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オリジンと話そう

「そいじゃあ出会いに」

「「乾杯!」」


 キンッとグラスを合わせ、カナンと溟海はお酒を飲む。カナンが時間魔法で熟成させて作ったウイスキーだ。


「このお酒は美味しいな。酒精が強くてグッと来る深みが良いね」

「ははっ、良かったよ。完成させるのに苦労したんだ」

『このくさいお酒、アキと矢印しか飲まなかったよねー!良かったね仲間が増えて!』



 ロックスタイルでグラスを傾け、バーベキューをするおじさん二人。

 リーリアと矢印はテーブルの端っこでゴロゴロしている。

 女性陣は挨拶を済ませた後は、少し離れた所で七輪を囲んで静かに談笑している。

 カナンは気を使っているのかな?と気にしないようにした。


「良かったらウイスキー持っていきなよ。樽で千以上あるし、収納バッグに入れておくから」

「はははっ、悪いね。じゃあお返しに…何が良いかな?魔法にする?」

「おっ、魔法良いの?ありがたく貰うよ」

「じゃあ、何個か入れるね。メモリートランスファー」



 溟海はカナンのおでこに指を当て、転写の魔法を発動した。

 ギュン!と流れてきた魔法にカナンは目を見開き、凄い魔法だけど本当に良いの?と目を白黒させた。


「魔法なんて無駄に持っているだけだからね。秋はこういうの好きでしょ?」

「ありがとう助かるよ。これは重宝する…磁力魔法に、複製魔法…後これは星属性魔法?」

「喜んで貰って良かったよ。属性が合わなくても知識だけはあるからね。今度使ってみなよ」



 難解だがものに出来れば大きな力になる魔法を貰い、お酒だけじゃ足りないよなー…と思うが溟海が満足そうなので気にしない様にした。


「そうだ、溟海さん。女神って何か分かる?」

「女神?ああ、この星が出来て、暫くして現れた神種だね。

 この次元と少しずれた次元に星と星を繋ぐ場所があってね。天異界って言うんだけど、そこで星を管理、担当をしだした存在の事さ。

 番付があって、奴らは神格を上げる為に奔走しているけど…この世界に顕現するには器が必要でね…」



 溟海が言い辛そうに女性陣をチラリと見る。カナンはやっぱりそうだよな…とため息を付いた。


「わかっているよ。アイと紅羽だろ」

「…そう。星の生命体からの信仰や認知、願いを叶える事で力を得られるんだけど、顕現した方が早く神格が上がるからね」


「もし顕現したらアイと紅羽は死ぬのか?」

「確実に死ぬ。精神ごと乗っ取られるし、神種の神気に身体が適応しなくて数年で滅びるからね」


「それを防ぐには存在力を減らさない様にするしか無い?」

「いや、方法は幾つかあるよ。簡単に言うと秋が守れば良いんだけど…長くなるからまた今度教えてあげるよ」


 アイと紅羽を守る方法がある。少しの安堵と不安があるが、溟海は女神をよく思っていないのか?という疑問も浮かんでくる。



「溟海さんって女神が嫌いなのか?」

「嫌い…まあそうだね。昔…仲の良かった青色の魔王がいてね。一緒に世界を回る約束をしていたんだ。

 でも成体になった時に、女神が勇者に力を与えて討伐してしまった…」


「そう…か。そして…女神が顕現したのか」

「そう。彼女は魔王の中では弱かったから…1年と持たずに身体を使い潰されて崩壊したよ…それを見たら悲しくなってね。

 私は少し荒れてしまったんだ。そしたら大災害なんて名前が付いちゃってねぇ」


 ははは、と儚く笑う溟海は、割り切れていないのだろう。アイに向ける視線に、懐かしさと切なさを重ねている。



「同じ立場なら、溟海さんと同じ道を辿ると思うよ。俺もアイ達と世界を回る約束をしているんだ。良かったら溟海さんも来ないかい?」

「…ははは。秋は優しいんだね。…じゃあその時はお願いするよ。あっ、でもそうなると天空も来たいって言うかもしれないけど良いかい?」

「ははっ、大歓迎さ」



 何か通じ合う物があるのか、カナンと溟海でワイワイと雑談していた。

 女性陣は様子を見ていたが、溟海さんって優しいね、と好印象を持った様だ。大人しかったアイも話に参加する。


「…ねえ溟海さん。青色の魔王ってどんな子だったの?」

「優しい子だったよ。丁度今のアイちゃんくらいの頃に出会ってね。よく一緒に泳いだよ。…思えば娘みたいな存在だったかな」

「…フフ、その子は幸せだったと思うわよ。溟海さんと出会えて」

「ははは、そうかな?そうだと良いな。ありがとう」



 溟海のお礼を笑顔で受け取ったアイは席を離れ、散歩してくる…と紅羽、サティを連れて砂浜をブラブラし始め、リーリアも付いていった。

 その様子をカナンと溟海、矢印が眺め、矢印がふよふよする中、おじさん二人で再び話し出す。


「秋、魔王種は元々星を守る存在なんだ。

 大地を、空を、海を守る強く美しい姿に、女神達は目を付けた。彼女達は純粋な心を持った存在で、白にも黒にも染まるから、人間達の意識を誘導させて彼女達を攻めた。

 結果、彼女達は人間を敵と判断して、人の領域に攻撃を開始する」


「そして人々は神に願う訳か…魔王を倒す力を、倒す存在を」


「そう。魔王を倒す力を与えた勇者と、保険に天罰という名の爆弾を植え付けられた聖女を向かわす。

 勇者と聖女への願いも女神の力になるから、直ぐに魔王の元へ向かわせずに、国々を回らせ信仰、認知を得させる」


「やっている事が汚いねぇ。ここまでは予想通りだけど…神格が上がると、どうなるんだ?」

「…神種は実力主義でね。神格が上がれば他の神種よりも上に立てる。見下せる。支配できる。贅沢が出来る。そんな所だよ…これはボロボロになったあの子の核から読み取った事だから確かだと思う」


「そうか…確かに神なんていらねえよな」


 グリーダが神を憎む気持ちが少し分かる様な気がしたが、あいつとは考え方が違うな…と苦笑した。



「秋、君が望むなら力を貸すよ?」

「ありがとう。頼みます」


 二人は固い握手をして、話題を変えてまた飲み直し、下世話な話題になった時に矢印は逃げ出した。







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