ロブ王国へ
次の日、帝国の南にあるというロブ王国を目指す事になった。渋られたがサティは帝都に置いていく予定なので、カナンは帝都に入らず西にあるクヴァルの町へ行く。
「秋ちゃん、これ私だと思って」「ありがとう。大事にするよ」
サティからパンツを受け取り、予定の話をする。ロブ王国は南にあるという話だが、行った事が無いので距離が分からない。急ぎでは無いのでゆっくり行く予定だ。
「そうだ、サティちゃんに謝らなければならない事があったんだ」「なあに?」
「邪神と消えた時、御守りに…サティちゃんのファーホエールのパンツを持ったまま消えちゃったんだ…ごめんな、パンツ一個駄目にしちゃって」
「パンツも本望だと思う。むしろ秋ちゃんと一緒に消えれるなんて羨ましいパンツ」
私も連れていって欲しかったな…そう言い残したサティと別れ、カナンは南に向かう。地図を確認、ファー王国で買った地図はあまり役に立たなかったので、上空から街道に沿って進む。
「帝国って言うだけあるなー。国土が広い。一定の距離に村や宿場町があるから取り残される村とかも少ないんだろうな。しっかりしてる」
『紅羽ー!牛さんだよー!おっぱいデカイねー!』
『そうだな、リーリア。乳を見ながら言わないでくれ』
『私も巨乳になりたい!ちょっと分けてよ!』
帝国とファー王国の距離以上は進んでいる。大きな街を通過するが、特に面白そうな雰囲気は無かったので先に進み、途中で1000メートル程の山の頂上に湖を発見。降り立って休憩する事にした。
「頂上に湖があるって事は、昔に噴火でもしたのかな?」
「多分そうじゃない?水が澄んでいるわね。魚は余り居ないみたいだけど」
「人が居ないから良いな」
『あっ、精霊が居るよー!…ずっと昔に噴火して、火口に水が溜まったんだって!おっきな水溜まりだね!』
木々に囲まれた少し緑掛かった湖。広さは直径300メートル程の丸い形。湖の畔で軽食を食べながらゆっくりする。
「あー、このまま寝たいなー。でも湖の底って何かありそうでワクワクするよなー」
「調べてみようか?」「宜しく」
アイが湖に手を入れて魔力を通す。ソナーの様に波を打ち込み探索。一応魔力が届く範囲なら水の中も見る事が出来るらしい。
「んー、特に無いわねえ。…あら?」
「何かあった?」「像みたいのはあるわね。御神体か何かかしら?」
「気になって来たなー。リーリア、精霊は何か知らないか?」
『んー?そうだね…昔人間が沈めていったらしいよ。何かは知らないけど』
「アイ、宜しく」「はーい」
アイが魔力を込めると、ザザザザと湖の水が割れ、底を歩けるようになった。カナンとアイが中心まで向かう。リーリアと紅羽は眠いなー。と言いながらゴロゴロしていたので着いてきてはいない。やがて湖の中心までやってきた。
「なんだこれ?石碑?変な材質だな」「読めないねー」
「古代文字がー。ここで翻訳しとくか、下手に動かすと駄目な奴かもしれないし」
古代文字の翻訳ノートを取り出し。解読していく。アイは辺りを見渡し、魚居ないなー、あっ!亀さんだー!と盛り上がっていた。
「へえ」「読めた?」
「ああ、神が世界を支配する時代は終わった。これからは我ら栄光の民が世界を手にする。…神と人が戦っていた時代の物かな?しかもこれ魔方陣の角の役割だ」
「かど?」
「そうそう、一番簡単な魔方陣が六芒星の魔方陣なんだけど、その角のどれかだよ」
「じゃあ同じのがあと5個あるの?」
「多分なー。術式は簡単だけど、大陸を埋める程の超巨大魔方陣だった場合、神ぐらいなら殺せるし、世界も壊せる。でも起動した様子は無いから失敗したんだな。理論上は出来るけど魔力が足りないし」
「中心に何かありそうね」「やめて!やる事増えるから言わないで!」
「…でもこれは凄く面白いから回収しよう。細かい術式とか理論が詰まっている」
「嬉しそうね」
「そりゃあな。これで強くなれたら儲け物だろ?」
「ウフフ、そうね」
石碑を回収して湖の畔へ戻る。リーリアと紅羽はお昼寝中な様だ。リーリアが紅羽の胸に挟まれ、うなされていた。
「羨ましい」「目覚めのチューしないの?」
「不意討ちすると怒るからな…膝枕なら良いか。眺めも良いし」
カナンが紅羽を膝枕で寝かせ、頭を撫でながら小声で雑談。眺めって湖?おっぱい?勿論両方さ。等と話していく。途中でうなされていたリーリアが起床。雑談に参加する。
『アキー、新作デザート何か無い?』
「アキ、今度プァフェって奴食べてみたい」
「パフェな、了解。材料はなんとかなるかなー」
「『やったー!』」
「ん…んぅ…あ、寝てしまった…か…」
「おはよう、紅羽」
「ファッ!」
リーリアとアイの喜びの声で目が覚めた紅羽。予想した通り顔が赤くなり、あたふたする様子をアイとリーリアがくくくっと笑う。
「さて、休憩は終わり。行くぞー」
「「『はーい』」」
湖を飛び立ち、南へ。やがて関所の様な物を過ぎると、一定の距離にあった町などは無くなり、最初の街を越えたらまばらに点在する地域に入った。
「恐らくここがロブ王国だな」
「なんか活気はすくないね」
「グリーダが居る国だ。重税、貧富の差、奴隷、これは外せない」
「やっぱりな定番ね」
「昔のファー王国も、王族、貴族は贅沢三昧。国の名産が多かったからそこまで貧富の差は無かったけど…税金も割りと重かったからな。きっとここもそうだろ」
町や村は帝国に比べて質が劣っている。最初の街は活気があった。恐らく国境の街だけ活気があり、国力があると思わせているのだろう。
「王都は国の中心かな?」
更に進む。町や村がまばらな地域が終わり整備された街道が目立ってきた。そして見えてくる街。
「ん?真ん中が王都かな?城があるし」
『街が四方にあるのは意味があるのかしら?』
「んー、なんだろうな」
王都と思われる都の、東西南北に街がある。良く見ると工業中心の街、商業中心の街、魔法関係中心の街、騎士関係中心の街に別れている。中心の王都は総合的な分野なのだろうか?
カナンは頭を傾げ、極端な所だな…こういう発想って転移者が関わってるのかな?と疑問に思う。
「まあ、四方の街に用は無いから王都に行こう」
『知らない街ってワクワクするわね』
「迷子になるから勝手に出歩かないように」
『『『…はーい』』』
「何だその間は…勝手に出歩くのはやめろよ、本当にやめろよ」
『振りね』『振りだな』『気を付けるね』
観光で頭がいっぱいの住人達に。下見だから変な事しないでね…カナンは1人で情報集めるかーと諦めた。