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異世界☆幼女ライフ!  作者: ニノ
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異世界へ

俺の名前は鶴城海斗(ツルギカイト)

その日、俺は死んだ……らしい。


そして、気づいたらここにいた。

死後の世界なのか、よく分からないが日本ではない。そもそも、俺の生前の知識と照らし合わせても不思議な世界である。


中世ヨーロッパの世界観に近いように思う。

木造の建物が多く、中にはレンガで作られた建物もある。近代的なコンクリートの建築物は無く、高層ビルの様な文明の象徴の様なものもない。


未舗装の土を踏み固めたような道路、その両脇にはたくさんの露店がずらりと並ぶ。縁日の屋台の様な立派なものから、地面に布を敷いただけの貧しい露天まで。売っている物も食べ物、小物、武器、防具、本、よく分からないものまで、実に雑多である。


更に多様なのは、それらを売っている者である。人間らしき姿の者がいる一方で、人間と言って良いのか分からないような……まるで漫画やゲームに出てきそうな獣人やエルフみたいな生き物もいる。単純に耳が長いものや、猫や犬、ウサギの様に特徴的な耳の者。


それらが調和して、当たり前のように過ごしているのだから、ここは俺の知る地球のどこかではないと断言しても良いだろう。大して知識を持たない俺であるが、生涯にこんな景色を本やテレビでだって見た事は無いのだから。


新しい人生の始まりなのだろうか。

何がどうして、こんなことになっているのかよく分からない。思い返してみても、俺の前世の記憶は突っ込んでくる車にはねられるところで途切れている。ひょっとすると生死の境をさまよっている最中で、夢を見ているのかもしれない。ゲームや漫画が好きな俺が見ている夢がこれだと言われれば、納得もできる。


ぶっちゃけ、これが昏睡状態だというのなら、ずっとこのままでも良い。

俺は生前への未練が無い。28歳の俺はニートで、特に楽しいことも無いし、展望も明るくない。大学を卒業して何となく入った企業を、何となく退職してのニート生活。ネトゲ三昧の日々を送る親のすねかじり。


結果だけ見れば出来の悪い奴だが、学校の成績や会社の評価はそんなに悪くない。人嫌いで、飽きっぽい性格が社会に合わなかった感じだ。まぁ、そんな『やればできる子』的な話はただの自尊心を守るための自己弁護に過ぎない。全てを総括して現状を見るに、俺は社会不適格なダメ人間に相違ない。親の期待は全部よくできた弟の方へ向いて、俺には残念な視線だけが残る。


だから、死んだなら死んだで良い。

生前の世界でのらりくらり生きていたのも、死ぬのが怖いから生きているという消極的な理由。ふわりと楽に消えていけるのなら願ったりかなったりである。


さて、俺は五体満足で、この異様な世界に立っているわけだが……。

まず何をしたらいいのだろうか。特にやりたい事も無いし、やらなきゃいけないことも無い。

どこかでのんびりと腰を落ち着けたいものだが、自分の家がどこにあるのか、はたまた存在しているのかどうかも定かではない。


ぎゅるるるるぅーっと、不意に腹の音が鳴る。

音で意識が腹に向かうと、思い出したように空腹感が脳を支配する。夢の中で、腹が減るなどと言う現象を体験するのは初めてだ。しかし、現実でそうであるように、この感覚には逆らい難い。


俺はまず食べ物を探すことにした。

目の前には食べ物の露店がいくつもある。手近なところで、果物を売っている店と串焼きを売っている店がある。


腹が減っている時は果物より肉だな。

香ばしい香りに釣られて、ホイホイと串焼き屋の前まで歩いて行く。炭火の上でジュージューと良い音をたてるカエルが目に飛び込んできた。


「え、あ、っと……」


カエルの姿そのままに尻から口に串が貫通した丸焼きスタイル、しかも真っ黒。ジューシーを通り越して、ガリガリなんじゃないだろうか。良いのは香りだけ。高められた食欲は一気に減衰して、嘔吐感に変わる。


