カナン対剣聖
「たっだいまー!」
「おう、おかえり」「「「……」」」
「ん?みんなどしたの?」
鼻歌をフンフン歌いながら戻ったカナンを待ち受けたのは、引きつった顔のオードと、ドン引きした他3名の姿。茜ちゃんは超位使えるからこっち側の人間だよーというカナンの言葉はスルーされた。
「ねえ兄さん。ラリーさんにブライト兄さん紹介したら良い感じのストーカーになると思うんだけど、どうかな?」
「その発想は現実になりそうだからやめてくれ。ブライト兄ちゃんはやっとウルカさんと付き合えたんだから、そっとしといて」
「そっか、残念」
『いやー凄かったですねー!次の試合はちょっと待ってくださいねー!闘技台が大丈夫か調査してからになりますよー!なのでさっきの続き!2曲目!【カップル見ると殺意が浮かぶ!】いっくよー!』
「おっ、聴きたかったんだよ」
「あ、あのカナン君いいかしら?」
「ん?なんだい姫さん」
「銀色の魔法って何?初めて見たんだけど…」
オードもそういえば知らないなーとカナンを見る。みんな気になる様でカナンを注目する。
「あー、星属性魔法だよ」
「星…古文書に登場する幻の属性。実在したなんて…」
「星って言われても良くわからないんだけど…」
「まあそうだね。簡単に言うと増幅魔法だよ。威力を上げる。魔法効果を変質させる。後は融合とか色々あるけどそんなもん」
掛け合わせると超位魔法以上になるぞーとさらっと言ったが、この世界の人間からしたらあり得ない事。
「そんな事公開したら、カナン君を取り込もうと国が動く」
「わかってるさ。無理矢理取り込もうとしたら潰すし。それにさっき使ったのは…まあ気まぐれだ」
剣聖に対してのメッセージ。飲み込んだ言葉はただ1人が分かればそれで良いという様に、カップルを妬む歌を聴きながら貴族席の方を見る。
『みんなーありがとー!闘技台の点検が終わったみたいだよー!では!ネル・クーガ選手!サティエル様ー!闘技台までお越しください!』
「なあ、どうやってそんなに強くなったんだ?」
「んー、修業したんだよ」
「修業でどうにかなるのか?」
「まあ死ぬ気になればなんとかなるぞー」
俺も死ぬ気で頑張ってるんだけど…ユウトは誤魔化された気がしたが、カナンの目を見たら嘘は言っていない。まだまだ修業不足かーとため息をついた。
『開始!』
「俺、もっと強くなりたいんだ…」
「あー、俺の用事が済んだら竜魔法くらい教えるぞ。独学なんだろ?」
「…え?使えるの!?」
「ああ、昔習ったんだよ。ちなみに、竜魔法の上に超龍魔法、さらに神龍魔法があるんだけど…まあ頑張れ」
(脳筋魔法はセンスだから転写は意味が無いんだよなー)
「更に上があるのか…」
『流石剣聖!鮮やかな剣技でネル選手を撃破!』
「そういやユウトはロブ王国に思い入れはあるのか?」
「いや、たまたま転移した国なだけだよ。そこで馬車が魔物に襲われていたから、光の剣技で助けたら姫が乗ってて、そのまま勇者認定されたんだ」
「へえー主人公してんなあ(アイツの味方じゃなければ大丈夫か…)」
『え?何?休憩はいらない?じゃあそのまま決勝を始めたいと思います!カナン選手は闘技台までお越しください!』
皆に送られカナンは闘技台へ歩く。闘技台には試合を終えた剣聖が無駄な時間は惜しいとばかりに中央で待っていた。
「なんか緊張するなあ、久しぶりに会う同級生みたいな感じか?いや違うなー同窓会?と言っても今はカナンだからなあ」
やがて闘技台の中央にたどり着いた。
「やあ、剣聖様。ご機嫌どうだい?(ああ、懐かしいな。相変わらず美人さんだ)」
「カナン、貴方は到達者なの?」
「到達者?何の?(あれ?おっぱい大きくなってる!)」
「…世界樹」
「まあな(安定のメガネか、道理で大人しい訳だ)」
「そう…そこで師匠にあの剣を習ったのね」
「ん?師匠?あー、おっさんか(やっぱりおっさんはそこに居るのか)」
『さあさあ!決勝戦ですよー!正直カナン選手も本気を出していない様子なので勝負は分かりません!カナン選手は先程と同じ格好!黒い服に包丁のメガネスタイル!サティエル様は黒いローブに大剣を持ったメガネスタイル!メガネがお揃いですね!何処の職人さんですかー?私もメガネ掛けたい!』
「先輩として負ける訳には行かないわね」
「んー?先輩?まあ良いか。宜しく(出会った頃はお互い弱かったよな)」
『開始!』
「「流し斬り」」ギィン!「「払い十字」」ギィンギィン!「「鬼横断」」ギャリギャリ!「ふふっ」「ははっ」
「「天地自在!」」ガギィィン!
『凄い!同じ動きです!カナン選手もオータム流の使い手!なんで包丁で大剣と渡りあえるのか不思議です!』
「流石ね」
「そりゃどうも(なんだろう、娘の成長を喜ぶ父親ってこんな気持ちなのか?んー、何考えてんだ俺は)」
「魔法は使わないの?」
「使って良いのかー?」
「どうぞ」
「了解、アイシクルレイン」
無数の氷柱が剣聖へ
カカカカ!直撃
「あれ?」しかし剣聖にダメージを与えた様子は無い
「上位くらいじゃ効かない」
「効かないか、そのローブか?…(もしかして俺のローブ?)」
「ええ、師匠から聞いているでしょ。最強の人の事。その人が着ていたローブ…」
「ははっ、まじか(上位魔法じゃ効果は無いのは当たり前か)」
剣聖が纏う黒いローブ。地味な様で存在感を出しているこの衣は、超位魔法すら受け付けない。
「時空の衣か(あれ?あれは昔作った…)」
「正解、短冊斬り」「パリイ」ギィンギギギ!
「その剣…も?」「ええ、彼のよ」
即答する剣聖にカナンは戦慄する。
(…まじかよ…サティちゃん…)
「全身…秋コーデじゃねえか…」
「ふふっ、良いでしょ」
安定のメガネを掛けているにも関わらず可憐な笑顔向ける剣聖の姿は、人々が初めて見る笑顔。何を話しているんだ、と人々は興味を示すがざわめきで聞こえない。
「いや…(ああ、だめだ。サティちゃん)」
「恥ずかしいんだけど」
(家で彼氏の服着てる女子大生にしか見えなくなってきたよ…)
サティちゃんセレクション。今日の秋コーデ
安定のメガネ~精神を安定させる、副作用として冷たい印象になる。主人公は荒ぶった感情を抑えるのによく掛けていたメガネ。
時空の衣~エンシェント・タランチュラの糸を使った布に時空魔法を付与したローブ。超位魔法クラスなら防御できる結界が発生し、着ている者を守る。
金剛魔銀の大剣~アダマント・クリスタルとミスリルを掛け合わせた金属で作った大剣。龍王も同じのを持っている。
清潔な服~秋の普段着、上下セットで沢山ある。持てる全ての属性を付与した完璧な服。汚れない、痛まない、良い匂いがする。
完璧スニーカー~秋の作ったスニーカー。自動サイズ調節、自動回復機能が付いているので長旅でも安心。もちろん汚れない、痛まない、良い匂いがする。
封印の指輪~旧式の魔力を抑える指輪。




