西へ
綺麗な荒野が広がる大地。その中にぽっかりと開く大穴。
穴を眺めながら、戦闘の反省をして少しの休憩。
『おつかれさまー!紅羽格好良かったよ!』
「ふふ、ありがとうリーリア」
「あの腕って改造したら使えそうだな。ロマンが詰まっていそうだ」
「デカくて重そうよね」
「我あれ欲しい」「上手く行ったらあげるよ」
「やった」
「さて、穴の中を確認だな。何もなかったら埋めないと。調査チームが来て変な物掘り返されたら困るからな」
カナンは飛び立ってゆっくりと穴に降りる。石の住人達はのんびりしたい様で、地上でお留守番。
ライトを唱え、灯りを付けながら降りていく。
「ここら辺だなー。あったあった」
まだ穴は続いているが恐らく行き止まりなので、横穴に入る。
大人10人が並んで歩ける幅の通路を進む。
「コンクリートみたいな材質かな?おっ、魔導エレベーターってことは、ここから地上に行っていたのか」
10程の円柱に扉が付いている。ボタンか付いていて、上へのボタンしか無い。下には何も無さそうだ。
「扉があるなー。どうやったら開くんだ?カードキーか何かがいりそうだな」
扉が幾つかあり、何かを差し込む場所がある。
「壊せば良いか…いや、警報鳴ったら困るよな…壁から入るか。崩壊」
手を壁に当てて魔法を発動。崩壊させる。サラサラと人1人が入れる大きさに壁のみが崩れ、剥き出しのコード類を掻き分けながら中に入る。
「何も無い、か」
30メートル四方の空っぽの部屋。恐らく古代の騎士が待機していたのだろう。幾つか部屋に入るが特に何も無い。
「真ん中の部屋が最後か、崩壊」
真ん中にある存在感のある扉、何かありそうでとっておいた扉だ。横から壁を崩し中に入った。
「ふーん、メインコンピューターかな。おっ、タブレット発見」
中央に大きな機械があり、以前遺跡で見付けた様なタブレットが目立つ場所に嵌まっていた。触っても起動しない。少し魔力を込めるとブォンと点灯。項目が前のタブレットと同じくらい。
「えーっと、研究資料と、兵士の管理、調査記録、魔方陣の運行状況は灰色か、大きいのはそれくらいか…ん?新着データ?」
新着データの部分を開く。そこには画像付きで紅羽の戦闘データが記載されていた。
「あー、これもしかしたら他の遺跡にも送信されたかも…まいったな」
遺跡に行ったら戦闘が起きそうだ…紅羽は遺跡出禁だなと思いながら下にスライド。
「おー!すげえ!過去の戦闘データだ!この量…世界中の魔物が記載されてるんじゃないか?と言っても古代の魔物だから今の魔物に当てはまるのは少ないか……ん?変態種、個体名アキ…説明があるな。変態的な強さ、最高位魔導兵00-1が上位魔法と思われる変態な一撃で無力化。超級災害指定クソメガネ。良かった、性癖の事じゃ無かったのか。にしてもレイちゃんは最高位魔導兵だったんだなー。ただの口の悪いアンドロイドだと思ってたけど…多分この説明はレイちゃんの主観が入っているな…流石に亀甲縛りはやりすぎたか…」
安堵した表情のカナン。過去に闘い、結局美人なので壊せなかった魔導兵を思い出し、おっさんと元気にやっているかな?と乾いた笑いを浮かべる。
「こういう説明があるって事は、まだ古代のマザーコンピューターは動いているんだな。後はこんな所かな…サーチ」
念の為に探索の魔法を発動。入ってきた横穴の反対側の横穴に1つ部屋があるのが分かる。
「戻るか」
波動砲で貴重な物壊したかなーと呟きながら、来た道を戻る。通路を進み、反対側の横穴へ。そこには1つ扉があり、崩壊で壁を壊し中に入る。中にはフラスコやら実験器具が並ぶ30メートル四方の部屋。