「なんだぁーニイちゃん。一本で大銅貨2枚だ、三本なら大銅貨5枚だぜ。」


「いや、あの……いいです。」


商売っ気のある牛の様な鼻輪を付けた牛耳の男は、俺を冷やかしと思ったのか、しっしと払いのける所作を見せる。牛肉だったら喜んで買ったんだがな……。


いや、まてよ……買うって事はお金だよな。

牛男は大銅貨2枚だと言ったか……銅貨って言うと日本の10円玉を思い出すが、そうなると串焼きが一本20円と言う事になる。それはいくら何でも安い気がする。それよりも、大銅貨があるなら、小銅貨もあるんじゃないだろうか。


疑問に思ったので周囲の買い物客を探して、近くにすり寄って観察してみる。売買のやり取りを買い物客を装いながら、貨幣の受け渡しを凝視する。


……すると、見慣れない硬貨を相手に渡していた。

今の買い物客は茶色の硬貨を渡していたが、あれが銅貨と言うことになのだろうか。ふむ、大銅貨なのか、小銅貨なのかは分からないが……。


うーん、と言う事はである。

俺は今、一円すら持ってはいないという事になる。いや、円はあるから、なんて言えばいいのか。スッカラカンの文無し、おけらのすってんてん。コンビニがあってもうまい棒もチロルチョコすらも買えない貧民層。唐突に焦りが出てきた。


これが夢の世界だというのなら、勝手にぶんどって食べちゃっても良さそうな気がするが、どうにも夢のリアリティが凄過ぎる。

屈強な牛男を前にして、夢だから盗んでみろと言われても厳しいものがある。そもそも、カエルの黒焼きはご遠慮したい、リスクを冒すならもっとマシなものが良い。


お金を作らねばならない。

日本の通貨は、この世界では役に立ちそうもない。日本円の両替なんてものも、あるとは思えない。


ならば、俺がお金を手にする方法は3つ。

働く、盗む、売るだ。どんな世界であろうと労働の対価が金であるという原則は変わらない。


しかしながら、働く為には労働をしなければならず、労働をする為には腹を満たさねばならない。真っ当な方法かもしれないが、目的を達するには少々時間がかかりすぎる。

そもそも、この世界で俺が働ける気がしない。現実世界でだって大して働けなかったのに。


盗むというのも本末転倒だ。

それなら最初から食べ物を盗めば良いじゃないか。食べ物を盗まない為に方法を考えているのに、お金を盗むのは本当に本末転倒である。当然ながら却下だ。


最後に売るという選択。

これはとても妥当だと思う。持っているものを売るのだから、即座にお金を作る事ができるし、トラブルになる事も無い。


……問題は何を売るのかと言うところだが。

俺の今の姿は上下のジャージ、内側にティーシャツ、スポーツシューズにソックス。ポケットに手を突っ込んでみると、スマホとブランド物の革財布とフリスクが出てきた。それと偽ブランド時計と18金のネックレスも身に着けている。事故に遭遇する前の、そのまんまの恰好と持ち物に改めて驚く。いったいここは、どういう状況なんだろうか。


とりあえず売れそうなものは、いくつかある。

だが、売りたいものとなると、時計くらいだろうか。2000円で買ったパチモンだし、大した思い入れもない。この世界に時計の様なものが無さそうだから、価値もそれなりだろう。パチモンの時計を本物と勘違いして買い取ってくれるバカがいればなお最高だ。この世界に本物の存在があるのかどうかが、問題ではあるけれど。

あと、フリスクって売れるのだろうか……まだ未開封なだけどな。


買いとってくれる場所を探そうと歩き出して、すぐ止まる。

どこへ行けばいいのか分からなかった。物を買い取ると言えば質屋だが、この世界に質屋はあるのだろうか。ゲームみたいに、店ならどこでも必ずどれだけでも買い取ってもらえるようには思えない。それに売るならでき限り高く売りたい。ならば売る場所の選定は重要。


名案を思い付いた。

分からないのなら、聞けばいいのだ!俺はクルリと向き直って、再び串焼き屋の牛男と対峙する。すると、訝し気な瞳で牛男も俺を見た。


「いや、すみません。

美味しそうな串焼きに誘われてしまいました。家族の分も合わせて50本ほど欲しいのですが……持ち合わせが少なくて。これから道具を売ってお金を作ろうと思うんですが、また帰りに寄らせてもらっても良いですか?」


「おっ、おうっ、50本!? 

