表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/285

救護室へ

『これにて本日の試合は終了いたしましたー!明日は午前に準決勝、決勝をやる予定なのでチケットを忘れずにお持ち下さいねー!出場する選手も寝坊しちゃ駄目だぞー!これからの時間はわたくしラリーのスペシャルライブを開催しまーす!…え?もう撤収?嘘!?私楽しみにしてたのに!』


「さて、兄さん帰るよ。その前に茜ちゃんの所に行こうか」

「…ああ」

「ん?どしたの?」

「いや、その、茜さん格好良かったなって」

「ふーん、兄さんが格好良いって言うの珍しいね。惚れた?」

「う、多分…いや。まだ分からない」

「まあ、茜ちゃんが誰かに取られる前に答え出しなよ」


 あんなに強くて可愛い子は中々居ないからモテるよー。とオードを煽るカナン。そうだよなーと悩むオード。通路を歩き救護エリアへ到着。ノックをして中に入った。


「茜ちゃんいるかー?あれ?」


 中に入ると治療を終えて目が覚めた茜が座っていたが、誰かに話し掛けられている。前回闘ったムンバ・ムーアの様だ。


「アヴァネさん!貴女と剣聖との闘い、感動しました。貴女の剣聖に屈しない心。素敵です。是非僕とお付き合いして頂けませんか?」

「え?いや、あの」


 カナンはメガネをクイッと上げ。困っている茜を眺める。そして茜と目が合い、助けを求める視線を笑顔で返す。


「さて兄さん。出番だよ」

「…ああ、行ってくる」

「くっくっく、いってらっしゃい」


 茜の元へ向かうオードを見送り近くの椅子にどっかり座る。


「なあ、兄さんは強いだろ?」

「ああ、強い。全力でも敵わなかった」


 世界は広いな。隣に座るユウトはそう言って、カナンとは目を合わせず、前方の3人を眺める。


「アヴァネさんって何者なんだ?重力魔法なんて初めて見たぞ」

「ん?アヴァネさんは…」


 前方の3人の1人がうなだれ、残りの2人の顔が真っ赤になっているのを眺め、くっくっと笑い。


「兄さんの彼女さ。兄さんの隣に立てる人。だから重力くらい操れる」

「…そうか、なら納得だ」


 そんな理由で納得すんの?カナンはそう思ったが、俺が転移者だってばらす訳にもいかんから良いかと流す。


「…悪かったな…」

「んあ?何が?」

「いや、卑怯者って言って」

「ははっ、随分素直になったじゃねえか。気にしてねえよ。まっ、頑張れや、勇者様」

「はははっ、正直自信無くてな。俺に魔王が倒せるのかって」

「魔王?」

「ああ、帝国の西に封印されていた紅の魔王が復活し、その後消息を絶ったらしい」

「…」

 世界が炎に包まれる前に倒さないと。使命感に燃えるユウト。カナンは遠い目で、肩を落として目の前を通り救護室を出るムンバを眺める。


「紅の魔王はもう居ないぞ(魔皇は居るが)」

「は?いやでもグリーダ様が生きてるって…」

「…あ?グリーダ?誰だそいつ…」


「え?なんだよ怖い顔して…ロブ王国の元大后様だよ。今は指南役として政治に関わっているんだよ」

「…なんで、生きてる」

「え?なんか長生きする薬を飲んでるらしいよ。最初はファンタジーだなって思ったけど、あ、言っても分からないか」


「俺の…エリクサーか…(前世のストレージの在庫は1000本ぐらいあった…王国にエリクサーが無いのはおかしいと思っていたんだ…グリーダが独占していたのか)」


「くっくっく、そうかそうか。なあユウト」

「なんだよ(変な奴だな)」

「魔王はそいつが倒せって言ったのか?」

「あ、ああ、魔王の核があれば元の世界に帰れるって…あ、俺転移者なんだ」

「そうか(嘘、だな。それを今のユウトに言うのは酷か)…これやるよ。良い話を聞かせてくれた礼だ」


 黒い鞘に納まった白いダイヤモンドソードを渡す。


「な、なんだよ…剣?…すげえ。良いのか?今まで見た剣で最高の剣だ」

「ああ、俺が作ったから元手はほとんどタダだからな。ありがたく貰っとけ」

「…お前すげえんだな…ありがとう。_っともう行かなきゃ!皆待ってる」

「ああ、気を付けてな。時間があったらロブ王国に行くからそん時はよろしく」

「ああ、歓迎するよ!じゃあな。オードさんもまた!」


 手を振り救護室を出るユウトを見送り。見詰め合っているオードと茜を眺めながら、カナンはどうするかなーと呟き考える。


「グリーダは魔王の核を使って何をする?強さを得る?人を超える?大魔法の媒体、いや、それよりも…」


 カナンの口元が弧を描き


「この手で殺せるじゃないか」


 200年越しの復讐だ。そう呟き、くっくっくっと嗤う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