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オード対ニーナ

『北側からはオード選手!なんとカナン選手のお兄さん!予選参加者に話に聞くと、とても爽やかで男らしい男性だそうで、黒い笑顔のカナン選手とは正反対の好青年!シャツにズボン、普段着ですかね?長剣を腰に差して、もう1つ手に持っている剣は…何でしょう細めの木剣?

 対するは我らの闘う姫様!ニーナ・エルム・グラウド第1皇女!天才という言葉がこれ程似合う御方は居ないでしょう!軽鎧を身に付け、レイピア!格好良いですねー!同じ女性として憧れます!』


「貴方、木剣なんて勝ち目が無いからってふざけているの?」

「ん?いや、ふざけてないぞ。これ強いんだよ」


 オードは持っていた木刀をかざす。漆黒に染まった木刀。ニィッと笑い自然体で立つ。ニーナは半身でレイピアをオードに向け構えた。


『開始!』


 ニーナが動く

「しっ!」

 素早く一歩踏み出しバネを生かした突き

「パリイ」


 一歩も動かず難なく受け流すオードは木刀を振り下ろす

「飛斬」

 飛ぶ斬撃「むっ」華麗なステップで真横に避ける


「スクリュードライバー!」

 トンッと着地した瞬間

 ひねりを入れた貫通力のある突き

「パリイ」

 またも大して動かず受け流す


「中々やるようね、高速突き」

 ヒュッ「パリイ」

「音速突き」シュッ「パリイ」


「……」

 埒が開かないと思ったニーナは魔力を練り出す



『ニーナ選手の高速の突き技を難なく躱すオード選手!素晴らしい技術!まだ一歩も動いていないぞ!』


 ―――


「ねえカナン君、あの剣何なの?ただの木剣にしか見えないのに軽々受け流してる」

「あー、あれは、木剣なのは間違いない。ただ材質が特殊でな」

「材質?硬い木かなんか?」

「精霊樹の幹で出来ている。そこら辺のミスリルソードじゃ比べもんにならない魔力との親和性。強度。兄さんの為にあるような木刀だよ」

「へぇー。凄い剣なのは分かったよ、もう1つの剣は?」

「あれは、斬れ味が良すぎて危険なだけだよ」

「ふーん、良い剣なんだねー」


「それよりも魔装をサポートする鎧がこんなに溢れてるなんて、古代遺跡から設計図でも出たか?」



 ―――


「これでもう終わりよ、白風!」

 白い風がニーナを包む。銀色の軽鎧が白く染まり輝いていく。


『出たー!ニーナ選手の魔装!白風!白色魔力を乗せた風を纏う華麗なる魔装!エンジェル!』


「へぇー、確か純粋な聖なる光の魔装が勇者。他の光や白色の複合は難しいが可能、だったかな。」


 ニーナの完全に魔装が出来上がるまで待つオード。今攻撃したら仕留められるよなーと考えながら。



 白い風の魔装を纏ったニーナは、白い鎧を着た天使の様に微笑み

 フッと消える様に高速でオードの背後に移動


「疾風突き!」

 連続の突き技を放つ

(やなぎ)