そ、そりゃーそりゃー、もちろんだとも。さっきはあしらっちまって悪かったな。冷やかしかと思ってさ。うちの串焼きはうまいぞ、家族も喜ぶだろうよ。」


「それは楽しみです。

ところで、道具を良心的に買い取ってくれる場所に心当たりはありませんか?」


「んー、何を売ろうってんだ?」


「これなんですけど、一定のリズムで動き続けて時間を計れる道具です。」


「ほぉー、こりゃすげええ魔道具だな!

それだったら、あっちの角を抜けた先にエスカ骨董店ってのがある。黄色い羽の看板が目印だから、すぐに分かるだろう。


そこの親父が魔道具に目が無くてな。道楽で随分と買い集めてるらしいぜ。それだけ珍しい品なら、さぞや高値で買い取ってくれるはずだ。」


「なるほど、ありがとうございます!」


「おう、良いって事よ。じゃあ、串焼く準備して待ってるぜ。」


バカが、勝手に待ってろよ。

誰が好き好んで、まずそうな串焼きなんか買うもんか。俺は、ニコリと朗らかに手を振って牛男と別れた。


しかし、時計の事を魔道具と言ってたな。

この世界には魔法とかあるんだろうか、いよいよファンタジーな世界だ。


牛男に言われたとおりに、まっすぐ進んで角を抜けて、更に少し進んだところに黄色い羽の看板の店を見つけた。エスカ骨董店と書かれている。文字は日本語ではないが、不思議な事に読める。本当に不思議な事だらけの世界である。


唐草模様の様な、複雑で細かな掘り込みがされた重厚な扉を開く。凛と響く鈴が鳴って、俺の来店が告げられる。何だか、おしゃれな喫茶店にでも来たかのように感じたのも一瞬、店内は所狭しと物が並べられていて、おしゃれだとか優雅だとかの雰囲気はなかった。広いのであろう店内もよく分からない道具で埋め尽くされている。牛男の話によると、何らかの魔道具なのだろう。これなら腕時計も買ってもらえそうな気がする。ふと視線に気づいて顔を上げると、通路の奥から老人がこちらを見ていた。


「あの……、道具を買い取っていただけると聞いてきたのですが。」


「見せてみろ。」


店主のぶっきらぼうな返事を受けて、狭い通路をかき分けて奥のカウンターへと向かい、腕時計を見せる。


「ほう……!?」


興味を示した老人は身を乗り出し、俺の手から時計を奪い取る。ぼさぼさの白髪をかきあげて宝石のついたモノクル越しに腕時計を凝視。これは中々、良い金額で買い取ってもらえそうな予感がする。何か説明をして売り込んだ方が良いのだろうか。正直、この老人の趣味も分からないし、腕時計の希少価値も分からない。うーん、結果としてセールスポイントが分からん。


「おい、この素材は何で出来ているんだ?

金属ではない、木材でもない、革が近いように見えるが、ワシはこんな革素材を知らん。」


「えーっと、それはプラスチックとか、ウレタン樹脂とかだったような。」


「なんと!? 初めて聞く素材だな。

これまで広く魔道具を集めてきたが、こんな不思議なものは見た事がない!」


凄い食いつきようである。

正直、素材の方に興味があるとは思ってもみなかった。確かに、この世界でプラスチックや樹脂と言ったものは見た事が無いし、ありそうにも思えない。


「それになんだ、この平たい部分の模様は!

しかも刻々と動いておる。これは魔法のブレスレットであるか!?」


「それはブレスレットではなく、時計です。

1日を24時間とし、アラビア数字と言う言語で表示したもので、正確な時間が分かります。」


「時計だと? しかも正確な……。

国宝級の品ではないのか? それにアラビア数字とはなんだ? どこの国の言葉だ?」


俺は内心で勝利を確信しつつ、老人に時計の説明を詳しくしていく。数字の意味であったり、時計の使い方であったり。ストップウォッチや、タイマーなど様々な機能があるので、説明には少し時間がかかったが、老人は終始興味津々な様子で、質疑応答が行われた。


