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ロブ王国の遺跡へ

「アキ、もうすぐ昼よ」

「ん…んー、おはよう。なんか凄い寝た気がするなー…ん?紅羽、ディープスリープでも掛けてくれたのか?身体も凄いスッキリしているよ。……紅羽?」


『まぁ…そんな…所だ……うぅ…アイのバカ』

「何言ってるのよ。主犯は私じゃないわ。それに一線は越えていないじゃない」


「どうしたの?何でもない?…そうか」


 アイと紅羽がこそこそ話している。紅羽の様子がおかしいが、たまにある事なのであまり気にせずベッドから出る。少し浮わついた身体に違和感を感じながら、こんなにピッチリとパジャマ着てたっけ?なんかアレが少し痛いな…と思いながら着替える。アイはカナンの着替えをニコニコしながら眺めている。


「アイ、どうしたんだ?ご機嫌さんだな」

「ウフフ、そうなの。ご機嫌なの」

「そういえば夢の中でサティちゃんが居たんだけど、俺が寝た後来てないよね?」「来てないわよ」


「そうか…なら良いんだ…少し時間あるかな。今の内にパフェでも作るか」

『わーい!早く早く!』


 バーカウンターへ行き、目の前を飛び回る妖精をサッと捕まえ、気が散るのでアイに渡す。ブーブー文句を言っている妖精をスルーして材料を取り出し、パフェを作る。


「アキ、この後はどうするの?」

「どうしようかなー。デブーダ復活までは、まだ半月は時間があるから、それまでに出来る準備はしておきたいんだよ。今日は近くの遺跡に寄ってから、1度国に帰ろうかな…でもここから西に行けば霊山か…割りと近いからなあ」

『それならここら辺に依頼があるから宜しくー!』


 パフェでクリームまみれのリーリアが、ガバッと顔を上げて要件を告げ。カナンはなんかエロいなーと思いつつ小さいタオルを渡してやる。矢印が寄ってきたので食べるか?と差し出したが食べない様だ。


「はいよ。どんな奴?」

『なんか眠ってる兵士が魔力を吸い始めたから数年後には土地が枯れちゃうらしいよ』

「眠っている兵士か、昔のゴーレムか何かかな。まあ急ぎじゃ無さそうだし、行けば分かるか。地図買って遺跡の後だな」


 パフェを食べ終わり。宿を後にした。良い天気だなーと呟きながら、宿で聞いた地図が売っている雑貨屋に寄り、地図を購入。路地裏からシュタッと飛び立った。


「遺跡は東だなー。なあアイ、ほんとにサティちゃん来てない?なんか違和感があるんだよ」

『気のせいよ。最近寝不足だったから疲れてたのよ?』


 そんな訳無いじゃない。平然としているアイの心情を悟るのは困難なので、怪我してる訳じゃ無いから良いかと、記憶の片隅に追いやる。


 遺跡に向かってロブ王都から南東に向かう。街道に沿って小さな町を抜け、農耕地帯を抜けていく。春蒔き小麦が黄色く色付き始め、サーッという音が心地よい。パンの作り方を母さんに習おうかなー、と異世界でのお袋の味を思っていると、やがて草原の中にボロボロの建物がポツポツと見える地帯にやってきた。


「ここかなー。一応まだ発掘はしているんだな。発掘チームっぽいのが2.3組見える。おっ、なんかピラミッドみたいのあるな、行ってみよう」


 高さ30メートル程の四角錐に石が積み上がった場所に降り立った。ここには人は居らず、周りは雑草が生い茂る道がある程度。ピラミッドには入り口は無いのでただ石が積み上がっただけに見える。


「調べ尽くした場所か…でもピラミッドの中って気になるよなー。サーチ…」


 探索の魔法を発動。ピラミッドの中を調べてみる。しかし中に空洞らしき物は無い。そりゃ調べてるよなー、と空を見上げる。


「んー、結構広いからなあ…全部見るのは骨が折れるぞ…いや、全体にサーチを掛ければ良いか。それは最後にして、とりあえず空から見てみるか」


 その場で飛び立ち空から遺跡を眺める。円形に遺跡が並び、東西南北に1つずつピラミッドがある。カナンが居る位置は西のピラミッド。魔方陣みたいだなーと思いつつ遺跡の中心へ。


「あ、石碑…やっぱり魔方陣の角か。えーっと、書いてある内容は一緒だな。栄光の民がなんたらって…これ貰っちゃ駄目かな?」


 中心には湖に沈んでいた石碑と同タイプの物。術式は上手く隠蔽されており、ただのオブジェにしか見えない。カナンは周りを見て、誰も居ないのを確認。石碑をストレージにしまう。


