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オード対ユウト

『お待たせしましたー!あの光景は私の人生を彩る大切な思い出となりました!出来れば彼氏と観たかった!居ませんけどね!イケメン限定で募集中です!では次の出場者の方は闘技台までお越し下さい!』


 プラプラと闘技場内を散策しているとアナウンスが聞こえてきたので、南側の選手席に戻る。オードと茜は少し言葉を交わし、オードが闘技台へ向かって行った。


「よっ、ただいま」

「あっ、カナン君…ありがとね」

「ははっ、ただの気まぐれだよ」


 もうカナン君に足を向けて寝れないねー、と泣き終わった後の赤い目で嬉しそうに微笑み、オードへと視線を移す。


「優しいねオード君、こんな汚い手を握ってくれた」

「汚くねえよ。兄さんはその手が好きなんだ」

「この手が?」


 茜は所々ひび割れてカサカサの、爪の無い指もあるボロボロの手を見詰め不思議そうにしている。


「その手は…茜ちゃんが一生懸命、必死に生きてきた証」

「でも…」


 オード君はそうは思っていないかも…胸が詰まり、その言葉が言えず俯く茜。


「兄さんは硬派でね。女性の手は軽々しく握らないんだよ」


「…そうなの?」

「ああ、茜ちゃんの手を見て思ったんじゃないか?支えたいって。じゃなきゃ手は握らないしな…くっくっ、あの兄さんがオロオロしてるなんて中々無いぜ」


 まだ治さないでおいてやるから、この先は兄さんに言って貰いな。そう言って優しく微笑むカナン。なんだ、そんな風に笑えるじゃん。と強がる茜。



「そういや、兄さん…姫さん抱っこしてたな」

「_っあ!思い出させないでよ!」

「くっくっくっ、元気になったじゃねえか」

「絶対楽しんでるでしょ!」


 ―――


『次の試合は、ユウト選手対オード選手!ロブ王国所属のユウト選手は聖光の魔装を使う勇者様!軽鎧に長剣とオーソドックスなスタイルながらも凄まじい光の技を繰り出します!

 対するオード選手!カナン選手のお兄さんにして白い炎の魔装!更には蒼い炎の魔装まで使いこなす天才!やはり普段着に細い木剣ともう1つの剣を差しているラフな姿!格好いいです!』


「オードさん、俺は貴方を越える。そして最強への道を進みます」

 ユウトは長剣を持ち構え

「最強ねえ、正直俺を越えたとしても道のりは険しいぞ」

 オードは自然体で待つ

「俺はこの1年地獄の特訓を受けてきたんだ。その道のりは簡単に越えてやりますよ!」

「地獄、か」



『開始!』


「聖光!」

 聖なる光がユウトを包みこんでいく

「へえ、じゃあ俺も。蒼炎」

 数秒で蒼いフルプレートメイルを身に纏った


「_っ!流石早いですね」

「ありがとな、これだけは自慢なんだ。師匠より早いんだぜ?」


 ユウトが魔力を濃縮させる

「さぞかし凄い師匠なんですね!聖光破斬!」


 光の斬擊が奔流となってオードへ向かって飛んでいく

「蒼炎破斬」

 オードは木刀を無造作に横凪ぎ


 ゴオオオ!光の奔流と蒼い炎がぶつかり


 ボオオオ!蒼い炎が光を呑み込み炎が辺りに広がった


「ぐああ!」炎の残痕がユウトに直撃


『凄い力のぶつかり合いです!魔力が渦巻くハイレベルな技と技!蒼い炎が競り勝ちました!眩しいです!』


「くっ、まだまだ!」

 闘いを楽しむ様に笑みを浮かべながら更に魔力を濃縮


「光の螺旋!」

 先程よりも大きな光の奔流が螺旋を描き

「蒼炎破斬」

 ドオオオ!光の螺旋と蒼い炎がぶつかり


 相殺


 ゴオオ!辺りに熱風が吹き荒れる



「もっと!もっと力を!」

 剣を上に掲げ魔力を増幅



 ―――


「段々強くなってるなー」

「そうだね、どこまで上がるんだろ」

「まあ限界は来るだろ。ところで王都に行ったらどんな所に住む?俺の家は空きが無いから家が決まるまで宿に居て貰うけど」

「安全に寝られればどんな所でも良いよ。分からないから任せて良い?」

「了解、じゃあ時間ある時に用意しとくな」

「うん?ありがと」


 ―――



 ユウトが剣を真上に掲げ


 光がユウトに集まる


「おー、すげえな。俺もやるか」


 オードも木刀を真上に掲げる

 木刀がキラキラと蒼く輝いた


「光剣奥義!」


「蒼炎奥義…壱式」


 ユウトの剣が輝きながら伸びる


 やがて50メートルの光の大剣となり


「正義の鉄槌!」

 オードへ向かって全力で振り下ろす


 ゴオオ!迫り来る大剣


「蒼炎断滅」

 迫り来る大剣に一閃



 バシュッ!大剣が真ん中から真っ二つに斬られ


 ガランガラン!と剣先が転がり四散した


「…斬った…だと」


『勇者の奥義を斬りました…斬れるものなのでしょうか…』




「……」




「これで終わりかい?」


「…やはり駄目でしたね」

「どうする?」

「生半可な技は全て通じない…ふふ、仕方ない。これは使いたくなかったけど」

「ふーん、やってみろよ」

「…俺はこれでロブ王国最強になりました。貴方を殺してしまうかもしれません」

「おっ、そんな技を俺に使ってくれるのか、光栄だね」




 ユウトは今までとは違ったギラ付いた表情で、渾身の力を込めて魔力を練る

「…その余裕も、これでお仕舞いだ」


 魔装を解除し、身に纏っていた魔装サポートの鎧を脱ぎ捨てる。

「はああぁぁぁぁぁ!」

 魔力を増幅


 その時


 ユウトの身体に変化が起きた


 肌の色が白く変化し、少しずつ鱗の様なものが発生


 爪は伸び、犬歯が伸びて牙に変わり、瞳は縦に伸びる爬虫類の様な瞳孔へ


 やがて完成した姿


「こりゃあ…」

「…はぁ、はぁ。竜化。これで貴方を、越える!」





 ―――


「__っ!なんだと!」


「え!?カナン君あれ強いの!?」


「なんてことだ……」


「え…そんなに強いの?……」


「あれは…あれは…」


「…オード君…」


「格好良いじゃねえか…」


「……強いか聞いてんだけど」

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