「研究室かな?おっこれは魔法玉だな。沢山あるしご丁寧に説明書付きか…へえーロブ王国の魔法玉と違って色々入れる事が出来るんだな。…人の記憶や小さな魔法生物まで入るのか、すげえな」
目についた物をストレージに入れて行く。ヤバい色の液体や制作途中の機械など。
「こんなもんかな、にしても凄い技術だな。魔の森でも探索しとけば良かった…まあ、また行けば良いか」
部屋から出て通路を進み、大穴を上がり外に出る。
「終わったの?」
「とりあえずはなー。穴埋めるか…アースコントロール_ん?」
地面を操作し大穴を埋める。直ぐに穴が埋まり、カナンは綺麗な荒野が広がる大地を、何かを考える様にボーっと眺める。
「アキ?どうしたの?」「いや…何でもない…調査チームが来る前に行くかー」
また隠し事ねと言うアイの呟きを躱し、住人達が石の中に戻るのを待った後、飛び立って西に向かう。
「一度霊山の様子を見ようか、デブの動向も知っておかないと」
『ええ、白の精霊石も探す?』
「ああ、リーリア、霊山に着いたら確認よろしく」
『はーい!』
西に向かって進む。途中ロブ王国の王都を通過。その際調査チームらしき何台もの馬車が遺跡の方角へ進んでいった。残念でした、と呟きながら街道に沿って飛び、途中にある大きな森を通過。
カナンは緑の絨毯みたいだなーと思いながら進む。太陽は少し傾き、あと少しで夕方になる頃。遠目にうっすらと山脈が見えてきた。
「結構距離あるな。夜は見えないから、今日はこの辺で泊まるかー」
『はーい』『キャンプだー!』『楽しみだなー』
辺りを見渡す。少し遠くに100メートル程の、台形の岩山を見つけ頂上に降り立つ。
「モデル・ハウス」
造形の魔法を発動。岩が盛り上がり家の形に変化。石の住人が出てきて家に入ってキャイキャイ言っている。カナンも楽しそうだなーと思いながら家に入り休憩をしていた。
「ちょっと遺跡で見付けた研究資料とか確認したいからこれ食べてて」
「「『はーい』」」
晩御飯を取り出し机に置いておく、そして別の部屋に入り遺跡で見付けた物を確認していく。
「えーっと、やっぱり石碑の魔方陣は別次元から呼び寄せる召喚式の類いか、今まで呼び寄せた物もあるなー。…聞いた事の無い奴ばかりか。今は別の呼び名かもしれないけど。
…兵士の管理は灰色になったのは離れたからか?。
研究記録は…人体実験かな?魔法玉に人間とか魂が入れられるかの実験。答えは否か。脳から転写した記憶なら保持出来る?よく分からないけどこれなら俺も出来そうだな。デブで試してみるか…後は…?…うーん、ロックが掛かってるか…タイトルがヤバいがその内だな」
カナンは無駄な知識を取り入れて、満足げな表情でタブレットを見詰め、次に研究室で手に入れた物を確認。
「魔法玉は確かに材質が違うな…あー…絶滅した魔物から取れる素材か。あとはヤバい色の液体は…なんだ、ただの毒か。継ぎ目の無い黒い箱は、何かカラカラ音がする。封印したものだったら慎重に行かないと…機械は銃やら兵器が多いな。ジェットエンジンもあるし、退屈は無くなりそうだ」
今後を思いニヤニヤしながら機械を見るカナンを、アイと紅羽はまた始まったとため息を付く。
「アキってあーやって、またデカいフラグ立てるのよね」
「そうだな、まあアキらしいけど」
亀甲縛り~無、赤、青、黄、緑、白、黒色複合上位魔法、主人公オリジナル捕縛魔法、縄で縛る。その日の気分で色を変えたり服従させる事も出来る。M属性を植え付け、もがけばもがく程快感として帰って来る浪漫魔法。
その上に超位魔法の超・亀甲縛り、禁術の極・亀甲縛りがある。




