ロブ王国の遺跡へ3
白銀の女性は落ちていた白銀の剣を右手で取り、紅羽を見据えながら魔力をかき集めていく。
「なあ、名前は何て言うんだ?」
「個体名03」
「03?それは名前なのか?」
首を傾げる紅羽、でも会話が出来るんだな、と少し嬉しく思いながら楽しそうに微笑む。
「マナ供給完了。換装」
03が右手に魔力を込める。落ちていた鎧が右手に集まり融合。
次第に形が作られる。全長2メートルを超える銃身の様な金属の腕。剣は手の部分に変わり、肘からジェットエンジンの先の尖った噴射口の様な物が頭を超える程に伸びている。
右腕だけが異常にデカイ、歪なバランス。しかしその足取りは重さを感じさせない軽やかな足取り。
「モードチェンジ、オーバーキル」
キュィィイイイン!肘から空気を取り入れる噴流の音が響く
「我も攻撃特化で行くか。ドラゴンパワー・イグナイテッド!」
龍気に赤色の魔力を乗せていく。
黒い龍の鎧が赤色のオーラに包まれた。
「次は我からだ。龍槍連撃!」
間合いを詰め、重い斬撃を繰り出す
ギィン!ギィン!ギィン!全て金属の腕に阻まれ
「黒槍炎舞!」紅羽は更に黒く燃え上がる炎を乗せる
「解析…加速装置起動」
03の眼が無機質に光る。ゴオオ!肘の先から炎が吹き出し槍を躱しながら高速移動で紅羽の後ろに回り込み「むっ!急に!」ゴオオ!
「ヴォーパル・クラッシュ」
ドンッッ!加速した高速の拳が紅羽を直撃
「ぐあっ…」遺跡を薙ぎ倒しながら100メートル以上も吹き飛ばされる。ガガガガガ!ドンッ!
「ぐっ…重い」紅羽は瓦礫に埋もれながら、隙間から覗く空を見上げ「でも…楽しいな」刺激的な日常に感謝していた。
「追撃します」
03が駆ける
キュィィイイイン!右腕に魔力を溜めながら
―――
「アイ、ジェットだぞジェット!古代文明は宇宙にでも行こうとしていたのかね?」
「アキってああいうの好きよね。にしても行き過ぎた文明だけど、どうして今は存在していないのかしら」
「んー天罰でも起きたんじゃないか?」
「天罰になる条件は意外と多いわよね。聖女を殺しても天罰は起きるんでしょ?」
「そうそう、罰の規模によっては国なんて一夜にして無くなる。だからデブが聖女になる前に仕留めないとなー。でも大教会は霊山の麓。ロブ王国からだと…霊山を抜けてからじゃないと面倒だからもう少し後だな」
「もう一文字も合ってないじゃない。そんなに名前言いたくないのね。で?霊山には何かあるの?」
「んー…まぁな…それよりも少し離れるぞ」
―――
「寝てたら駄目か。よっと」
紅羽は起き上がり駆けてくる03を見据えながら赤、黒色の巨大な魔方陣を展開
タンッと飛び上がる03
右腕には白、青色の魔力が溢れている
「フォトンフラッドレーザー・ラピッドファイア」
バシュン!バシュン!バシュン!超位魔法フォトンフラッドを集束したレーザーを連射
「あ、やばたん…_っ来た!おいで、黒炎龍」
ギャオオオオ!50メートルを超す大きな黒い炎の龍がとぐろを巻き紅羽を守る。バシュン!バシュン!バシュン!
