カナン対剣聖2
「カナン、このメガネは秋ちゃんが星空を観ながらよく掛けていたの、あの眼差しは何を考えてるんだろうって思って聞いてみたら、サティちゃんの事考えてたんだよって言ってくれたのよ。みじん斬り!「_っ千斬り!」ガガガガ!このローブは休憩時間に急に居なくなった秋ちゃんが終わる時間にフラッと帰ってきた時によく着ていたの、少し足を引き摺っていたから何してたのって聞いたら秋ちゃんが前のめりに倒れそうになったから支えたらぎゅって抱き締めてくれた。乱斬り!「_ちょっ!賽の目斬り!」ギンギンギン!この服は秋ちゃんがいつも着ていたの、曜日によって色を変えててね、ずっと綺麗なままだし良い匂いがするの、秋ちゃんの匂い…私も秋ちゃんの服に合わせて下着を…いやカナンには早いわね。滅多斬り!「_待っ!五月雨斬り!」ギィンギィンギギギ!」
『サティエル様の猛攻!カナン選手は後退りながら技が後手に回っているぞ!これはサティエル様が有利か!』
何かスイッチが入った様に無表情で喋り続け、攻撃を繰り出す剣聖に、カナンは顔を引きつらせ後退る。
「それにね、秋ちゃん「ちょっと待て!」…何?」
「少し…落ち着こう…剣聖(なんだ…何を喋っている!?…早口過ぎてよくわかんねえ!)」
「落ち着いている。師匠から聞いている筈。彼がどれだけ強かったか」
「いや、おっさんからは聞いてねえよ(自分で聞くとか恥ずかしいだろ)」
「…そう…クロスブレイク!」
少し残念そうな無表情で
交差する強烈な斬擊を繰り出し
「霞み十字!」ギンッギンッ!
素早い動きで迎撃するカナン
少し考える様な素振りを見せる剣聖は微笑を浮かべ
「だったら…教えてあげる。フルフラット!」
半円状に横断する斬擊を飛ばし
「おっ?ぶった斬り!」
ドンッ!カナンが叩き落とした隙に距離を取る剣聖
「この指輪は秋ちゃんがいつも嵌めていたの、私はそれを見ていつも思っていた。何だろう、恋人かな、気になるな、知りたいな、だけど勇気が無くて聞けなかった。でもね、嵌めてみて分かったの」
剣聖が何かぶつぶつ言いながら指に嵌めていた指輪を抜き取る
「なんだ…呪文か?魔法まで使える様になったのか!?」
この剣技に魔法まで使うなんて相当な努力をしたに違いない。死線を乗り越えて来た空気を感じ、カナンは身構える。
「誰も気付かなかった…秋ちゃんの強さ」
ゴオオオ!溢れ出る力の奔流
渦を巻く様に赤、青、黄、緑と色を変え、混ざり、絡み合いながら立ち昇る
『なんて力強い光!格好良いです!剣聖様ー!!』
「ははっ、ほんと、強くなったよな(俺は役立たず、サティちゃんはお飾り護衛だったっけ…頑張ったなサティちゃん)」
「秋ちゃんは私より…遥かに強いよ。エレメントソード」
剣聖の大剣が赤、青、黄、緑色の四色に輝く
「全力でおいで、サティちゃん。全部受け止めてやるよ」
そのメガネに頼らなければいけない程の、その気持ちも…呟くカナンは右手の封印の指輪を全て抜きとり、1対の刺身包丁を取り出し七色に輝かせ、剣聖に優しい笑顔を向ける
『あれは!剣聖の称号を会得した際に行使した伝説の魔法剣!エレメントソード!初めて見ました!感動です!カナン選手は二刀流!…え?なんですかその高そうな武器!くださーい!』
「縮地」
剣聖が一歩踏み出しカナンの眼前に移動
「グランドクロス・ハンドレッド!」
四元素の力で超加速した速く鋭く重い無数の斬擊
「すげえ!参式!四煌の連擊!」
両手に持った包丁で超加速した斬擊
ガガガガ!ひたすら弾く弾く弾く
『なんですかこの闘い…全く見えないんですけど…』
「爆雷奔烈!」バチバチッ!「_うお!白羅防陣!」ガッ!
赤い雷による爆撃を防御
ボンッ!両者闘技台端まで吹き飛ばされる
背中を打ち付け肺の空気を洩らしながら、フラフラと立ちあがり、闘技台の両端から見詰め合うカナンと剣聖
「くっ…カナン、その武器…やっぱり秋ちゃんに憧れてるんじゃない」
「いてて、サティちゃん強すぎないか?こんなの魔法無しのアイと紅羽を二人同時に相手出来るぞ」
「羨ましい…私、料理出来ないから上手く使えなかった…」
ゴゴゴゴ…剣聖の魔力が増大していく
「あ、なんか嫌な予感」
「でも…秋ちゃんと師匠が喧嘩した時に、師匠がこれ死ぬかもって思ったヤツがあるんだ」
剣聖が手を上に掲げる。赤、青、黄、緑の魔方陣が出現
魔方陣が重なり合う
「あのサティちゃんが複合魔方陣を!」
「私…頑張ったんだよ。秋ちゃん…何処かで見ててくれてるかな」
魔方陣が輝き、剣聖の身体が浮き上がる。四色の光を纏う姿は神々しくも何か1つ抜けている様な儚い光
「…え?あれは俺が作った…ははっ、おっさん、なんてもん教えてんだよ!」
ドオオン!と重厚な音を響かせて降り立ち闘技台にそびえ立つ、全高10メートルの巨大なフルプレートメイル。その鈍く輝く鉄色は、どんな攻撃も弾く分厚い装甲。四色の巨大な大剣を持つ様は。神話で語られる様な神の騎士。
「対真龍王専用ロマン魔装…」
脚の側面の無数の穴、靴の部分にはキャタピラーがギュルギュルと音をたてて唸っている。
「重戦車。全ての能力が使えるなら魔王を軽く超えるぞ」
「秋ちゃんの魔装…秋ちゃんが私を守ってくれる」
ドオフッ!脚の側面にある穴から蒸気が音を立てて噴き出した
「本業に戻るしかねえか」
左手に嵌まっている封印の指輪を全て抜き取った
石の中にて
「なあ、アイ…我はサティちゃんと仲良くなれるか不安になってきたぞ…」
「ウフフ、あれは安定のメガネの効果じゃない?羞恥心とかも薄れるし。普段のサティさんは優しくて恥ずかしがりやな女性よ」
「その性格でよく戦士なんてやってたな」
「ああ、昨日夜中にこっそりアキにチューして記憶を読み取ったんだけど「何故我も呼ばない!」あ、ごめん。妹は天才魔法使いと言われてて、当時聖女の護衛として召集を受けた時に、姉と一緒じゃないと行かない!って豪語してね。治療院の看護師見習いだったサティさんが無理矢理召集されたのよ」
「うわ、妹は色々こじらせてそうだな」
「そうね、最初アキは共感出来て優しいサティさんに惹かれてたんだけど、妹が姉に近付いたら殺すって脅してね…それで気持ちがすれ違っちゃったの」
「ああ、サティちゃん応援したくなって来た」
「でしょ?」