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覚醒

 丁度昼過ぎになり、オードと待ち合わせした場所に着いたカナン。オードと茜は既に到着していた様で、二人で座り雑談していた。


「お待たせー」

「あっカナン。凄い光が空に飛んで行ったけど、大丈夫だったのか?」

「凄かったね、剣聖さん」

「あー、大丈夫だったよ。ちょっと用事済ませてたんだ。帰ろうか」


 フライで飛んで王国を目指す。どっちが勝ったの?真っ向勝負してないから引き分けかなー等、雑談しながら王国に到着。王都に二人を置いて、西にある精霊の森に降り立った。


『皆いらっしゃい!』

「やあ、リーリア」「こんにちは、リーリア」「リーリア、いつも元気だな」


 アイと紅羽も出てきて森の家の中に入る。精霊の矢印をつんつんしながら椅子に座り、闘技大会の話をしていた時に何か考えていたリーリアが切り出した。


『ねえ、アキ。最近気付いた事があるんだ』

「ん?どうしたリーリア」

『私…出番が少ないの!』

「まあ、森に引きこもっているからな」

『それはアキが私を連れて行ってくれなかったからだよ!』

「あら、そうなの?」

『昔駄目って言われたの…アイー、出番欲しいよー!』

「じゃあ、私の家に住む?」『いいの!?』

「ええ、でも入るにはアキとエンゲージしなきゃいけないけど……『アキ!私と結婚して!』」


 駄々をこねるリーリアを見て、カナンは微笑ましく思うが結婚は出来れば回避したい。了承したら他の精霊まで来そうだからだ。


「えー」『ピチピチの妖精だよ!嬉しいでしょ!』

「絶対大人しくしないだろ」『するもん!』

「その前に、アイと紅羽に契約してもらえば良いんじゃないか?多分魔力繋ぐだけなんだから」

「そうなの?」「そうだよ、リーリアもほとんど魔力の身体だからな。アイと紅羽の魔力をリーリアが取り込めば大丈夫な筈だぞ」


 すると急にもじもじするリーリア。頬を染めて胸の前に手を組み、アイと紅羽を交互に見る。


『アイ…紅羽…私…初めてだから…宜しくね』

「ええ、優しく入れるから安心して。さあ、力を抜いて」「リーリア、天井の染みを数えている間に終わるから…痛く…しないからな」


「おい、悪ふざけするな。しかも紅羽、今時のおっさんでもそんな事言わないぞ」


 どうやら無事魔力を取り込めた様で、3人で石の中に入って行った。キャイキャイ話し声が聞こえるが、最近慣れてきたのであまり気にならなくなっていた。


『アキー、凄いよここ!』「はいはい」

『プリンいっぱいあるー!』「良かったな」

『矢印も来たいって!』「アイに聞いてみて」

『ん?何?誰か来た?』「サティちゃんかな?」

『矢印が見てくるって』「サティちゃんだったら案内宜しくー」


 ふよふよと矢印が窓から出て、森の入口まで飛んで行った。


『そういえばアキ、サティさんには秋だって伝えるの?』

「そうだな、一応伝えとくかー。でもなんかサティちゃんを見て思い出しそうな事があったんだよなー」

『思い出しそうな事?』


「ああ、サティちゃん目が青かったんだよ。普通エルフは髪と目が緑だし、前世のサティちゃんは目が緑だった。ハイエルフになったとしたら色が濃くなるから違うし…」

『昔エルフの特性が書いてある本読んで無かった?その時アキが構ってくれなかったから寂しかったなー』

「本……あっ!…え?…覚醒、したのか?だとしてもよく生きてたな…」

『覚醒すると死ぬの?』


「覚醒自体では死なない。自分で命を絶つんだよ。本に書いてあったのは確か……エルフの女性が一途に誰かに恋をして想いを募らせると、徐々に魔力が変質していく。そして何か衝撃的な悲しい出来事、例えば愛した者が死んだり、居なくなると、徐々に瞳が悲しみの青に染まる。でも不思議と子供を産んだ後や、結婚して死別したら覚醒はしない。ほとんどのエルフは瞳が染まる前に命を絶つ、かな」

『…そう。凄いのね…サティさん。でも何故覚醒なんて言うの?』


「それは変質した魔力が作用して、身体能力が上がり、強くなるんだよ。そして100年以上悲しみに耐えたエルフは次のステージへ行く。あと…過去に何例かあるんだが…もし居なくなった好きな人が目の前に現れた場合、厄介な事が起きる…」

『厄介?』

「それが…」コンコン。


「ん?サティちゃんかな?はーい。開けて良いよ」

「お邪魔します。…凄いね、本や薬でいっぱい」


 ゆっくりと扉を開けてサティが入ってきた。時空の衣は着ていない。安定のメガネに白色の秋の普段着と靴、武器は大剣では無くショートソードを腰に付けていた。


「どうだった?妹は」

「お陰様で元気になった。ありがとう、カナン」

「そりゃ良かった」


 サティは余程嬉しかったのだろう。安定のメガネをしながらでも微笑んでいた。カナンはサティを椅子に案内し。二人で向かい合い見詰め合った。


「「……」」

「「……」」


「「…あの」」「「あ、どうぞどうぞ」」

(なんだこれ、お見合いかよ)

