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日常へ

 次の日になり、休日が終わり平日が始まった。慣れた筋肉痛の痛みを感じながら朝食とお弁当を作り、家を出る時間までリビングでボーッとする。そこへ珍しく父がやってきた。


「おはよう父さん」「おはよう、カナン」

「いつもより遅いけど大丈夫?」

「ああ、今日は仕入れが少ないからね。ゆっくり起きたんだよ」

「たまにはそういう日も良いよね。そうだ、お願いしたい事あるんだけど」

「なんだ?」「ここら辺で家とか部屋って借りられる?別に買うでも良いんだけど」

「んー。多分あるけど、家を出るのか?」

「いや、茜ちゃんの家だよ。いつまでも宿だと困るでしょ?」

「あーそうだな。知り合いに頼んでみるよ」

「よろしくね。お金はあるから」

「いつの間にか宝石商なんてやってるもんな。最初はビックリしたぞ」

「皆に迷惑かけない程度には上手くやってるから安心して。じゃあ行くね」


 商業登録は10歳から出来る。カナンは使いきれない宝石を少しずつ流すルートを開拓。王女関係がメインなのだが、中々仕入れられない純度の高い宝石や貴重な宝石を扱う宝石商としてじわじわと人気になっている。魔導具技師の免許が取れれば魔法を付与したアクセサリーも販売する予定だ。


 因みにアイと紅羽がディーラーとして活動。普通に王城を出入りしているのでファンが多い。貴族の子弟に毎回の様に求婚を受ける程だ。男とは取引しない。カナンが構ってくれない時、又は気分が乗らないと卸さないので仲介役の王女は苦労している様だ。


「そういえば紅羽、王女に会ったんだよな。どうだった?」

『んー、乳は揉まれたが普通に挨拶したぞ』

「それは普通なのか?まあ、仲良くやってるなら良いんだけど」

『仲は良いかな。あとティナが我らの指輪を血走った目で凝視していたぞ』

「欲しい気持ちは分かるが、王女が左手薬指に指輪なんてしていたら問題だろ」


 この世界の結婚指輪も左手薬指だ。有名な転移者が広めたらしい。結婚式は貴族達には人気だが、平民には定着していない。生きるのに精一杯の人が多く、お金が無いし、幸せを見せびらかす様な事をすると、人々の神経を逆撫でするのでトラブルしか無いからだ。一般的には家族同士でご飯を食べて終了する。


 雑談しながら学校へ到着。アイとリーリアは夜更かししていた様で今起きた。


「おはよーモリー」「おはようカナン。闘技大会どうだった?」

「まあまあだったよ。意外と楽しめたかな」

「へえー優勝はしてないの?」

「ああ、途中でバックレたんだよ。貴族がうるさいからねえ」

「そっかあ、無事帰ってきて何よりだね」


 全くだ。と笑い合うカナンとモリー。カナンはそういえばと闘技大会の実況だったウザい人を思い出す。予想が当たっていたら面白いなーと思いながらも、凄く気になっていた事を聞いてみる事にした。


「そういえばモリーの姉ちゃんって帝国に居たよな。ラリーさんだっけ?」

「そうだね。ラリー姉ちゃんは私ビッグになるんだ!って言って、5年くらい前に出ていったかなー。たまに手紙は来るけどね」

「そっか、青い髪でスレンダーなブライト兄さんのストーカーになりそうなウザい人なら見たぞ」

「それ姉ちゃんだね。元気にしてた?」

「おう、元気にしてたぞ。顔見知り程度にはなったからな。もし帰って来る事があったら教えてくれ」

「そうなんだ。帰って来たら教えるね。飽き性だから何か嫌な事があったら直ぐ帰って来そうだけど」


 遠い目をしたモリー。あのウザさ…苦労したんだな。あー…わかる?という会話をしながら授業が終わる。


「カナン、合同課外授業だけど明後日だからね。なんか貴族の学校とも合同になりそうだって先生が言ってたよ」

「へえー。多分魔法科と騎士科が被害受けるんだな。可哀想に」

「そうだね。薬草学科は貴族の学校にもあるし、最初は挨拶があるとしても、基本は二人一組の行動だから平和だよ」

「行かなきゃ駄目?」「僕が一人になるから駄目」


 問答をしていると、校門の前で見た事のある人影を見付けたので、その場でモリーと別れ、校門に立っている人物に向かう。


「秋ちゃん。来ちゃった」

「やあ、サティちゃん。少し歩こうか。校内に入らなかったのは偉いね」「我慢した」


 校門前に色気のあるエルフは刺激が強く目立つので、少し移動。歩きながら東区を目指す。


「秋ちゃん。収納の魔導具持ってる?実家の荷物多くて」

「あるぞ、ほいっ。ファナエルにはバレた?」

「ありがとう。勿論バレたよ。食べたら承知しないんだから!だって。恥ずかしいのか顔赤くして可愛かったわ」

「ははっ元気そうだな。いっそのこと目の前で食べてやろうかな……サティちゃん、俺の肩にサティちゃんの指が食い込んでいるんだ。その指を外してくれると嬉しいな」


 食い込んだ指を外して貰い、並んで歩く。お泊まりしたい。駄目。お泊まりしたい。駄目、と繰り返しながら東区の宿に到着。


「ちゃんとここに泊まるんだよ。夜這いしちゃ駄目だよ」

「秋ちゃんに嫌われたくないから我慢する。秋ちゃん…夜、待ってるね」

「襲われるから行きません」「えー」


 宿の受付を済ませていると、茜が入ってきた。茜も同じ宿。袋を両手に持っている。買い物帰りの様だ。


「あっ、カナン君と……剣聖さん?」

「おー茜ちゃん。しばらくこの宿にサティちゃんが泊まるから宜しく」

「よろしく、茜」

「あ、どうも。よろしくお願いします…でもなんで?」

「あー、それは「私達結婚したの、祝って」…サティちゃん割り込んじゃ駄目だよ」

「…は?うそ、結婚?おめでとうございます?」

「サティちゃん、実家で荷物纏めてきな。茜ちゃんと仲良くね」「わかった」


 混乱している茜を放置。受付が終了したので、茜ちゃんコミュ力高いからなんとかなるだろうと、茜にサティを任せカナンは宿を出て、家に帰る。そのまま部屋へ。


『アキ、ごめんね』『アキ、ごめんな』『ごめんねー、アキー!』

「え?どうしたの?」

『私達…鼻くそ出ないのよ』『アキの趣味…1つ奪っちゃったな』『ほじったけど出なかったよー!』


「いや、趣味じゃないし。集めて無いから」

『『『_えっ!?』』』


「驚く事じゃないだろ」

『だって変態だから』『変態だもんな』『変態だねー!』


「いや……」


 ストライクゾーンが広いだけだよ。その呟きの返事は無く、虚しく部屋に響いた。







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