2話
「貴様何者だ!?」
俺は騎士達の助太刀をしたつもりだったんだが...まあ、怪しむのも間違ってないだろう。
俺は軽鎧に薄汚れたローブといった装いをしているので、不審に思うのは当たり前だろう。
さらに言うと、いくら盗賊の実力が低かったとはいえ、睨みつけただけで動きを止めて見せたのだ。
「俺はセンチネル、コット村を目指しているところで貴方達を見つけたので助太刀した」
騎士達の長であろう、中年の騎士が抜き身の剣を向けたまま口を開く。
「冒険者か?所属ギルドとランクは?」
冒険者?ギルド?そんなものアナザーには存在しない。この騎士たちはほかの大陸から来たのか?
「俺は冒険者では無く、放浪剣士だ。ギルドというものにも所属していない」
そう答えると騎士達の目が一層鋭さを増した。
「だとしたら、身分を証明するものは何かないか?街に出入りする際にも必要になるだろう」
身分証か...もしかしたらあれが使えるかもな。
俺は自分の右手と左手に2つずつついている指輪のうちの一つを取り外した。
「この指輪は昔、王からの勅命を受けた際に頂いたものだが、これではダメだろうか?」
そう言って俺の指でつまんだ指輪を見た中年の騎士は目を見開き、震えた声で言った。
「そ、その指輪は王国騎士団師範にのみ与えられる国王公認剣士の証っ!!?」
この指輪はあるクエストで王様から直接依頼を受けた時に報酬の前払いとして貰えるものだ。
この指輪に込められた意味など知らなかったが、なかなか優秀な特性を持っているためずっとつけているものだ。
「申し訳ございません!!師範殿とは知らなかったとはいえこの様な無礼を!どうかお許しを!!」
そう言って騎士達は片膝をつき頭を垂れてきた。
「いつまでやっておるのだ!身元のわからぬ者ならとりあえずひっとらえておけばよいではないか!!」
そのとき現れたのはでっぷりと出た腹を揺らしながら、怒鳴り散らす身なりのいい男だった。
「ポ、ポーツマン様。申し訳ありません、こちらの方はどうやら王国騎士団の御方のようでして...」
そう言われた男は目を細めてこちらを品定めするように眺めた。
「...この身なりの汚い者がか?馬もないようだが?」
どうやらまだ疑っているようだ。まあ、実際は師範かどうかはわからないけどな。これもらったのゲームでの事だし。
「それが、王家の紋章が入った指輪を持っていまして」
「なに!?」
それを聞いた男は途端に表情をニコニコとしたものに変えて優しい口調で語りかけてきた。
「王国騎士団の関係者の方でしたら、何も言いません。馬がないようでしたらこちらの馬車にお乗りになりますか?私達はこのあと近くの村で一泊し、その後ゴルドの街までいきますが」
見事な掌の返し様である。
まあ申し出はありがたいので、お言葉に甘えさせて頂くが。
「それではお願いします」
「こちらこそ、色々なお話を聞かせていただきたいですな」
そう言って気持ち悪い笑顔を向けられながら、俺は馬車へと歩いていった。