「カナン。聞きたい事がある」

「俺は伝えたい事があるけど、お先にどうぞ」



「ありがとう。あの、秋って人…知ってる?」

「おう、そりゃあな「やっぱり知ってるのね。師匠じゃないとなると…お父さんなの?」

「なんでだよ、んな訳ねえ「え?髪が茶色いからそうだと思ったのに…じゃあ彼は…何処に居るの?」


「ああ、まず落ち着いて。その前に…藤島秋は200年と少し前に邪神を道連れにしてもう死んでるぞ「嘘!」嘘じゃない。その証拠に当時持っていた荷物が周辺に散乱したんだろ?」

「散乱したけど…それは秋ちゃんが…私達が弱いから見限って荷物を捨てて出ていったってイリちゃんが…」


「それは多分嘘だろ。ストレージに入れていた荷物は、死んだら周辺に散乱するんだ。まあイリアの事だから死んだって聞いたら…サティちゃんが自殺すると思って言えなかったんじゃねえか?」


「じゃあ…じゃあ…私は…私は」


 何の為に生きていた。カナンの言動の変化にも気付かず、茫然と虚空を見詰めるサティはゆっくりとショートソードに手を伸ばす。


「でもな、死ぬ間際に藤島秋は願ったんだよ」

「……願い?」

「来世では自由に生きたいってな」

「らい、せ?」

「ああ、藤島秋は転生して生まれ変わったんだ。サティちゃんの目の前に居る、カナン=ミラとしてな」


「………え?あき、ちゃん?」

「そうだよ。サティちゃん」

「ほん、とう?」「本当」


「……無の日「綿パン」火「クリーンラットのパンツ、たまにファイアーラット」水「シルクのパンツ、青色か水玉」風「ソフトプラムツリーの繊維パンツ」土「スリーピングシープのパンツ」…や、闇「黒のレースにガーターベルト」…秋ちゃん…光の日は「白パンティ」…じゃあ…今日のパンツは…「エンシェント・タランチュラのパンツ、俺がプレゼントしたパンツを気に入ってくれたよな」」


「ああ…この変態具合…秋ちゃんだ…秋ちゃんだ秋ちゃんだ秋ちゃんだ」

「お、おう。久しぶりだな、サティちゃん」


 サティが駆け寄って来たのでカナンは再開の抱擁だな、と腕を広げて待つ。


「秋ちゃん!迅雷!」

 ブオオ!「うひゃ!危ねえ!何すんの!?普通ギュッてするでしょ!」


 サティは掌底を躱され首を傾げている。カナンは急な攻撃にビビって後退る。


「どうして避けるの?」「どうしてがどうしてだよ!」


「だってそこにベッドがあるでしょ?押し倒して襲おうとしただけよ」

「さらっと怖い事言うなよ!何で襲うの!?」

「何でって、秋ちゃんの事が大好きだからに決まっているでしょ?」

「へ?」


 何当たり前の事聞いているのよ。知らなかったんですけど。照れ隠しはいいのよ。目で会話を試みたがやはりサティはブレない。


「_っ!ヤバい!覚醒したのは俺が死んだからか!」

「ふふふ。会いたかった、ずっと会いたかったよ秋ちゃん。だから…」


「なんてこった…覚醒してから、居なくなった好きな人が現れたら覚醒エルフは…」


「早くエッチしよ?」


「すげーエロくなる…この世界の男が1度は憧れると言われる…別名、覚醒エロフ」


「…違うよ」「え?何が?」


「イリちゃんが言ってたの。100年ぐらい耐えた覚醒エルフは進化するって」

「ま、まさか」

「そうなの。私は進化したの」


「だから、おっぱいがデカくなっていたのか…」


 舌舐めずりをしてにじり寄って来るサティに恐怖するカナン。まだ子供なんです。じゃあ成長も楽しめるね。睨み合ってもやはり駄目な様だ。


「ふふふ。そうなの。1000年生きたエルフはハイエルフに進化して、更に悠久の時を過ごすと進化をする。だけどハイエルフにならなくても進化する方法があるの。覚醒に100年耐える、そしたら進化出来るのよ?」


「でもその場合副作用がある筈だ」

「そうなの、秋ちゃんが好きで好きで好きで好きで好きで好きで堪らないの。安定のメガネをしていないと直ぐに死にたくなるぐらい」


「まじかよ…道理であんなに強い訳だ…神の領域に足が届くと言われる伝説のアルティメット・エルフ…でも…副作用は確か…狂った愛…別名アルティメット・エロフ」


「秋ちゃん…早く愛し合いましょ?」


「ああ…やべえ…殺される」


 アイ様、紅羽様。お助け下さい。カナンのマジな祈りは、ずっと無視されている。

石の中にて


『ねえ、アイ、紅羽。感動の再会の筈なのにアキがキモくて全く泣けない』

「ええ、ゼロタイムでパンツサイクル言えるなんてキモイわね」

「我らのは把握していないみたいだぞ」

「それはそれで許せないわね。なんか助けを求める声が聞こえるけど、しばらく様子を見ましょうか」

『でもアキが襲われたらどうするの?』

「「もちろん参加する」」

『あ、はい』

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