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王城潜入

 夜になり、みんなが寝静まり寝息が聞こえてくる深夜帯。


「ぐごーぐごー」

(オード兄さん7歳でそのイビキはすげえな)


 こっそりとベッドから出て、そろりそろりと家を抜け出す。


 ちなみにカナンは2人部屋、オードと一緒の部屋だ。夜はちょっとうるさいので、集中したい時には、サイレントの魔法をかけている。


 外に出ると、月明かりが少しまぶしい。王城に忍び込むには良いシチュエーションだと思わせる満月の夜。


 空を飛び、シュタッと近くの教会の屋根に降り立つ。


「夜に抜け出すって緊張するよな。まあバレても夢遊病を装えば良いか…良いのか?」


 首を傾げながら変装用の魔法を発動する。


「この日の為に開発したオリジナル、カラーチェンジ・シルバー」


 スゥッと茶色の髪が銀色に染まる。

 メガネは満月に反射して視界が悪いので外し、服を綺麗な服に着替える。口元に布を付けマスクにしたら、どこぞの盗賊の様な格好に変身した。


「くっくっく、準備万端…行くか」


 スルスルと夜の王都を走り抜ける。王城は中央区の真ん中にある、それを囲むように貴族街、裕福な家、その外周に平民が暮らすエリアがあり、ドーナツ状の街並み。


 従って、中央に行けば行くほど警備は厳しくなる。騎士の巡回が絶え間ないので、そこらの盗賊が誰にも見つからず王城まで行くのは無理に等しい。


「宝物殿のベテラン侵入者を嘗めるなよ」


 くっくっくとにやつきながら、路地裏で白と黒の魔方陣を展開。


「オプティカル・カムフラージュ」


 カナンの姿が消えた、しかしそこには存在している。光学迷彩の魔法だ。


「さて、行くかー」


 遠足に行くようなウキウキした足取りで中央区を歩く。テクテクと貴族街を過ぎ、


(相変わらず派手な家ばっかだな)


 王城の正門に辿り着く。


(うーん、あんまり変わってないな…門は閉まってるか…)


 正門に居る騎士の目の前で、キョロキョロと辺りを見渡す。


(変わってないなら使用人入り口から行くか)


 ピョンッと塀を飛び越え、シュタッと着地してから敷地内を歩く。


(まだ働いてんのか、大変そうだな)


 すれ違う使用人達に感心を持ちながら、建物に入り最初の目的地へ行く事にした。


 そして、目的の場所に立ち止まった。


(あそこだ…場所は変わっていない!)


 そう、お風呂だ。扉から出入りする女性達。


(美人のおねーさんだ!ちっ…出たあとか)


 そして、運悪く一目でおばちゃんと分かる人が入って行く。


(くそっ……仕方ない、帰りにまた来るか…)


 落ち込みトボトボと歩く。カナン少年は王女よりお風呂に興味があるようだ。


(秋の時は覗きがバレて聖女ちゃんにボコボコにされたなー。主犯の勇者は言い訳をして俺に罪を擦り付けたっけ…)


 今は少年だからバレても罪は軽いと思っている。


(仕方ない、王女のとこ行くか…)


 階段で上層まで行き、王族エリアに到着。


(どの部屋かなー、確か変わってなければ奥の手前か。行ってみるか)


 扉の前に立って、防犯対策あるかなー、と扉の魔力の流れを視る。


(あーやっぱり、魔法感知と結界の扉か…触ったら近衛兵がくるか)


(仕方ない、ベランダから行くかー)


 廊下の窓を開け、ゆっくりと外に飛び立つ。


(あれ?なんでこんな事してんだっけ?…まあいいか)


 するりと抜けて先ほどの部屋のベランダに降り立った。


(寝てんのか?暗くてよく見えんな…閉め切り過ぎだろ)


 カーテンの隙間からジーッと覗くがよくわからない。


(身体は小さいから同じくらい、王子はデカイか赤ん坊だったか?だとしたらここか?)


 窓を開け、カーテンをめくり入る。


(おじゃましまーす。相変わらず広いなー)


 少し進むとベッドに横になっていた王女らしき子供がモゾモゾと起き上がる。


(ん?起き上がったな、丁度良い)


「ん?………えっ?…だれ?」


「しー」


 人差し指を口にやり、静かにしてねとばかりにウインクしてみる。


「……」

「俺はフジ」


 暗くて顔がよく見えないので、目を凝らしながら近づく。なんとか女子かなと分かるくらいの距離まで来た。


「………」

(ん?どうした?具合悪いのか?)