黒炎龍の身体半分位までは貫通するがそれ以上は貫通していない
「黒炎龍!ブレスだ!」
ギャオオオオオ!紅羽の声に応える様に龍の咆哮
03に向け口を開きゴオオオオ!黒いレーザーの様なブレスを放つ
「シールド展開、赤、黒」
03の前に赤黒いシールドが出現
ゴゴゴゴ!ぶつかり合う黒炎龍のブレス
パリン!ブレスが終わる間際に音を立てて砕けるシールド
「相殺確認。エネルギー残量…30%」
「行くか、黒炎龍」
隙を見て黒炎龍の頭に乗る紅羽
うねりを上げて天高く昇る
「やっぱり龍に乗ると…龍騎士って良いな」
しみじみと呟く紅羽は魔方陣を展開
赤、黒色の立体魔方陣が出現した
「超大な攻撃反応を確認…03が対応出来ない確率…71%…全エネルギー放出。エンペラー・クリムゾンのデータを送信します」
キュィィイイイン!ジェットエンジンから溢れる魔力の奔流
上空の紅羽に右腕を向ける
立体魔方陣が回転し、龍気を乗せた紅羽の魔法が完成する
「ふん、楽しかったぞ。これで終わりだ!黒炎双魔龍砲!」
紅羽の魔方陣から極太の黒いレーザーと
黒炎龍のレーザーブレス
2つが合わさり更に太く、太陽の光が隠れる程に太く巨大なレーザーが墜ちてくる
「送信完了。アブソリュート・カノン展開します。発射準備。出力最大」
ガパッと掌が開き砲身が現れる
尚もキュィィイイイン!魔力をかき集める右腕
「3」
青、白色の魔方陣が多数出現
「2」
全てが合わさり青白く輝く右腕
「1」
オーバーフローを起こし、プスプスと右腕から煙が上がるが尚も魔力をかき集める
「発射。アブソリュート・カノン」
ゴオオオオ!青白く輝く光の奔流が真上に放たれる
大気がギシギシと揺れる程のエネルギー
黒いレーザーと光の奔流が衝突
ドドドド!混ざり合う事の無い闇と光が轟音を立てて鬩ぎ合う
ドォフ!辺り一面に衝突した魔力波が放たれ遺跡の街を全て吹き飛ばす
闇と光が鬩ぎ合い、行き場の無いエネルギーは空中で円盤状に広がり
カッ!!やがて来る魔力暴発
ドオオオオン!天に蓋をした様な規模の大爆発が起きた
………
………光が晴れてきた
空中で仁王立ちをする紅羽、龍騎士の魔装はボロボロになり、辛うじて腕の部分が残っている。
黒炎龍の姿は無い
地上は綺麗な荒野が広がり、周りに見えていた人の姿も無い
中心には両膝を付き沈黙する03の姿
「終わり、か?」
紅羽は確認する為に03の近くに降り立つ
「……」
「魔力切れかな?最後の凄かったからな。……ん?」
03の胸元がカパッと開く。
「せん、滅、失敗。これより…自爆、装置…起どうしま…す」
ギュイイイイ!胸元に魔力が集まっていく。
「げっ!どうしよどうしよ!」
やがて03の胸元が点滅し出した。紅羽は悟る。これ我も吹き飛ぶ奴だと。
「…仕方ない…この技は使いたく無かったが…」
紅羽は目一杯息を吸い込む。
「アーキー!たーすけてー!」
これ以上小さくなりたくない!切実な想いがプライドを捨てさせた。
「はいよ。崩壊」
紅羽の助けを聞いたカナンは直ぐに準備していた魔法を発動。
胸元の点滅している部分に触れ、分子分解させる。
ガシャン。03は完全にエネルギーが切れ、倒れ付した。
「アキ、ありがとう」
「おう、身体が吹き飛んだら身長縮むもんな」
アイの左目にある紅羽の本体にある存在力は最低限の物。今の身体が全て吹き飛んだら幼女になってしまう。
「紅羽、お疲れ様」
アイも降り立ち魔力の切れた03を眺めている。
カナンもじっと03を眺めていた。
「アキ、この子欲しいの?」
「ああ、こいつを調べれば色々わかりそうだからな」
「もしかして…ダッチワイ「研究用ですよ!」…本当に?」
「勿論さ!」
爽やかに笑うカナンを怪しむアイと紅羽。
「怪しいわね」「怪しいな」
突き刺さる視線の中カナンはストレージに03をしまい、古代の兵士を手に入れた。