 オードは回避の武技を発動

 ヒュンヒュンと空を切るレイピア


『ニーナ選手目で追いきれないスピード!それに対応するオード選手も凄い!』


「さて、そろそろ攻めるか…白炎」

 ボオオウ!と白い炎が吹き上がりオードを呑み込む

 数秒で白いフルプレートに包まれたオードが現れた


「__っな!早い!」


『出たー!オード選手の白炎の魔装!予選会では思わず相手がリタイアした程のエネルギー!これは天才という言葉で収まるのか!』

『オオオオオオオオ!』『すげえ!』『白い炎なんて初めて見た!』


「行くぞー、白炎爆襲」

 オードが木刀を横凪ぎに振る


 白い炎の塊が迫る


 ニーナは即座に魔法を発動

「セイントストーム!」

 ブオオオ!白炎を押し返す

 何とか10メートル手前で止まっている


 オードはニーナに手を向け

「白爆」

 爆発、爆風

 飛び散る炎


「きゃ!」ニーナを闘技台端まで吹き飛ばす


 ―――


「オード君強いね、皇女相手に容赦無いし」

「ん?兄さん大分手加減してるぞ?」

「え?でも白炎の魔装だよね?」

「あー、兄さんは後3回変身残してるぞ。しかも皇女の準備が終わるまで待ってるし、あまりケガさせない様に気を使ってるし」

「嘘、まだ強くなるの?」

「まあ一般的に言う、接待プレイって奴さ」


 ―――


『ニーナ選手!大丈夫かー!オード選手凄い!同世代でエンジェルの魔法に打ち勝ったのはオード選手が初めてだ!』


「あれ?強かったかな」


 闘技台の中央で佇むオード。爆風で吹き飛ばされたニーナを見据え、どうするかなーと思案する。


 立ち上がったニーナは魔力を濃縮する

「やる、わね」

 吹き飛ばされただけなのであまりダメージは無いが、プライドは傷つけられた様だ。


 白い光が溢れだし暴風を生む


「なんだ?大技か?」オードも警戒するように魔力を練る


「シャイニング!」

 ニーナの手に光が集まる

「アロー!」

 2メートルの大きな矢の形に


 空に向かって打ち出し50メートル上空に停滞


「レイン!」

 大きな矢が無数の矢に別れ地上へと降り注ぐ


 ドドドドド無差別に降り注ぐ光の矢は


 オードを呑み込む


 闘技場が光に包まれた


「はぁ、はぁ、…ふん、中々やるようだけどこんなモノね」


 少しは楽しめたわ、と満足そうな笑顔で光が収まるのを待つ。


 光が晴れる


 闘技台には無数の穴


 そして中心には


 蒼い炎の剣士


「嘘、でしょ」


 力強く立つ姿は


 無傷


『蒼い…炎?なんて…美しいんでしょう。オード選手、これは卑怯です。惚れてまうやろ…』


「白炎じゃ持たなかったな…俺もまだまだか」

 カナンはシールドだけで防げるもんなー、と苦笑しながらニーナを見る。


 光が晴れ、キラキラと輝く蒼い炎に見惚れながら、目を見開き驚く。自分と同じ歳なのに遥かに高い場所に居る存在にズキズキと心が痛む。



「ふふっ、そっか…私は貴方に嫉妬している」


 ニーナから激しく魔力が噴き出した


「私が…一番!」


 ミシミシと音が響き


 激しい光と暴風が渦巻く


「お、おい。大丈夫か?」


 ゴオオオオ!暴風の中、ニーナの身体が浮く


「…負けない!絶対に!」



 ―――


 闘技台を観るカナンからため息が出た


「あー、魔力暴走したな」

「魔力暴走?」

「ああ、過度の魔力消費をしてから大魔法を行使すると起きる現象だ。容量オーバーで制御出来ずに自分自身も傷付ける」


 破壊力は超位魔法並みだな…その言葉でアヴァネの血の気が引く。超位魔法…宮廷魔法士が数十人で行使する儀式魔法が発動する。


「止めないと!」「ああ、大丈夫だよ」

 立ち上がったアヴァネをカナンが制する。何故?とカナンを睨み付けるが。


「あそこには兄さんがいるんだぜ?」

「でも……はぁ……分かったわよ」

 余裕の表情で笑いながら、兄を信頼するカナンを見て毒気が抜ける。本当に対処出来たら格好良すぎでしょ…と呟きながら。


 ―――

『ものすごい力が溢れています!これからどんな大魔法が展開されるのでしょうか!』


「うっ…あ…がっ…」


 ニーナの魔力以上の力が噴き荒れ


「あれは…この前俺がなった暴走ってやつか?…カナンはどうやったんだ…くそっ!覚えてねえ…」


 浮いていた身体が降りていく


 一瞬の静寂


 ニーナの口が意思に反して勝手に動く、歪な発音