「買おう。金貨300枚で良いか?」


老人は一通り満足したのか、腕時計をカウンターの上に置いて、視線を腕時計に落としままそう言った。


「500枚で。」


「…………。」


強めの口調で、上乗せを提案する。老人は腕時計から、俺へと視線を移し、睨むような鋭い眼光で射抜いてくる。無言の威圧。調子に乗り過ぎたのだろうか? こうした交渉では、まず高い額を提示して、少しずつ下げて折り合いをつけるものだと思ったが……間違ったのだろうか。ともかく老人の視線が心地悪いが、頑として動じない振りは貫く。


老人は再び腕時計へと視線を落とす。

そして、指の先で腕時計を優しくなでる。


「良かろう。」


静かに了承した。

値下げ交渉なしの一発成功。逆に安く買いたたかれたのかと不安になってしまう。そもそも、俺は腕時計の正当な価値を知らないし、金貨500枚がどれくらいの大金なのかも分かっていない。とりあえず、高い方が良いと思って金貨500枚を提示しただけなのだ。


「おい、用意してやれ。金貨500枚だ。」


老人が店の奥へと声をかける。

すると、奥の出入り口からすーっと一人の女性が出てくる。西洋風のメイド服、まさしくメイドなのだろう。俺はメイドカフェでしか見た事が無いが、それよりもずっと仕立ての良いものだとわかる。長い髪と整った顔立ちだが、生気が無くて少し気味が悪い。


「かしこまりました。」


メイドは一言だけそう言うと、再び奥へと戻り。少ししてから真っ黒な革の平たい長方形のお盆の様なものを持ってくる。上に乗っているのは大量の金貨。黒いお盆の上でキラキラと光る金貨は、少し背徳的な感じがして、悪銭と言うか、あぶく銭そのものに見えてくる。女性は、金貨の乗ったお盆をカウンターの上に置いた。


「どうぞ、ご査収くださいませ。」


そう言って頭を下げると、老人の後ろに静かに移動した。

500枚の金貨は、結構な量である。ちょうど大きさ的には500円程度の大きさだろうか、重さもそれに近い。それがまとめられていないのだから、結構面倒くさい。だが、本当に500枚あるのかどうかは分からないので、目の前で確認していく。1枚づつ数えると分からなくなりそうなので、10枚の束を50個作るやり方で。


老人は、腕時計に夢中で俺が確認する様子を視界の端にすら捉えていない様子。代わりに後ろの女性は俺の所作をじーっと静かに見つめている。これでは、枚数をごまかすことはできそうにない。いや、ごまかすつもりはないのだけれど、本当に足りなかった時に言いがかりをつけられても困る。一緒に確認してくれるのは、安心感がある。


「確かに、500枚です。

ところで、何か金貨をしまうものは無いんですか?」


「そんな契約はしておらん。ワシはしばらくは腕時計とやらを眺めていたい。後の事は、リトアーリと話せ。リトアーリよ、終わったら店を閉めておけ。」


老人は、俺の確認を見届けるまで我慢してやったと言わんばかりに、そのまま腕時計を持って奥へと引っ込んでしまった。もうちょっと愛想が欲しいところだが、仕方ないと思えてしまうのは老人の性格ゆえか。それに、骨董屋の店主は偏屈で不愛想と相場が決まっている。


「金貨を収納するためのものをお探しとの事で、承ります。」


代わりに前に出てきたメイドこと、リトアーリが俺にぺこりと頭を下げる。確かに、袋を契約には含めなかったが、スーパーへ行ったらレジ袋がついてくるのと同様、金貨収納用の袋くらいは用意しても罰は当たらないだろうと不満がこみあげる。まあ、最近ではレジ袋有料化の店もあると言えばあるけれど……。


リトアーリはそのまま、カウンターの下をガサゴソとあさり始めて。次々と収納袋をカウンターの上に並べていく。大小さまざま、中には絶対に金貨が収まりきらないだろうと言うものまである。それだけではなく、綺麗な装飾のものから今にも擦り切れそうな汚らしいものまで、形も様々だ。


