3話
俺はその晩、村に一軒だけしかない小さな宿屋の一室でこの世界においてのシステムについて試していた。
そして、それによってわかったことだが、どうやらスキルは名前を読んだりする必要はなかった。
そのスキルのイメージを強く持つことが重要で、試してみたところステータス画面や武器の説明等も同様だった。
俺は室内で使えるようなものを会得していないので魔法に関してはまだ不明である。
室内で使えるような魔法も知識としては知っていたが、発動させることが出来なかった。
そうやって色々試していることが一段落ついたとき、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「師範殿、明日は昼前にこの村を出まして夕方日が落ちる頃にはゴルドの街に着く予定ですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、わかりました。ご苦労様です」
「いえ!それと、昼間の襲撃では危ないところを助けていただき、ありがとうございました!それでは、失礼します!」
そう言ってタンタンタンと少し早めの歩調で扉の前から歩いていった。
恐らく、声と言っていたことの内容からして、盗賊に危うくやられそうだった、若い騎士だろう。
にしてもたった半日でコット村からゴルドまでいけるのか。
アナザーではモンスターに見つからないように進むため、このくらいの距離だとゲーム内時間で2日はかかったはずだが、こっちでは魔物が全く出てこないということだろうか。
「もしそうだとしたら、いよいよイージーモード確定だな」
俺はそんなことを考えながらその晩、眠りについた。
翌日の早朝、俺は村から少し離れた草原で大きな入道雲が漂う空にむかって手を斜めに掲げていた。
❮炎獄砲❯
俺がそう念じると手の前に魔法陣が浮かび、若干のタメの後、直径が3m程の高熱の光線が凄まじい勢いで発射された。
光線はそのまま空にむかって突き進み、射線にあった雲に大きな穴を開け消えていった。
「こりゃダメだ」
ゲームならともかく現実でこんなもの、ただ危険なだけだ。
その後もいくつか魔法を試し、この世界でも何とか使えそうなものをいくつか見つけ、宿に戻った。
俺は宿で遅めの朝食をとり、少し村を散歩した後、馬車に乗り込み、ゴルドの街に向かった。
途中、休憩を一度して丁度夕陽が沈む頃、ゴルドの街の大きな門の前に到着した。