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大教会へ2

 夜の街を飛び越え、大教会の一番高い塔の上に降り立つ。


 縦長の長方形の四角い城壁に囲まれた街で、白を基調とした街並み。その中心に大きな広場があり、その先を真っ直ぐ進むと霊山に背を向ける形で大教会がある。縦長の長方形の奥、3分の1が大教会の敷地だ。


 中央には白い大聖堂、紅羽が居た神殿よりも数倍は大きく、大国のお城の様な全ての教会の総本山。長く幅のある階段を上がった先にある。その後ろに居住区等が広がり、大聖堂を囲む様に10程の尖塔が建っている。


「先ずは大聖堂からかな、地下に聖女と禁書庫があったはず」


 正門は閉まっているので、窓を探しこそこそ入る。上の階から侵入。


「確かこの階は、教皇の部屋と侍女や騎士の待機場所、後は会議室か…この階に盗聴器付けまくろう」


 人が会話しそうな場所に盗聴器を付ける。通信の魔導具の応用だ。1センチ程の球体でドアに張り付ければ室内の会話が聞こえる高性能なタイプ。


 ペタペタと張り付け、廊下の天井にも張り付ける。セット完了し、階段を上がる。


「上の階は聖女と教皇の祈りの間。ここにもセットしてと、なんか人が居ないな。なんで?中は誰も居ない、お邪魔しまーす」


 鍵や警報は付いていないのを確認し、祈りの間へ入る。広さは大聖堂とほぼ同じ。3階部分が全て祈りの間になっている。


「相変わらず広いなー。1人で祈るとか心細い」


 ドーム型の屋根にステンドグラスが輝く聖堂。暗いのでよく分からないが晴れの日はとても綺麗なのだろう。神像がある奥へと進む。


「総本山は創世神と6柱の女神を奉っているから7柱の神像があるんだよなー。やっぱ壮観だ」


 全長5メートルの神像がズラリと並ぶ景色は、流石総本山と言わしめるほどに神々しい。


「そういえばここまで近くに来るのは初めてだったな。前は神殿騎士と魔法使いが居たから近付けなかったし」


 神像の近くまでやって来た。白い石膏の様な材質だが、とても頑丈で綺麗な石像。


「創世神も女神なのか、おっさんだと思ってた。創世神の属性って何なんだろ?他の女神は赤、青、黄、緑、白、黒色の宝石が胸に付いているけど…創世神は何も付いていない。虹色?銀色?…まあいっか……あれ?」


 左右対称に6柱の女神像がありその中央、少し右にずれた場所に創世神像がある。バランス悪いなーと思いながら女神像の宝石を確認してみる。


「うおっ、すげ。純度の高い属性石だ。これ全部あったらアイと紅羽の適性が揃うなー。でもこれ盗んだら天罰ありそう…やめとくか」


 欲しかったが諦め、祈りの間を後にした。カナンも属性石を作れるが、純度の高い天然物の方がより強力な属性を得られる。



「次は一階の大聖堂か」


 人が居ないのを確認。3階から階段を降りて2階へ、人居ないなーと呟きながら一階の大聖堂へ。


「おっ、ここに居たのか。皆徹夜でご苦労なこって」


 大聖堂の中心。7柱の女神像の前で祈りを捧げる教会の面々。ざっと数えて500人程。


「聖女復活の準備かな?移魂の法をするには人数が多いし、天罰にならない様に祈ってるって所か」


 一階の大聖堂には用は無いので、こそこそと通路を進み、鉄格子の扉を開け、地下の階段を降りる。途中何度も鍵の付いた鉄格子の扉があるが、カナンにとって鍵開けは簡単なのでスルスルすると白い階段を降りていく。


