屋があるから探検したくて」
≪大歓迎だよ。隠し部屋かー。気になるねー≫
「ははっ、楽しそうだろ?じゃあ後でな」
≪はーい≫
通信を切る。しーんとする部屋の中、少しの寂しさを覚えた。
「たまには1人も良いかな。ねえサティちゃん」
「秋ちゃん。おやすみのチューしに来た」
「来る時はちゃんと言うんだよ」
「努力する」
サティと少し話して、深夜まで寝る事に。