「となるとこの街の形は増幅魔方陣か何かだなー。大規模な計画だこと」


 目的を達したカナンは石碑があった場所を地図に記入。分度器と定規で線を引いて、中心を割り出した。


「ん?この場所って…あれ?」

『アキ、どうしたの?』

「いや…思い違いかも知れないけど…ここって俺が死んだ場所かなって」

『邪神が出た場所ね』

「そう、だとすると…合点がいく…か?」

『何か分かった?』

「ああ、あんなやべえ邪神が顕現する為には、200年前の邪の魔王が弱すぎなんだよ。それこそ成体の魔王でも足りないくらいだと思う。だとしたら、この石碑は召喚魔方陣の一部か?邪の魔王とダークマターが最後の生贄になったとしたら納得が出来る」

『確か邪の魔王が居た国は、古代から続いていたのよね?』


 カナンは勇者の物語を思い出す。

 かつて古から栄華を誇った国の王。その王は世界を手にする為。進化の秘術に手を伸ばした。


「そう、こりゃ全ての石碑を回収しないと駄目だな…この推測が本当なら…邪神は、混沌の神と同じ次元か、似た次元から来たのか……はぁ…来なきゃ良かった」


『石碑を全部集めて、中心で発動すれば良いのね』

「やめろ、フラグを立てようとするな」


 重い、重いため息が洩れる。知ってしまった以上は行動しないと気が済まない。やる事が増えたなー…と遠い目で空を見上げた。


 少し軽食を食べて一休み。パフェパフェとうるさい妖精を相手しながら取り残しが無い様に、遺跡全体にサーチを掛けていく。


「そういえば、依頼の魔物って何処にいるの?」

『ん?下だよ?だからここに居るんじゃないの?』

「下…まあ薄々感じてたけどやっぱりここなのか…あっ確かに下に何かあるわ」


 地下に空洞があり、サーチの魔力が吸われる感覚がある。


「古代の兵士って強そうね」

「どうだろうなー。ピンキリだけど前世で闘ったのはそんなに強く無かったぞ」

「じゃ、じゃあ直ぐに終わりそうだな」

「紅羽、やっと出てきたのね」「なんとか落ち着いた…多分」


「で、どうすれば良いんだ?上空から一撃入れれば良いかな?でも遺跡ぶっ壊しちゃうよな」

「アキ、あれやりたい。サティさんが使ってた波動砲」

「あー我も、あれ格好良かった」


「四元波動砲か、範囲は狭いけど地下まで貫通するから、遺跡もそんなに傷付かないし効率的か。腕だけチャリオットにすれば出来るな。3人でやるかー」

『じゃあ私は石の中で観てるねー。宜しくー!』


 リーリアが石の中に行き、3人は上空へ。カナンは腕だけ魔装を展開し、右腕に砲身が出現。アイと紅羽はカナンの肩に手を置いた。カナンは緑と黄色。アイは青色、紅羽は赤色を担当。魔力を溜めていく。


「アキ、なんかロッ◯マンみたいね」「ちょっ、それ言わないで、むしろアイの方が似合うぞ。青色だし」

「じゃあ我はブルー◯か?」「それも言わないで。アイ、紅羽に偏った知識を教えないでよ」

「一応我も観れるぞ。アキの記憶」「え?そうなの?」

「我の本体はアイの左目にあるからな。音は聞こえないけど映像なら観れる」

「へえーそうなんだ。あっ、そろそろ撃つぞー」

「「はーい」」


 砲身を空洞のあった場所に合わせる。周りに人は居ない。結構離れているので大丈夫と確認。


「「「四元波動砲!」」」


 大気を震わす四色の極太レーザー

 遅れてゴオオオ!轟音が鳴り響き

 ゴゴゴゴ!レーザーが地上を貫き地下を貫く


 周囲が四色に染まり、やがてレーザーが集束。


 地上には20メートル程の深い深い穴が空いており、底は全く見えない。


「うーん。まだ居るな。出てくるか」「もうすぐ来るわね」「誰が行く?」


「じゃんけんで」「はーい」「わかった」


「「「じゃーんけーんぽん!」」」「「「あいこでしょ」」」


「よし。我の勝ちだな」

「頑張ってなー」「アキ、観戦しましょ」


 紅羽は鼻歌を歌いながら地上に降り立ち、カナンとアイは少し離れた所で観戦。


 少し待つと、穴の横から円柱の筒が何本か飛び出てきた。側面には扉が付いている。どうやら魔導エレベーターの様だ。扉が開き、カシャンカシャンと出てきた、命を感じない騎士の格好をした人型。

 中にはボロボロの騎士の姿もある。波動砲の効果はあった様だ。


「アキ、そういえば紅羽の闘う出番無かったわね」

「そういえばそうだなー。だから紅羽は張り切っているのか」


 騎士達に囲まれていながらに獰猛な笑みを浮かべる紅羽は。


「よし、暴れよ」


 もう闘うことしか考えていない。

 人間にとって大事な遺跡は、本日無くなりそうだ。

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