「複数並べさせていただきました。どういったものをお望みでしょうか?」


「えっと、金貨が入ればいいのですが……これとか、入らないのでは?」


「それは魔道具で、この中では一番収納力があります。ちなみに、金貨が入ればいいとの事ですが、盗難対策は考えなくともよろしいのですか。それでしたら、この革袋が一番安く、銀貨20枚です。」


なるほど、防犯と言う意識が抜けていた。

しかも、一番高そうだと思った宝石がついた革袋が一番安いとか……。


「えっと、では、この中で一番おすすめのものをください。」


「それでしたら、これを。

筒状になっており腰に巻くことができます。おおよそ金貨1000枚が入ります。」


リトアーリが選んだのは、布のベルトの様な形をした一番のボロ。まさしく、俺が絶対に選ぶまいと思ったものだった。審美眼の無さに泣けてくる。


「魔道具ですので、金貨を収納しても大きくなりませんし、重くもなりません。装着すると自動で伸縮し、ちょうど良いサイズになります。なお、着脱は本人の意思でしか行えず、中身を他人が勝手に取り出すことは不可能です。装着した者が死亡した場合は、中身が消滅し永久に取り出すことが出来なくなります。」


なにそれ、凄い。

俺が持ち込んだ、時計なんかよりもずっと凄い代物なんじゃないだろうか。自分しか着脱できず、自分しか取り出せず、死んだら中身が消える。完璧な気がしてきた。


「お値段は金貨100枚です。」


「ブホッ…………。」


売却代金の2割の収納袋とは、恐れ入る。

いや、まあ、性能を聞いていると、とてつもなく凄いという事は分かるけれど。


「それって、あの、安くは……」


「なりません。」


全てを言う前に、ピシャリと遮られた……。

俺は渋々ながらも了承し、収納袋を購入。お金や物の価値が分からないというのは、本当に不便だ。ぼったくられているのかどうか、分からない。


それから、金貨を一枚両替してもらった。

両替にちなんで、貨幣の種類を教えてもらう事ができた。


この世界では小銅貨、銅貨、大銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、金貨、白金貨、王金貨と言うものが存在するらしい。小銅貨は10枚で銅貨に、銅貨は10枚で大銅貨にと言った具合に10枚で繰り上がり、上の貨幣1枚と同等になる。


今回、上から3番目の貨幣である金貨500枚での取引。白金貨なら50枚、王金貨なら5枚で済むはずで、枚数が少ない方が持ち運びが楽。そう考えたが、一般的に流通しているのは金貨までとの事で、白金貨や王金貨は豪商や貴族、王族などが使う貨幣らしい。もちろん、一般商店で使う事はおろか、両替商に行っても両替してくれないところがある上に、結構な手数料を持っていかれるんだとか。


両替は、リトアーリのおすすめで、大銀貨9枚、銀貨9枚、小銀貨10枚にしてもらった。

リトアーリは思いの外話し好きで、世話好きなのか、あれこれと話してくれる。両替に関しても、俺がこの辺りの事を良く知らないと知っての提案だった。


しかも、両替した小銭を入れる袋もくれた。さっきとは違って、ただの布袋ではあるが、無料だった。入れるのは銀貨までにしておくようにとのアドバイスまでくれる。この人は生気が無いだけで、良い人なのかもしれない。


ふと、先ほどの串焼き屋の事を思い出す。

牛男は串焼きを一本、大銅貨2枚で販売していた。串焼きを仮に200円だと仮定すると、大銅貨1枚で100円と言う事になる。そこから考えると、小銀貨1枚で1,000円、銀貨1枚で10,000円、大銀貨1枚で100,000円。


あれ……、と言う事は金貨1枚で1,000,000円……100万円!?

そうなると…………金貨500枚は…………ごくり。

5億円……。宝くじ当たっちゃったよ、俺。


当面の生活資金、いや一生分の生活資金か……、それが一瞬で手に入ってしまった。

これから、この異世界でどうやって暮らしていこうか、そんな事を考えながらエスカ骨董店を後にした。


お店の先で、身体に巻き付けた収納ベルトにそっと手を当てる。質量を全く感じさせない布切れの様なベルトに、今4億円入っているのか……。


ってか、この収納袋は1億円か……とんでもないな。

ドバっと冷汗が出てきた。

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