「地下に到着っと。白色魔力が充満しているから常駐の警備が居ないのが楽だよなー。前回はあんまり時間無かったから加速時間でゴリ押ししたけど、今回はじっくり見るか」


 地下に降り立ち通路に出る。多くの扉があり、とりあえず目の前の扉を開ける。ギィッと古い扉の音を聞きながら不思議とカビ臭く無い部屋に入る。


「用具入れかな?古い飾りやら燭台やら、素材も銀や金だから捨てるに捨てれないのか」


 何も無いので部屋を出て次々と扉を開けていく。扉の数は50程。順番に開けていく。


「無駄な物多くない?…あっここは魔導具置き場。でもこんな地下にあるって事はガラクタかな?」


 一つ一つ確認していく。通信機や調理器具っぽいヤツなど実用的な物が多い。


「なんでこんな所に、ん?でも起動するのに属性が4つ以上必要だな。こんなの使いにくいじゃねえか。そりゃお蔵入りか」


 普通の人は魔導具に流す魔力は2属性が精一杯。確かにガラクタ…そう呟いて部屋を出る。


「後は奥の2つの部屋。禁庫と禁書庫。禁書庫から行くか」


 奥の封印されていた扉を開け、中に入る。部屋の中は10メートル四方の部屋の壁に本棚がズラリと並び、本で8割程埋まっている

 。


「さて、新しい本は無いかな?…分からないから順番に見るか。魔法書は…増えて無いな。魔導具の設計図は…増えている。こりゃ古代兵器か。物騒だから貰っておこう。禁薬のレシピは…増えていないな。これは天使と悪魔の召喚術?天使と悪魔なんて居るのか?」


 召喚術の本をざっと読む。天使の召喚術と悪魔の召喚術が記載されているがカナンは首を傾げる。


「これは嘘っぱちだなー。理論がめちゃくちゃで何も召喚出来ない。魔力暴走して終わり。これ書いたの日本人かな?裏に名前が書いてあるし、一応貰うか」


 本をしまい、もう見るものも無いが、一応歴史書を眺める。


「なんもねえな。おっ大教会の設計図がある。……へえ、街の中央広場は魔方陣が地下にあって、魔法の増幅装置になっているのか。後は、3階の祈りの間は他に役割がありそうだな。よし、風呂場の位置は記憶したから夕方以降に張り込みだな」


 禁書庫を出て禁庫がある最後の扉を開ける。封印が厳重だがカナンにとっては普通の封印と変わらないのでサクッと開け、中に入る。


「聖女ちゃんは、居た居た。…んー、前は3体あったから。今は2体。1体居ないな。もう運ばれたか…確か壁に目録が記載されてたよな。えーっと…運ばれた聖女はっと……800年ぐらい前の聖女キリエ…歴代最強聖女。デブーダさん欲張ったねえ、こりゃ器が強すぎて魔力足りるの?」


 はぁーとため息を付いて必要な魔力量を計算する。足りねえな、と答えを導く。


「最低千人は生贄が必要だろ。もしそうなら大虐殺じゃねえか……あー…もう手遅れか…くそが」


 最近ため息ばかりだなーと思いながら他の禁制品を見る。


「うわっ、ダンジョンコアだ。封印しろよ…でも大教会がダンジョンになったら面白そう…魔力流そうかな…いや駄目だ…あーやっぱり面白そう…」


 50センチ程の、鈍く光る真っ白な石を眺めて悩むカナン。その時カナンの石から2つの手が伸びてダンジョンコアに触れる。


 ギュン!と魔力を吸う音が響いた。


「ちょっ!何してるの!?そんなに魔力流したらこの場所に固定されて動かせなくなるでしょ!?」

『だって』『悩んでたから』


 悪戯に笑う二人に呆れた視線を向け、カナンもダンジョンコアに魔力を流す。場所を固定させてしばらく経つと大教会がダンジョン化し、魔力を流した者がオーナーとなる。


「これで後1年くらいでダンジョンになるな。多分ここ最高位ダンジョンになるぞ」


 人々の祈り、神聖魔力、霊山の魔力に加え、カナン、アイ、紅羽の魔力を流し込んだダンジョンコアは凶悪な進化を遂げるだろう。ダンジョンコアに隠蔽の魔法を掛け、念のため認識阻害のメガネを乗せておく。


「さっ帰ろう。なんかもうお腹一杯だ」


 盗聴器をセットした時点で、ほぼ目的は達していたので帰る事に。こそこそと階段を上がり、通路の窓から脱出。


『アキ、ダンジョンコアに詳しいのね』

「あー、1つダンジョンを攻略してるんだよ。高位ダンジョンだな。その時にコアの研究したんだ」

『ボスとか居るのか?』

「居るぞ、俺の時は…ドラゴンゾンビだったからホーリーレイ1発で終わったかな」


『ふーん。じゃあ、あのダンジョンコアのボスはどれくらいになるの?』

「まあ、下手したら神種か絶対種か超越種だな」

『その3つがこの世界の最強種よね。楽しみだわ』

「ははっ、そうだな。神種は特殊だけどな。そういえばこの前闘った熔岩とダイヤのオリジン種は絶対種の仲間らしいぞ。なあリーリア」


『そうだねー。でも進化したから絶対種と超越種の中間だと思うよー!』


 雑談しながら森の拠点へと戻る。アイと紅羽はダンジョンが楽しみな様子で来年行こうね!とウキウキしている。


「デブーダはまだ居ない様子、まだ霊山か?」


 カナンは盗聴の受信機をセットし、グリーダが教会に来るまで静観する事に決めた。






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