「第三王女か?」


「_はっはい!」


「病気と聞いた」


「病気…はい…あの…えと」

(そりゃ自分の病気言うのは恥ずかしいよな)


「何の病気だ?」


「……」


 王女は答えないので沈黙が続く。

(あれ?聞こえなかった?)


 近付き至近距離で目を合わせる。暗いが朧気ながら顔が見える距離。

(ここなら聞こえんだろ)


「言ってみろ、俺が治してやる」


「うぅ……」


「………」


 王女は無言で袖をめくりだした。

(肌の病気かね、そりゃ恥ずかしいわな)


「腕?……ほーこれは」


 そこには手首から上が赤黒く変色していた。そして苦悶の表情をした顔のようなモノが見える。


「……魔王の呪いか」


「えっ?まおう……」

(こりゃ上位魔法じゃ治らんな。実際魔王なんて関係ないんだけど…あれ?これって精霊樹由来のエリクサー効くのか?)


 七色に輝く液体。エリクサーを取り出し渡す。

「飲んで」


「これは?」

「いいから飲んでみ」


 七色の液体を眺め、少しの期待を込めた王女は、恐る恐る口に含み飲み込むと、腕がフッと七色に輝いた。


 少し腕の変色が薄くなった。


「えっ?…すごい…身体が楽になりました」


 しかしまた色が戻っていく。


「やっぱりダメかー。強力な呪いだから無理も無いか」


「あの…これは…」


「ん?エリクサーだけど?」


「………えっ?エリ…クサー…」

(さっきから反応が単調だな。絶賛混乱中ってか)


 王女はエリクサーだと分かり、貴重な薬を提供してくれたカナンに感謝の想いを向ける。しかしエリクサーで駄目なら、とフッと儚く笑いながらカナンを見詰める。


「本当にエリクサーでも治らないなら、やっぱりずっと治らないんですね。国中から魔法師や薬師が来ましたがだめでした…」


 諦めた表情を浮かべ、俯く王女に、俺が居るのに子供がそんな表情しやがって…と呆れながら笑う。


「何言ってんだよ」


 目に涙を浮かべる王女が唇を噛み締めながらカナンを見る。


「その病気は治るんだよ」

(実験体だなんて悪い事考えちまったかな)


 カナンは魔法を発動。白色と銀色の大きな魔方陣を展開した。


「俺が治してやるって言ったろうが」

(この子に罪は無い…か)


 白銀となって輝く魔方陣。


「なあ王女、俺を信じてみねえか?」


 部屋の中に白銀の光が満ちる。王女と見つめ合い、王女がコクンと頷いた。


「ベネディクション・フェアリィソング」


 白銀の光が更に輝き、部屋を包み込む。やがて光が部屋から溢れ出て、王城を、そして街を照らすほどの光が溢れる。


 王女は温かい光に包まれ、徐々に身体が治って行く現実を受け止められず呆けている様子。


 カナンは


(ぎゃー!まぶしー!これ確か部屋で使うもんじゃ無かった!確実に近衛兵来るじゃんか!捕まるのはもういや!)


 絶賛混乱中だった。


(逃げろー!)


 かかとを翻し、ベランダから出る為に王女から目を離す。


「待って下さい!お礼をさせて下さい!」


 カナンに抱き付く王女。子供を振り払う訳もいかず、カナンは逃げられない。


「いらん」

(離れてー!)


「すぐに行くというなら!来てくれるまで待ってます!あなたがまた来てくれるのを!」

「わかった、わかったから(離れて下さい)」


「約束ですよ?」

 約束を取り付け、安堵と不安を浮かべながら、王女はカナンから離れる。


「じゃあ……またな」


「はい!」


 ドタドタドタドタ!

(やばっ!)


 カナンは逃げ出した。

カラーチェンジ・○○~各属性下位魔法、対応した属性の色の髪に変化する


オプティカル・カモフラージュ~光、闇複合属性上位魔法、光学迷彩により姿を隠せる


ベネディクション・フェアリィソング~光、星複合属性超位魔法、妖精の旋律のような温かい力と光で対象の状態異常を治す。ただ凄く眩しいので注意が必要



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