「カガヤク…巨ちょう…出デよ…シャイにんぐ・バーど」


『ギュエエエアアアアオオ!』


 光輝く大きな鳥が出現した。10メートルはある、輝き朧気な輪郭、鳥の形をした光の集合体。


『これは凄い!巨大な輝く鳥を召喚した!こんな魔法見た事ありません!』


「ちょっとこれはヤバいかな?」


 見上げるオードの額に汗が滲む。ふとその下を見ると、ニーナが力を使い果たし、身体が傾くのが見えた。


「くそっ!」

 ニーナに駆け寄るオード


 その時、シャイニング・バードがニーナに攻撃を加えようとしていた。


「まじか!蒼炎破斬!」

 ゴオオオ!蒼い炎がシャイニング・バードに襲いかかる


 即座に蒼炎の魔装を解除する


 そして怯んだ隙にニーナを抱き抱え後ろに離脱


『あれ?今ニーナ選手を…ん?オード選手がニーナ選手を抱き抱えているぞ!私もお姫様抱っこされたい!』


 オードは迷わず木刀を床に突き刺し、もう1つの長剣、七色に光るダイヤソードを抜く

 左手でニーナの肩を抱き、シャイニング・バードと対峙する


 その時、シャイニング・バードが眩い光を放ち会場を照らした。観客達は目潰しにあったかの如く目を抑えている。


『ぎゃー!眩しい!眩しいです!見えません!今どうなってますかー!誰か教えてー!』


「…ん…私…は」

「起きたか…ったく、無理しやがって。負けても良いじゃねえか」

「貴方には、分からないわ」

「ははっ、何がだよ__っ!蒼炎連破!」


 シャイニング・バードが迫り連続した蒼炎破斬を繰り出す


 ゴオオオオ!炎が光を削るがまだ輝きは衰えない


 再びニーナを抱え回り込み


 オードは魔力を剣にありったけ込めていく


「下ろして、あれは私が消す」

「嫌だね」

「何でよ!」

「ははっ、腰抜けてんのに下ろしたら喰われるぞ」

「ふん!暴走した私が撒いた種だ、貴方に迷惑はかけられない」


 自分の責任は自分で取る。そう言うニーナを見てカナンの事を思い出す。ああ、そうか。オードはフッと笑い。


「なあ、強がるなよ。俺に任せてくれ」


 俺を信じろ、何とかしてやる。その言葉に、ニーナは不思議に思う。逃げれば良いのに、そしたらこの勝負に簡単に勝てるのに。


「何故…そこまでして私を…」


 剣以外に取り柄が無いこんな私を…。オードはニーナを見詰めニカッと笑う。


「そんなの当たり前じゃねえか。可愛い女の子は全力で守る」


 それだけさ。とカナンがいつも口酸っぱく言う言葉が浮かび、口にしてしまった。


「へっ?か…かわ…あ…う」

 顔を赤くし潤んだ目でオードを見詰めるニーナ


 その時シャイニング・バードから更に光が溢れ出した

『キエエエエエエェェエエエ!』


「未完成だが…やるしかねえな」


 ダイヤソードが黒い炎に包まれる


「炎剣奥義、派生…黒」


 シャイニング・バードが身体を折り畳み、弾丸の様に突進してきた


「紅羽ちゃん直伝!」「え?女の子?」


 剣先に出現した

 黒い炎で出来た巨大な球体


黒転(こくてん)天照(あまてらす)!」


 ゴオオオオ!轟音と共に光の弾丸と黒い太陽が衝突


 白と黒が鬩ぎ合い


 視界が白と黒に染まり爆音が鳴り響いた



『どうなったんだ!』『何も見えない!』

 見えない視界と轟音に観客達は混乱する

 ……


 ……


 光と煙が晴れた


 そこにシャイニング・バードの姿は無く


 ニーナと、ニーナを抱き抱えたオードの姿


 ニーナは、はっ!と状況に気付きジタバタとオードから降りてオードに向かい合い、すーはーと深呼吸


「参りました」


 完敗です。負けず嫌いのニーナが初めて言う言葉。はにかみながら笑うその姿は、試合開始時とは別人と思う程に、とても可愛く、多くの観客を魅了した。


『勝者!オード選手!』


『ワアアアアアア!』『すげえ!同世代でニーナ姫に勝ったぞ!』『オードくーん!格好良すぎー!』


 ―――


 少し話をしてからお互いの席に戻っていく二人を見詰めるカナンは。


「流石だよ、兄さん。見事にフラグ立ておって」

「あー、オード君…格好良すぎだよー」

「アヴァネさん、ライバル出現だねー」

「_っ!……カナン君、あの話…受けるわ」

「くっくっく、了解」


 見事に従業員をゲットした。


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