プロローグ
「ここは...」
涼やかな風が平原の草花を揺らし、ゆっくりと昇る朝日が平原に立ち尽くす一人の男の影を映し出していた。
呆然とした様子の男はその場に座り込み、戸惑いつつも今の状況について考えだした。
「どうなってるんだ?」
自分の目の前に広がる、日本では決して見ることの出来ない景色に既視感を覚えつつ、男は考えを張り巡らせる。
「いつも通り会社から帰って飯食ってそれから...」
男は先ほどの現象を思い出し、自分の立場について何となく理解し始める。
「これはもしかして...異世界転移というものでは?」
僕は仁藤守人。今年の春で25歳になるまだ若手と言えなくもない会社員だ。
僅かばかりの残業の後にコンビニで夕食を買い、趣味であるゲームをやりながらゆっくりと食事をすることが日々の楽しみである。
寂しいと思われるかもしれないが、生まれてこの方彼女というものが出来たことが無いので、今更どうすればいいのかも分からず、会社の女性社員にもうまく話しかけられないでいた。
そんな自分には今の生活が合ってると思うし、新しい自分に変わろうとも思わない。
そして、今日もまたコンビニで弁当とカップ麺を買って帰宅し、ゲームをやろうとパソコンの電源をつけ、ゲームを起動しようとした時それはおこった。
「あれ?モニターが故障したかな?」
ゲームを起動する際の真っ黒な待機画面からなかなか進まず、パソコンを軽く叩いてみようと、椅子から身を乗り出したと同時に視界がブラックアウトした。
守人はweb小説に一時期ハマっていたことがあり、こういった展開の小説も何度も読んだことがあった。
そのため、状況の理解も早かったが同時にとてつもない焦りを覚えた。
「まさか、アナザーの世界に来たのか?」
アナザーとは守人が2年間続けているファンタジー系RPGである。
知る人ぞ知る人気作で、ファン達は続編の製作情報を今か今かと待っている。
一見すると只のRPGだが、人気の理由は実際にプレイするとすぐにわかる。
あまりにも難易度が高すぎるのだ。
初見殺しは勿論、ボスの異常な強さや、ほぼ発見不可能なレベルの隠し扉など、あまりの鬼畜さに販売会社、制作会社にクレームが殺到した。しかしそれも販売当初から少ししたら落ち着き、アナザーはそういうものだという認識が広まっていった。
守人はこのゲームを約1年かけてクリアし、二週目と同時に隠しアイテムや裏ボスなどを探すことで楽しんでいた。
「もしアナザーだとしたら...」
守人はゴクリと喉を鳴らした。
アナザーでは死んで覚えるというのが唯一の攻略方法であるため、もしこの世界でもアナザーの罠などが健在ならば普通の人間ならば容易く命を落としてしまうだろう。
「ポーズ...ステータスオープン...キャラクターステータス...!?よし!!」
守人の前に薄いガラス板の様なものが浮かび上がり、そこに数字や文字が光っている。
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キャラクターネーム︰センチネル
ジョブ︰放浪剣士
Lv︰200
HP︰99999/99999
MP︰850/850
筋力︰9999
技量︰6955
精神力︰2000
耐性︰2000
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「ふぅ〜〜」
その数字を見て守人は安堵した。
拙い文章ではありますがどうかよろしくお願いします。