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港町へ

 夕陽が沈み、昼間から飲んでいたカナンと溟海。

 晩御飯をバーベキューにしたら、リーリアに三食バーベキュー辛いっすと言われ渋々料理をする事になり、酔いを醒ましていた。



「溟海さん、明日港町を回ったら国に帰るんだけど、準備とかある?とりあえず通信石渡しとくね」

「ありがとう。必要な物は秋に貰った収納バッグに入れたから。海が恋しくなったらアイちゃんに海を召喚して貰えば良いからねぇ」


「人間の社会に行くけど大丈夫なのか?」

「ああ、女神が元凶だって分かってるから大丈夫。暴れたりしないよ…」



 多分…にこやかに告げる様子に若干の不安があるが、溟海にはアイを鍛えて貰える事になった。

 溟海とアイは同じ青色特化なので、カナンが鍛えるよりも伸び率が違う。

 勿論加速空間でカナンも色々教えて貰うつもりだ。



「…溟海さん、宜しくお願いします」

「はははっ、アイちゃん畏まらなくて良いよ。いつも通りでね」

「ええ…あの…あの子の名前、教えて欲しい…」

「ん?シーラだよ」

「__そう…ありがとう」



 カナンは料理をしながら、星空を眺め話すアイと溟海の後ろ姿を見て、親子みたいだなー、と顔を綻ばせた。


 晩御飯を食べ、少し皆で語り合う。アイ、紅羽、リーリアは石に戻り、溟海は海で寝ると言って沖に行ったので、カナンはサティと並んで座り、ボーッと考えを整理する。



「女神は俺達にとって、今のところ敵か…となると人間達も敵に回る可能性もあるか…今は何もないけどアイと紅羽が成体になったら変わるのか?よく分からねえな……なあ、サティちゃん」


「秋ちゃん、女神は溟海さんより強い?」

「どうだろうな。人間達を使って、策を張り巡らせてくる感じだから溟海さんより弱いと思うけど…」


「強くならなきゃ…」

「ああ、そうだな…」


 夜も更け、女神ジリジリと寄ってくるサティから逃げながら寝ようとするがサティと二人きり。

「秋ちゃん…」

「あれ?詰んでね?」

 …睨み合いが続いた。




 翌朝。太陽がまだ出ていない早朝に起き、朝食を済ます。朝が早いのは、港町の市場を回る予定の為だ。


 石の住人達は石の中へ。カナンとサティは飛び立ち港町を目指す。溟海は帰りに合流…港町に言い寄って来る苦手な人が居るらしい。



「デートだね。秋ちゃん。前に来た時は大変だったね」

「そうだな。前に来た時は勇者のせいで買い物出来なかったから、色々買っていこう」


 前世の旅で立ち寄った事があるが、勇者はこの国では嫌われている。

 勇者は魔王を倒す存在だからだ。

 自分が勇者だと吹聴したあげく噂が広まり、買い物すら出来なくなった事を思いだして笑い合う二人。



 やがて港町に着き、路地裏に降り立つ。念の為カナンはフードをかぶり、一目で人間と分からない様にする。


「そういやこの国に来たいって言い出したのも勇者だったな…」

「うん、俺が勇者の良さを広めるんだって言ってたね、あのクズ。秋ちゃんは何か欲しい物あるの?」

「あるぞ、この港町は貿易船が来るから、違う大陸の品がくるんだ。それが狙いかな」



 市場へ向かって歩く。

 サティは凄く目立つ存在だが、魔族は友好国であるエルメスのエルフ達に干渉はしないので、珍しいな程度の認識。

 貿易をしている関係上、人間も一定数居るのでサティをどうこうしようとする輩は居るが、アイと紅羽がゾンビゲームのシューティングの様に威圧で退散している。


 そして市場に到着。

 船着き場の近く、アーケード商店街の様に店が並んでいる。

 日の出を合図にする様に魚や干物の販売が始まり、他の大陸の調味料や食材も並びだした。

 人はまだ多くは無いが活気に溢れている。



「とりあえず魚関連はアイに頼めば済むんだけど、中々いないデカイ魚中心に見ようかな」

「ウナギってヤツ食べたい」

「あー、あるかな?一応海でも捕れる筈だし」


 鮮魚を扱う店が並んでいるのでザーッと見ていく。

 スタンダードな魚が多く、大体手に入る魚。

 台車をガラガラさせながら歩く。


「これは、ウナギじゃなくてウツボか…あっマグロだ。おいちゃんこれ全部丸々頂戴!」

「はいよ!レストランの仕入れかい?」

「ははっ、そんなもんだよ」


 とりあえず目に付いた2メートル程のマグロを5匹購入。台車に乗せて運び、人の目を盗んでストレージにしまう。


「サティちゃん、ウナギいないから川とかで捕ってみるね」

「うん、秋ちゃんのウナギ…「駄目だよサティちゃん」……」


 鮮魚ゾーンを抜けて貿易品を見ていく。

 国毎に別れている様で、複数の国のエリアがあるので近い所から回っていく。


「調味料は一通り欲しいな。後は…米ってあるのかな?」

「日記に書いてあったね。米食べたい米食べたいって」

「まあ米はソウルフードだからなー」


 調味料の店で在庫の半分程買ったら驚かれたが、色々な調味料を得てご満悦のカナン。


「異国の衣類はそんなに変わらない、絨毯とか使わないしな…あっ…ジャージだ…転移者でも居るのかな?」

「秋ちゃんは転移者にどれくらい会ったの?」

「今世は数人かな、ユウト、茜ちゃん…あと居たっけ?。前世は5人くらいかな?…意外と会ってるな」

「ふーん、何か話したの?」

「調味料の作り方とか、お酒の作り方、現代知識の交換かな?皆商売に目を向けてね。逞しかったよ」



 貿易品を見ていくが特にめぼしいものは無く、最後の国の店へ。


「……あっ、米だ」「この白い種?」

「ああ、色々種類があるなー。全部試すか…おいちゃん売れる分全部頂戴!」

「おお!ありがとう!中々売れなくてね!ちょいとまけといてやるよ!」

「どうもねー。あっ、ここなんて国の食材?」

「ジーパンだよ!」

「おっおう…ジーパンね…ありがとう」


 10俵あり、面倒くさくなったカナンはお金を払ったら、しれっとストレージに全てしまい、そそくさと退散。


「米が食べれる、米が食べれる」

「秋ちゃん嬉しそう。私も食べてね」



 市場を出て、ウキウキと大通りを歩く。

 途中で冒険者ギルドがあり、立ち止まって悩む。

 先日助けたライとルイがお礼をしたいと言っていたのを思い出すが、この中に入ったら面倒くさそうだなと。


「……さっ、浜辺に戻るか」

「ん?うん」


 縁があればまた会えるだろう…そう言い聞かせて港町を飛び立った。



とある場所にて



「ふんふんふーん」



鼻歌を歌いながら砂漠を進むキリエ。とりあえず真っ直ぐ進む事にした様だ。


「なんか身体が変わったのかな?ご飯食べなくても大丈夫になっちゃったけど…食欲はあるんだよなぁ…なんでだろ。まっ楽で良いかなぁ」


休憩も取らず、食事も取らずにひたすら真っ直ぐ進む。大きな砂丘を越えた辺りで大きな魔力を感じた。


「んー?魔物?この感じは…」


ドオオオン!砂の中から出てきた100メートルを越す巨大な魔物。土色で蛇の様に長くしなやかな身体を持ち、目は無く、大きな口がワシャワシャと蠢いている。


「わぁー。でっかいサンドワームだー!この大きさは王種かな?」


「ギャアオオオオオ!」


グラトニー・サンドワーム。蟲王種。砂漠で出会ったら奇跡が起きない限り助からないと言われる程の凶暴性。



「くふふ、美味しいかな?」

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